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R.ブラックのWebデザインブック(Mdn) 他

・ホームページを作りはじめてもうすぐ1年半になる。まったく新しいメディアということも言えるが、同時に、これはあくまで雑誌や新聞の延長上にあるものだとも強く感じている。一枚の紙に記事や写真をどう配置するか、文字の大きさや種類はといった工夫は、まさに本や雑誌のレイアウトやデザインの問題だ。もちろん本に比べれば、ホームページはずっとビジュアルなものだし、動画や音も使える。ホームページは、その意味では、映画やテレビ、あるいはレコードの延長上にあるとも言える。

・けれども、やっぱり、ホームページは基本的には印刷メディアの系譜に属している。少なくとも現在までのところは、それで間違いはない。自分で作りながら、そんなことを実感していたが、やっぱりそうかと確認させてくれる本があった。『ロジャー・ブラックのWebデザインブック』である。

・ロジャー・ブラックは雑誌『ローリングストーン』の表紙デザインで有名な人である。彼がその雑誌で最初にデザインしたのは右のディランの表紙だった。ロジャー・ブラックは雑誌のデザインから入って、いち早く、ホームページのデザインのおもしろさに気づいた。

・彼が力説するのは、印刷物の伝統に載ることだが、その第一は視覚的な重要性である。例えば、色合いは赤と黒と白の組み合わせに勝るものはないが、それは、グーテンベルグが印刷したバイブルから気づかれていたものだという。ちなみに『ロジャー・ブラックのWebデザインブック』は全頁がその3色で作られている。

・伝統の第二は字体である。インターネットが放送よりも印刷物に近い存在であるからには、無意味な画像や、画像の使いすぎは失望感を与えるだけである。大事なのは、むしろ適切な書体の使い方にある。ロジャーはここでも、デザイナーの伝統的なアプローチを学び、その巨人の肩に乗れという。ウィリアム・モリス、グスタブ・スティックリー、フレデリック・グーディ.........。

・本はもともと読まれるものである以上に見られるものとして作られた。その意味では、ホームページは、文字に書かれた内容だけが重視されるようになった印刷物の歴史にもう一度、デザインの重要さを認識させるものになった。読ませるためには注意を惹きつけなければならないし、次の頁、そのまた次の頁と読みすすめさせるためには、かなりの工夫が必要になる。

・表紙はポスターでなければならないし、どの頁にも、それなりの内容が盛り込まれなければならない。しかし、大文字の多用や文字間のあけすぎ、小さすぎる文字、スクロールが必要な頁、遅くなるだけの大きな画像、多すぎる色数などは避けること。この本に書かれた指摘はしごくごもっともなことだが、実際に作っているとまた、それがきわめて難しいルールであることも実感してしまう。

・もう一冊リンダ・ワイマンの『Webワークショップ』は色合いと見やすさ、引き立ち安さを丁寧に解説した本である。こんな本を読んでいると、ホームページを作りながら、気分はすっかり1世紀以上前のウィリアム・モリスの時代の本作りのおもしろさにはまりこんでいってしまう自分を自覚せざるを得ない。 (1998.04.18)

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1998年04月18日 21:28に投稿されたエントリーのページです。

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