東京経済大学

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2017年度 第31回
経済学部 石川 雅也 准教授

寝ているお金こそ、リスクの高いところで働かせよう。経済学部 石川 雅也 准教授 寝ているお金こそ、リスクの高いところで働かせよう。経済学部 石川 雅也 准教授

Ishikawa Masaya
東京経済大学 経済学部准教授
一橋大学経済学部卒業。一橋大学大学院商学研究科 修士課程修了。一橋大学大学院商学研究科 博士課程単位取得満期退学。一橋大学博士(商学)。主な研究分野は、コーポレート・ファイナンス、金融論。主な担当科目は、金融経済学、現代経済学入門、マクロ経済学。

そもそも「金融」とは何ですか?

 金融とは、「お金が余っている人」から「お金が足りない人」へ、資"金"を"融"通することです。もしこの仕組みがなかったら、お金持ち以外の人は、事業を起こすことも、家を建てることもできません。経済活動は停滞し、社会全体の活力が失われてしまいますね。 
 経済全体を人の「体」と考えたとき、金融は「血流」の役割を果たしていると例えることもできます。「体」の各器官に、「血流」は必要な栄養分を送ってその活動を活性化しています。同じように、「経済」全体の各部門に、「金融」という仕組みを通して必要なお金が送られ、経済活動が活性化するのです。ただし、金融と血流には大きく違う点があります。血流の場合、各器官に動脈が栄養分を渡したら、各器官から静脈に老廃物を受け取ればいいですね。ところが、金融の場合は、各部門に資金を提供するだけでなく、将来的に各部門から資金を増やしてもらったうえで回収する必要があります。そうでなくては、持続可能な金融の流れが途絶えてしまいます。
 つまり金融においては、資金を必要としている部門にやみくもにお金を流せばいいのではなく、その中で「リスクとリターンのバランスを考えて、リスクに見合ったリターンが見込める部門を見つけ出し、選択的にお金を流していくこと」が極めて重要となります。ここに金融の難しさと醍醐味があります。

「貯蓄から投資へ」と聞いたことがありますが、どういうことですか?

 金融によるお金の流れの代表例の一つが、「貯蓄」という言葉に象徴される、銀行を介した預金資金の流れです。この流れでは、資金余剰者である預金者ではなく仲介者の銀行が、将来新たな価値を生むであろう企業等を見極めて「預金」を貸し出し、その成長を支えています。
 一方、「証券投資」は、資金余剰者(投資家)本人が、お金の行き先(投資先)を自ら選びます。証券投資は企業への「応援」「成績評価」などと例えられることもありますね。預金との違いは、より高いリターンを期待できる分、お金を融通することのリスクを投資家本人が負うということ。経済の成長速度が鈍っているいま、より積極的に企業がビジネスを展開するために、リスクを取れる資金が増えること、すなわち証券投資の重要性が注目されているのです。

最初から「投資」の知識がある学生は、少ないのでは?

 投資に興味はあるがちょっと怖い......という漠然とした印象を持っている学生がほとんどですね。ゼミ初日には、「1千万円あげるから株を買いなさい」と皆に伝えます(笑)。もちろんこれはシミュレーションで、実在する上場企業の株価を使って株式投資を体験できるウェブサイト上のゲームの話です。バーチャルとはいえ、イギリスのEU離脱やトランプ政権の動向によって大きな損失を出す学生がいたり、まだ知られていない優良企業を探し出してくる学生がいたりと、学ぶことは多々あるようです。
 こうやって肌感覚で投資を体感するのと並行して、テキスト輪読を通して基礎知識・理論を習得していきます。さらに、新聞記事を使って、企業行動や経済事象を金融の側面から考える力を養います。

「日銀グランプリ」など、外部の論文コンテストに参加しています。

 外部コンテストに応募する理由は、「徹底的に取り組まざるをえない状況」に身を置くことで成長してほしいからです。論文を仕上げるには、独創的なアイデア、綿密な調査、明確な論理展開、それを説得的に伝えるための構成力・文章力が欠かせません。チームで協働する力も必要です。
 9月に開催される「日銀グランプリ」は、まさにアイデアとロジックの勝負。最近は、「休眠預金」に注目したチームがありました。日本には長らく資金移動のない口座預金が年間約800億円あり、社会保障費の補填財源として注目されています。彼らの発想は、「眠っているお金はリスク許容度が高い。ならば、一番リスクのあるところに流そう」というもの。休眠預金でベンチャーキャピタルを創設し、ベンチャー企業を支援しようという提案にまとめ上げ、見事、優秀賞を獲得。「ダイナミックな論理展開が面白い」と審査員からも高評価でした。

「日経STOCKリーグ」でも、石川ゼミは常連だそうですね。

 毎年1月には、「日経STOCKリーグ」に参加しています。これは、設定した投資テーマに基づいてポートフォリオとレポートを作成するコンテスト。環境問題や労働環境といった社会的に重要なテーマを選ぶチームが多いなか、あえて野心的な投資テーマに挑む学生たちもいます。
 例えば以前、「軍需産業」への投資を提案したチームがありました。技術革新につながるからとの思いがあったようですが、アンケート調査をしてみると拒否反応が多数。防衛省のイベントなどにも足を運び、彼らがたどり着いたのは、地雷撤去のための車や探査機といった「平和創造に貢献する産業」への投資でした。このチームは入選まで勝ち残りました。僕は指導をする際、「こういう視点もある」「こんな批判も考えられる」といった判断材料は提示しますが、決して答えは出しません。賛否両論ある難しいテーマに挑み、「良い投資ってなんだろう」と悩む彼らの姿はとても印象的でした。

ハードワークですが、得るものは大きいでしょうね。

 「もし効率的に単位を取得したいなら、うちのゼミはコストパフォーマンスが悪いよ」と、ゼミ選びの際に伝えています(笑)。というのも、チーム内でディスカッションをし、僕の研究室に来て相談し、実地調査をし、レポートにまとめる等々、やるべきことは膨大だからです。ただ、学生にこれだけの労力を要求する以上、僕も君たちの力になるよう全力を尽くすから、という約束はしていますね。
 学生に望むのは、「ワクワクする感情」「好奇心」をずっと持ち続けてほしいということ。金融をはじめとする社会の現象がいかにダイナミックに動いているかを知り、アイデア一つで世界を変えられるかもしれないと考える。論理的に、深く社会を見通す力が、きっとそんな人生を形作ってくれると信じています。

Students'VOICE石川ゼミで学ぶ学生の声

山内裕司さん(経済学部4年)
2年次に参加した日経STOCKリーグでは、「休暇制度が充実している会社」への投資をテーマにしました。短期的にはコストであっても、労働環境が注目されているいま、長期的にはリターンが見込めると考えたからです。締め切りが1月なので、冬休みも元日以外はほぼ論文に費やしましたが、終わってみればそれもいい思い出。無事に入選を果たし、有名大学と並んで賞を獲った時は、内心「よしっ」と思いましたね(笑)。
久保谷友貴さん(経済学部4年)
論文を仕上げるまでには、アイデアを出す、データ処理をする、企業にアポを取る、文章にまとめるなど、多種多様な作業があります。その役割分担や意見のすり合わせは大変で、グループ活動の難しさを実感しました。同時に、自分の強み・弱みと向き合う機会にもなりました。実はゼミに入るまで、金融・投資に関する知識はほとんどなかったのですが、新聞を読んだり実地調査をしたりと、実感しながら学べることが多く、とても有意義でした。
青木隆生さん(経済学部3年)
楽なゼミではないという噂は聞いていましたが、せっかくの大学生活なので頑張ってみようと、このゼミに決めました。石川先生は普段はすごく優しいのに、研究の指導には絶対に妥協を許さない方です。6〜7つのグループのレポートを同時進行で見るのは大変なはずなのに、それぞれの研究にとことん向き合ってくれるので、本当に有難いですし尊敬しています。

※学年は取材当時のものです。

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教授インタビュー