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●最近読んだ本 |
ボブ・ディラン『はじまりの日』岩崎書店 『ボブ・ディラン全詩302篇』晶文社 |
・今日は2017年のはじまりの日。2016年は嫌なことがいっぱいあった。で、2017年も良くなるとはとても思えない。とは言え、去年はディランに20年ぶりに会った。70代の半ばにもかかわらず、2時間たっぷりのステージで、いつまでも若いな、と感心した。ここのところ、同世代のミュージシャンが相次いで亡くなっているから、そんな気持ちが後々一層強くなった。さらに、ノーベル賞の受賞と、それに伴う彼の言動についての騒ぎで、ディランのことをあれこれ考えるようにもなった。 ・ボブ・ディランの『はじまりの日』は彼の "Forever Young" をポール・ロジャーズが絵本にして、それをアーサー・ビナードが日本語に翻訳したものである。この歌は1974年に発表されていて、当時はまだ20代の半ばだった僕は、自分に対する励ましや戒めの歌として、この歌を聴き、口ずさんだ。1962年のデビューから1985年のアルバムまでを集めた『ボブ・ディラン全詩302篇』(晶文社)では「いつまでも若く」というタイトルで、次のような出だしで訳されている。 神の祝福がいつもあなたにありますように・ところがビナード訳は題名が「はじまりの日」で、次のような出だしになっている。 きみが手をのばせば しあわせに とどきますように・なぜ、 "Forever Young" を「いつまでも若く」ではなく、「はじまりの日」と訳したのか。そんな疑問を持ったが、この絵本の裏表紙には、「ぼくはひとりアリゾナに行って、そこで息子のことを思いながら『フォーエバー・ヤング』という歌をつくった。べつに作詞作曲をやろうと意気込んだわけじゃなく、自然にうかんできて、そのまま出来上がった。なるべく感傷的にならないようにと、ちょっと努力しただけだ。」というディランのことばが載っていた。 ・それで納得、と思っていたのだが、ビナードが「デモクラTV」の「ウッチーのデモくらジオ」で、「『いつまでも若く』なんて訳すのはおかしい」といった発言をした。辞書で直訳ではダメなんだとも。しかし、それはディランが息子の誕生に際して作った歌であったことがわからなければ、「はじまりの日」とは訳せないだろうし、オフィシャルな訳詞をしたのは実績のある二人の詩人でもあった。ビナードは詩人なのに彼らを知らないのだろうか。逆にそんな反論をしたくなった。実際僕は、この歌を20代の僕に向けられたものとして聴いたのだし、原詩と照らし合わせても、忠実でなおかつ適切なことば選びをしていると思っていたからだった。 ・ところでこの絵本は2010年に出されていて、すでに3万部売れていたのだが、ディランがノーベル賞を取った途端に5000部の注文が来たようだ。出版元の岩崎書店は増刷した本に「ノーベル文学賞」を強調した帯をつけようとしたようだが、ビナードは反対して、「ノーベル文学賞だって」で妥協したといった話もした。帯は所詮チンドン屋だからとも。売れることにはあえて逆らわないが、チンドン屋を出して売り出すこともない。それはビナードの主張だが、ディランの気持ちを代弁するものでもあったはずだ。 ・僕はこの本を孫の誕生日にプレゼントしようかと思っている。一番伝えたいのは次の歌詞だ。絵本では反戦デモが描かれている。 May you have a strong foundation when the winds of changes shift. |
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