<1997年秋季リーグ戦・東大野球部の奮闘>


速報、祝!東大5位!


 このページは、主に東大野球部の試合を対象とする試合結果と主観的なコメント<試合のヤマ場とMVP>のページです。詳細なスコアや他の試合結果、星取り表などをご覧になりたい方は、野球のリンクのページから「前田さん」「末松さん」「中田さん」のページにお立ち寄り下さい。充実した情報が得られます。




 (開幕戦)1997/9/13(土)対慶應1回戦


    
東京大学
慶應大学×


 東大は春季リーグの覇者慶應との開幕戦に、2年生エース遠藤をたてて臨んだ。遠藤は、期待通りのピッチングを見せ、5回まで慶應を0点に抑える。また、東京六大学通算本塁打新記録がかかっていた高橋由伸との最初の対決を、痛烈なあたりながらも中飛にうちとるなど、遠藤の投球術は見事だった。
 これに対して、打線のほうは、慶應の先発松尾の見事な投球の前に、1回2回と三者凡退で沈黙、3回には捕手中西の無死からの左前安打を手がかりに、1死2塁、2死3塁と攻めたてたが、惜しくも0点。
 そして、問題の6回の表裏の攻防に入る。6回表、東大は9番多田が右前安打ののち、2盗を決め、無死2塁のチャンス。ここで1番佐藤の1塁後方へのポテンヒット性のあたりが惜しくもファール。しかし、内野ゴロの間に、多田は3塁に進み、1死3塁でチャンスは続く。次の2番伊藤は前進守備の二塁手へのゴロ、多田が飛び出し、万事休すと思いきや、二塁手の3塁への送球が遅れ、多田は3塁に帰塁し、1塁、3塁オールセーフで、1死1、3塁でクリーンアップという大チャンスに。ところが、この好機に、3番主将の丸山が浅い左飛、4番濱田が三振で、チェンジとなった。
 続く、6回裏、遠藤は慶應の2番片岡、3番高橋に連続四球を与えると、4番木下の犠打の処理をミスし、無死満塁の絶体絶命の危機を迎える。ところが、ここで遠藤は、5番後藤をピッチャーゴロ、本塁併殺でうちとり、瞬く間に2死2、3塁と窮地を脱したかに見えた。しかし、代打に左翼2点適時打を浴び、試合の趨勢は決定してしまった。
 遠藤は、7回にも1点を失い、反撃もほとんどないまま、東大は3対0で敗退した。しかし、この試合は、決して勝つ可能性のない試合ではなかった。いくつかのポイントがあったように思う。ちょっと、この試合を振り返ってみよう。

 まず、相手の松尾投手の投球であるが、ランナーがいない状態では、ストレート、スライダーが見事にコントロールされていたが、ランナーがでると、微妙にバランスが崩れ、甘い球も来ていた。だから、攻撃にもうひと工夫あれば、完封されずにすんだはずである。例えば、6回の攻撃では、1死3塁あるいは1死1、3塁の時点で、スクイズという選択肢もあっただろう。あの場面で、慶應のディフェンスはほとんどスクイズを警戒していなかった。この試合は、先取点を東大がとれば、どうなるかわからないような雰囲気があっただけに、とくに3番の丸山のところでスクイズをしてほしかった。
 もう一つ、6回の守りでは、打たれた球は明らかに失投だっただけに悔やまれる。打者は直球を待っていたし、遠藤の切れのある変化球で勝負してほしかった。慶應の高安捕手は打者の弱点を徹底的に調べあげ、好リードをしている。あのリードに学びたい。

 さて、東大野球部の今シーズンでよくなった点は、内野の守りである。内野の守りは大変安定していた。三角監督の特訓が効いている。投手陣が打たせてとるピッチングをするだけに、内野守備の安定は、喜ばしいことである。それともう一つ、捕手の中西選手の強肩は光っていた。2度の盗塁を2度とも刺した功績は大きい。あとは、打撃にしつこさがほしい。6回裏に2点をとられたあと、打線がしゅんとしてしまっていたが、あれではいけない。相手にいやがられるようなねばり強く、すごみのある攻撃を期待したい。そのためには、最後まで試合の流れを見切ってしまわない愚直さが必要ではないだろうか。

 《独断と偏見で選ぶ本試合のMVP》

 MVP 慶應大学:片岡信人選手−高橋選手の前の打順で、しつこく、粘っこい打撃が印象的だった。6回の攻撃も片岡選手の四球からはじまった。あの粘り強い雰囲気を東大の選手もみならってほしい。

 敢闘賞 東京大学:中西正樹選手−2本の安打を打ち、東大の打撃陣で一人気概を見せていた。さらに2度盗塁を刺すなど守りでも貢献した。小柄ながらもバッターボックスでのあのすごみはすばらしい。最後の打席のノースリーからの邪飛がなければさらによかった。



<同じ日に行われた第二試合の結果>


     10
立教大学 
早稲田大学1×


 《評》 立教としてはきわめて惜しい試合だった。1回2回と先制し、3回にも韋駄天快足の早川選手が3塁まで進み、無死3塁のチャンスに後続凡退、浅い邪飛での本塁憤死が最後まで痛かった。早稲田は9回1死から矢口選手が起死回生の左中間本塁打で同点。最後は前田選手の中犠飛でサヨナラ勝ち。
 立教のエース中田投手は、完投勝利を目前にしながら、全シーズンの東大1回戦と同じような悪夢の9回となった。どうしてこんなに立教の投手はやさしいのだろうか。がんばれ、中田投手、がんばれ、立教!!あの勝負弱さは、他人事だとは思えない。いつの日にか、立教と東大が優勝争いをする日を夢見て、いや、立教と東大以外のチームに最下位を味わっていただく日をめざして、がんばりましょう。今季も第8週の東大−立教戦が盛り上がりそうな予感!?





 (第二戦)1997/9/14(日)対慶應2回戦

    
慶應大学
東京大学


 《評》 東大としては完敗だった。氏家投手が復帰するまで遠藤投手に続く二番手の投手をどのようにやりくりするかが課題となる。東大先発の布施投手はコントロールはまずまずだったが、スピードがないだけに少し甘く入ると痛打される。1回に慶應の高橋由伸選手に痛烈な2塁打を浴び、2回には後藤選手に左翼本塁打を打たれて、マウンドを降りることとなった。東大二番手の林投手は、2回から登板し、2回に1点、3回に2点をとられたが、その後は8回まで粘り強いピッチングで東大唯一の収穫であった。最後は高橋選手から三振をとったのが、大きな自信になったであろう。あのような粘り強い投球を、今度は接戦の試合で演じてほしい。
 一方、慶應先発の山本投手は1年生ながら、大器の片鱗を感じさせる投球だった。星陵高校時代には、甲子園で活躍した山本投手は、大学野球より上を目指せる素材をもっているから、今後大きく育ってほしい。それから、本塁打記録のかかった高橋選手は残念ながら、本塁打は出なかったが、2塁打が3本の大活躍だった。それにしても、高橋選手の打球は弾道が違う。低い弾道で、瞬く間に外野フェンスを直撃するから、驚きである。ちょっとレベルが違うというスイングと打球である。あれだけの打球を飛ばすアマチュアの選手は近年見たことがない。来年からプロに行ってからも楽しみである。おそらく次の試合で、本塁打記録を塗り替えるだろうと、私は思う。

 《独断と偏見で選ぶ本試合のMVP》

 MVP 慶應大学:高橋由伸選手−あの鋭い打球はすごかった。3本の2塁打も見応え十分だった。さらに、高橋選手の最後の打席が三振に終わると、観客がぐんと減ったのも、彼の人気のすごさを感じさせる。

 敢闘賞 東京大学:林理史投手−序盤3回までで最低10点はとられると覚悟するような雰囲気だったが、そのあとを丁寧に抑え、8回まで試合を崩さなかったのは立派。最後は、高橋選手との勝負も盛り上がり、見事な配球で三振にしとめた。東大としては本格派の投手で、入学当初から期待されながらもなかなか結果が伴わなかったが、最後のシーズンでもあり、今後もがんばってほしい。



<同じ日に行われた第一試合の結果>


 《評のみ》立教大学が4対1で早稲田大学を下し、3回戦に持ち込む。立教大学は見事な試合運びであった。木下投手の好投や早川選手の好打など、活躍すべき選手が活躍した。昨日は、最終戦が楽しみだと書いたが、立教大学、なかなか奮闘している。



 (第三戦)1997/9/20(土)対明治1回戦


    
明治大学
東京大学


 《評》東大は、明治のエース川上投手の故障という千載一遇のチャンスに恵まれながらも、そのチャンスをものにできなかった。試合は、明治は小笠原投手、東大は遠藤投手という両左腕エースの先発で、序盤は緊迫した投手戦となった。対明治86連敗中の東大であるが、この試合では、遠藤投手が好投、バックの守備も安定しており、打線も前節の慶應戦と比べると、当たってきており、今日こそはの雰囲気が感じられた。
 そして焦点の4回裏、1死から4番濱田選手がレフト線を痛烈なライナーで破る2塁打でチャンスを作り、続く5番村田選手のレフト前ヒットで、1死1、3塁とチャンスを拡げた。先制点をとれば、東大連敗ストップかという雰囲気だっただけに、次の6番多田選手の打撃には注目が集まった。
 多田選手は、このチャンスに、きっちり中飛を打ち、濱田選手が生還、東大は待望の先制点を挙げた。その後、7番の中西選手が四球で歩き、2死1、2塁でもう一本ほしいところであったが、8番関選手が三振で、この回1点どまりだった。
 さて、さすがは明治の底力と思わされたのが、次の5回表の攻撃であった。下位打線からの攻撃であったが、先頭の中村選手がファールで粘ったあげくのフルカウントから右中間を破る三塁打で、東大の夢を粉砕した。ここは、1点は仕方のないところであったが、遠藤投手は動揺したのか次の打者を歩かせ、無死1、3塁とピンチは拡がった。この四球はたいへん痛かったが、ここで明治は小笠原投手に代打を送り、勝負に出た。これは実は東大にとってはチャンスで、小笠原投手は球は走っていたので、この代打策を失敗に終わらせることができれば、試合の流れは東大に傾いたのではないかと思われる。
 遠藤投手は、代打の砂塚選手を注文通り三振にきってとり、明治の作戦は失敗に終わったかに思われた。ところが、1番に戻って白川選手が登場、今日の試合であたっていた白川選手は、遠藤投手の球をうまくおっつけて三遊間を抜いて、レフト前に運び、試合の流れを明治に呼び寄せた。あそこでひっぱっていれば、内野手の正面をついていたかもしれず、白川選手のバッティングは冷静かつスキルフルな見事なものであった。
 高松選手もレフト前ヒットで続き、さらに水谷選手はショートへの内野安打で出塁、東大は2対1と瞬く間に逆転され、1死満塁のピンチとなった。しかし、そこで遠藤投手は明治4番の辻選手を内野フライにうちとり、ここで何とかピンチから脱出するかに見えたが、続く宮内選手が初球をレフト前に痛打。これで2者が還り、試合の趨勢は決定した。
 その後、遠藤投手は立ち直ったが、東大の打線はつながらず、無得点。最終回には、2番手佐々部投手がつかまり、4点を失い、ジ・エンド。4対1と逆転されたからといって、まだ5回も攻撃が残っていたし、明治のマウンドにもう小笠原投手はいなかったわけだし、もう一つ、二つ見せ場を作ってほしかった。慶應一回戦のときもそうだが、惜しい試合でも、勝負のポイントが一回しかないというのは残念なことだ。一度逆転されても、また食い下がっていくような迫力ある攻撃をみたいものである。

 《独断と偏見で選ぶ本試合のMVP》

 MVP 明治大学:白川直哉選手−あのレフト前ヒットで、試合の趨勢は決まった。試合の流れをわきまえた打撃は賞賛するに値する。

 敢闘賞 東京大学:佐藤隆史選手−ホームラン性の2塁打を打つなど、2安打で1番打者としていい働きをした。また内野の守備もかなり安定してきている。昨シーズンの対立教戦のサヨナラ2塁打以来、いい感じを持続できている。惜しむらくはあたっていた佐藤選手と濱田選手の間がさっぱりだったことだ。2番で主将の丸山選手はチャンスで打てなかった初戦から尾をひいているようだが、丸山選手の粘り強い打撃なしには、東大は勝てない。がんばれ!!丸山選手。大きいを狙う必要はないから、おっつけて打つのだ。



<同じ日に行われた第二試合の結果>


    
法政大学
立教大学


 《評》 立教はあと一歩及ばなかった。前週は早稲田に2勝1敗でやぶれはしたものの、1戦2戦と健闘した立教は、木下投手と矢島投手のふんばりで法政と接戦を演じた。しかし、打線が法政の真木投手の前に沈黙した。立教は、3回に送りバントの処理を真木投手が誤り、二塁に悪送球、さらにバックアップのセンターが後逸するという幸運で、同点に追いついたが、そのあとは、あと一本が出なかった。



 (第四戦)1997/9/20(土)対明治2回戦


     計
東京大学 0
明治大学×12


 《評》東大は、故障上がりの川上投手につけいることができず、完敗で対明治戦の連敗は88となった。東大は、先発の布施投手が立ち上がり好投し、2回に濱田選手のレフト前ヒットと四球、さらには捕手の二塁悪送球で、無死2、3塁という絶好の先制のチャンスを迎えた。次の6番多田選手はミートがうまく俊足で、昨日は犠牲フライで打点を挙げていることもあり、期待は大きく膨らんだ。ところが、濱田選手が牽制球で誘い出され、アウト。1死3塁となり、失望感が球場にただよってきた。その上、後続が凡退し、0点に終わった。その裏、明治大学は2死から中村選手の本塁打であっさり先制。さらに、5回には右翼ポールぎりぎりの2ラン本塁打が出て、勝負の趨勢は決定した。
 東大は、川上投手がマウンドを降りた8回に、多田選手の2塁打と、中西選手のレフト前ヒット、さらには死球で、無死満塁という一矢を報いる大チャンスを迎えた。ところが、ここから三者連続三振で、絶好機をつぶした。その裏にはやらずもがなの5点を奪われ、残念な結果に終わった。負けるのは仕方がないが、8回の5点は本来ならば東大がとるべきところであった。12対0で負けるのと、7対5あるいは7対3で負けるのでは大違いである。次の試合につながるようなプレーをしてほしかった。個人的なタレントとしては、それぞれの選手がいいものをもっていると思われるので、あとは相手のペースに巻き込まれるのではなく、自分のペースに相手を巻き込んでいくふてぶてしさがほしい。

 《独断と偏見で選ぶ本試合のMVP》

 MVP 明治大学:川上憲伸投手−故障上がりであのピッチングは見事。最後のシーズン、獅子奮迅の活躍をして、プロに行ってほしい。

 敢闘賞 東京大学:応援団+チアガール−残念ながら、選手に該当者はいなかった。最後の最後まであきらめない応援団とチアガールのがんばりには頭が下がる。応援団は決してほかの大学に負けていない。がんばれ!!



<同じ日に行われた第一試合の結果>


 《評のみ》立教大学は法政大学に14対4で完敗。立教にとっては残念な試合だったが、リリーフ投手を打ち崩し、4点返したところは、東大も見習いたい。




 (第五戦)1997/10/4(土)対早稲田1回戦

     
東京大学 
早稲田大学×


 《評》 東大にとっては、本シーズンで最も健闘した試合であった。エースの遠藤投手が早稲田の打線を3安打に抑えただけに、東大の打線の奮起さえあればあわやという試合であったが、早稲田の堅守に阻まれた。安打では早稲田を上回り、中軸の振りもよくなっていただけに、惜しいシーンがいくつかあった。いいあたりが野手の正面をついたり、早稲田の野手の返球がストライクばかりだったり、不運な面もあった。しかし、全体的にチーム状態は上向きであり、打線の組み替えでクリーンアップもすごみをましてきており、今後、本連載初の東大の勝利をお伝えできる日も遠くはないだろう。
 1回の裏、早稲田は、1死後、四球と死球で1、2塁のチャンスを労せずして得ると、4番の矢口選手の左翼前ヒットでまず1点、レフトからの返球を中継に入った遊撃手が間に合わない本塁に投げたことで、1塁ランナーも3塁に進塁、1死1、3塁とピンチは続いた。ここで5番井上選手がセンターにきっちり犠飛を打ち上げ、2点目。東大にしてみれば、この回は被安打わずかに1、それもシングルのみであり、二つの四死球の走者をともにホームインさせるという何とも残念な立ち上がりであった。
 一方、東大は早稲田の藤井投手のテンポのいい投球に苦しんでいたが、4回にチャンスを迎える。萩原選手の2塁内野安打と盗塁で掴んだ2死2塁のチャンスに、勝負強い多田選手が2塁手の左に内野安打を放つ。2塁手が1塁送球の間に、萩原選手が本塁をついたが、早稲田の1塁手矢口選手からの好返球で本塁憤死、惜しいチャンスを逃した。しかし、ここでの本塁突入は当然であり、矢口選手の好返球を褒めるしかない。
 さらに、8回の表、1死から代打濱島選手が放った二塁後方へのあたりを二塁手が落球し、1死1塁のチャンス。ここで多田選手が右翼前へ痛烈なヒット。しかし、右翼手井上選手から見事な返球で、代走永井選手が3塁で憤死。惜しいチャンスを逃した。あたりは痛烈であったが、いいスタートならばセーフになるタイミングだっただけに、残念であった。その後、2死1塁から多田選手が2盗、さらに捕手の悪送球で3塁まで進んだが、次の佐藤選手の打球がいいあたりながらも右翼手の正面をつき、チェンジ。
 そして、9回の表、不調ながらも気合い十分の主将の丸山選手が四球を選び、無死1塁。ここで東大自慢のクリーンアップにつながり、早稲田ベンチもあわてて監督がマウンドへ。早稲田の外野は長打を警戒して、深い守備位置を敷き、70連敗時代のことを知る私には、それだけでも十分満足だった。早稲田の思うつぼか、もう一伸びなかったことが不運であったか、続く村田選手の大飛球は中堅手に、さらに4番濱田選手の見事なあたりは右翼手に抑えられ、2死3塁で東大のリーディングヒッター中西選手に望みは託された。ところが、中西選手は三振に終わり、この試合はジ・エンド。完封されたが、内容のある試合であった。


 《独断と偏見で選ぶ本試合のMVP》

 MVP 早稲田大学:藤井秀悟投手−見事な投球であった。立教戦に続いての好投で、早稲田のエースとしての座を不動のものとした。織田投手、三澤投手のあとにまた好投手が育ち、対早稲田戦は難しい戦いとなる。

 敢闘賞 東京大学:遠藤良平投手−3安打で2失点、ほんとうなら勝ち投手にしてあげたいところだ。スローカーブで強打の早稲田打線を翻弄した。2年生ながら格の違いを感じる。東大の野手は4年になると活躍するが、東大の投手は研究されて難しくなることが多い。これを克服するには、相手を上回る工夫と鍛錬しかない。3年、4年になっても、6大学を代表する投手として奮闘してもらいたいと思う。



<同じ日に行われた第一試合の結果>


 《評のみ》慶應大学が5対3で立教大学を下した。立教大学は先制したが、すぐさま逆転され、そののち1点差まで詰め寄ったが、最後に突き放された。慶應の高橋選手には本塁打は出なかったが、安打の記録でも高田選手の記録にあと11本と迫った。




 (第六戦)1997/10/6(日)対早稲田2回戦

     
早稲田大学
東京大学 


 《評》 東大にとっては、本シーズン最高の試合で、早稲田と引き分け、3回戦に持ち込んだ。東大は、2回の裏、3本の長打(2塁打1つ、3塁打2つ)で2点をもぎ取った。早稲田もすかさず3回の表、主将矢口選手のスリーラン・ホームランで逆転したが、東大もあきらめず5回の裏に早稲田の守備の乱れをつき同点に持ち込むと、終盤は緊迫したせめぎ合いになった。
 東大は、7回の裏、1死2塁のチャンスをつかんだが、後続が凡退。早稲田も、8回の裏、先頭打者が出塁したが、この回から登場したエース遠藤投手の巧みなピッチングの前に後続がきってとられた。そして、9回表の早稲田の攻撃を三者凡退に退けた時点で、東大にとって負けはなくなり、9回裏のサヨナラの期待が高まった。しかし、この回から早稲田のマウンドはエースの藤井投手、東大にとっては打ち崩すのが難しい好投手が立ちはだかった。2者凡退のあと、東大の打者として、私の評価では東大随一の野球センスの持ち主である多田選手が登場した。多田選手は、藤井投手の際どいボール球を的確に見送り、四球で1塁へ。早稲田の監督もマウンドへ駆け寄り、緊迫した空気が流れた。ここで、東大は、期待の仲戸川選手を代打に送り、サヨナラのチャンスに賭けた。そして、初球、多田選手は見事なスタートでゆうゆう2盗を決め、単打でサヨナラの舞台を作った。しかし、仲戸川選手は、藤井投手の外角のボール気味の速球を2回空振りし、三振で、残念ながら引き分けとなった。
 東大は、布施投手、林投手、遠藤投手と3投手が粘り強い投球を見せ、強打の早稲田打線を封じることに成功した。あとは、粘り強い打撃が期待される。本日の試合では、中軸に全くあたりが出なかった。多田選手を中心とする下位打線が面白いだけに、丸山選手、村田選手、濱田選手あたりの活躍が待ち望まれる。中軸は長打を狙いすぎて大振りになっているきらいがあるので、センター返しの打撃を期待したい。また、オープン・スタンスの打者が多いが、オープンで構えるのであれば、多田選手のようにきちんと踏み込んで打ち返してほしい。踏み込みのないオープン・スタンスは、投手からすれば簡単に攻めやすいように思える。



 《独断と偏見で選ぶ本試合のMVP》

 MVP 早稲田大学:矢口健一選手−早稲田の虎の子の3点を一振りでゲットした。矢口選手の一発がなければ、早稲田は痛い黒星を喫するところだった。

 MVP 東京大学:多田克行選手−3塁打と最終回の粘り強い四球と2盗。センターの守備も安定しており、俊足は東京六大学でも屈指である。立教の早川選手が故障している今、盗塁王を狙ってほしい人材である。さらに、まだ3年生であり、いずれはリーディング・ヒッターを目指して奮闘してほしい。

 (特別賞) 東京大学の林投手、遠藤投手。先日から連投ながらも、先発の布施投手のあとを受け継ぎ、早稲田打線を0点に抑えたのは立派の一言につきる。ヤマ場の立教戦に向けて、投手陣の充実が明るい話題だ。

<同じ日に行われた第二試合の結果>


 《評のみ》慶應大学が5対0で立教大学を下した。




 (第七戦)1997/10/7(月)対早稲田3回戦

     
東京大学 
早稲田大学×


 《評》 東大は、先制しながらも、早稲田に逆転を許し、本シーズン初勝利はならなかった。東大は主将丸山選手のホームラン等で、序盤は有利に試合を進めたが、中盤から終盤にかけて早稲田の集中打を浴びた。東大は早稲田と同じ10安打を放ったが、4回以降追加点がなく、連投の投手陣を援護できなかった。それでも、絶好調の多田選手が2安打、さらに不調にあえいでいた丸山選手が本塁打を含む2安打を放ったことは、残りの2週に向けての明るい材料だった。





 (第八戦)1997/10/11(土)対法政1回戦

    
法政大学
東京大学


 《評》 東大は、安打数で法政を大きく上回りながらも、惜しい試合を落とした。1回表、東大は内野手の失策から1点を失ったが、その裏、乱調の法政エース真木投手の立ち上がりを襲い、先頭打者佐藤選手の四球と2番多田選手のレフト前ヒットで無死1、2塁の絶好のチャンスを得た。その後、3番丸山選手の犠打で、1死2、3塁とし、ここで期待の4番濱田選手がレフト前へ2点適時打を放ち、逆転に成功した。
 ところが、3回表の守備はおそまつであった。内野手の失策からピンチが拡がり、失策が失策を呼び、最後はバックに足を引っ張られたエース遠藤投手ががっくりして、押し出し四球を与えるなど、2安打で5点を与えた。遠藤投手は、この回でマウンドを降りたが、自責点は0、1回と3回まさにやらずもがなの6点であった。
 普通であれば、これで東大はずるずるといくはずであるが、この日は違った。5点を奪われたあとの3回裏、2死1塁から多田選手の盗塁で2死2塁とすると、主将の丸山選手がセンターオーバーの3塁打を放ち、1点を返した。多田選手の盗塁により2塁にランナーが進んだことで、外野手の守備位置が前寄りになり、丸山選手の3塁打につながった。ここはいい攻めであった。
 5回表、法政に1点を奪われ、4点差とされるが、その裏、濱田選手のライトフェンス直撃の2塁打で、1点を返した。2番手の林投手がふんばるなかで、東大は3点差を保ちながら、7回裏のビッグイニングを迎えた。
 7回裏、佐藤選手が死球で出塁すると、2盗を決め、2死2塁の場面で、この試合絶好調の濱田選手が登場した。濱田選手は痛烈なレフト前ヒットを打ち、佐藤選手が生還して、点差は2点に縮まった。ここで、本日不調の村田選手が登場した。2ストライクと追い込まれ、万事休すかと思われたそのとき、球場を揺るがすような一振りが炸裂した。村田選手の打球は、高々と舞い上がり、法政の左翼手が追うのをあきらめるなか、上空に弧を描き、レフトスタンド中段に突き刺さった。これでスコアは7対7。後攻めの東大にとっては、勝利への期待が高まった。
 8回表、東大は絶体絶命のピンチを迎えた。林投手のあとを受けた岡投手が先頭打者に3塁打を浴びて、無死3塁となったのである。ところが、ここで岡投手はふんばり、サードゴロ、センターライナー、セカンドフライで続く3人の打者をしとめ、無失点に切り抜けたのだった。
 ピンチの裏にはチャンスありで、8回裏、東大は千載一遇のチャンスを迎えた。先頭の中西選手が左中間に2塁打を放ち、犠打で1死3塁の勝ち越しのチャンスがおぜんだてされたのである。ここで東大は投手の打順となり、代打に桐原選手を送ったが、法政矢野投手の速球の前に三振。続く佐藤選手も倒れ、勝ち越しはならなかった。
 そして、最終回、東大は、ピンチヒッターとピンチランナーの関係で、バッテリーが揃って入れ替わったが、これが勝負の明暗を分けた。2死2塁から、ワンバウンドの投球を捕手が後逸、ボールが捕手の足にあたって3塁側ベンチの方へ転々とする間に、2塁走者が一挙生還、痛恨の1球となった。ワンバウンドした投球がイレギュラーしたことが捕手にとっては不運であったが、肝心な場面での制球力が勝負を左右することが示された。
 9回裏、東大は2番からの好打順で、先頭の多田選手が四球で出塁。得点が期待できる面白い展開になった。次の丸山選手は3塁後方へのファールフライを打ち上げ、みすみす1死かと思われたが、浮き足立つ法政の守備の乱れがあり、落球で命拾いした。ところが、運命というのは皮肉なもので、命拾いをした丸山選手が開き直ってミートした次の球が遊撃手の正面をつき、併殺となり、チャンスはついえてしまった。このあと、4番の濱田選手にレフト前ヒットが出てたいへん惜しまれる2球となった。最後は、5番の村田選手に二打席連続本塁打の期待が高まったが、そうはうまくいかず、7対8で東大は惜敗した。

 《MVP》該当者なし。法政にとっては棚ぼたの勝利だった。

 《敢闘賞》濱田選手−1回の2点適時打に始まって、4打点の獅子奮迅の大活躍だった。最後の打席に、走者が残っていれば、濱田選手のための試合になるかもしれなかっただけに、濱田選手の安打が空砲になった最終回の攻撃は惜しまれた。





 (第九戦)1997/10/12(日)対法政2回戦

    
東京大学
法政大学×


 東大は、連投の遠藤投手を打線が援護できず、1分をはさんで8連敗となった。東大は、遠藤投手の好投で、6回まで0対0と互角の試合を展開した。そして、焦点の7回表、先頭の佐藤選手が出塁すると、続く多田選手が送りバント。この打球を3塁手がつっこんでさばき、2塁で走者を封殺したが、1塁転送が悪送球となり、東大は多田選手が2塁に生きた。ところが、次の投球のとき、多田選手が捕手からの牽制球で刺され、絶好の先制機を逸した。この直後に、丸山選手の左翼線2塁打が出ただけに、大変残念なプレーとなった。この裏、法政は下柳田選手のセンター前ヒットで待望の1点を挙げ、8回裏にも2点本塁打で加点し、東大の反撃を振り切った。
 東大にとって法政との2試合は、打てば守れず、守れば打てずで、2戦とも勝てる可能性のある試合を落としたという残念なシリーズとなった。

 《MVP》福山投手−初戦の真木投手の乱調を受けて、初完投で初完封は見事。しかし、東大としては、次世代の投手に自信を与えるという、勝負においてはしてはならないことをした。

 《敢闘賞》遠藤投手−さすがはエース。連投であの投球。しかし、法政との1回戦では、バックに足を引っ張られ、2回戦では打線の援護がなく、遠藤投手にとっては不運な2試合であった。立教戦でもくさることなく、好投を期待したい。そして、バックはぜひとも遠藤投手を盛りたててほしい。





 (第十戦)1997/10/25(土)対立教1回戦

    
東京大学
立教大学×


 《評》 東大は目下4連勝中と相性のよかった立教との惜しい試合を落とし、最下位脱出に向けて、崖っぷちに立たされた。先攻の東大は1回表の攻撃を3者凡退であっけなく終わり、その裏、立ち上がり珍しく乱調の遠藤投手が四球を連発した。そして、1死満塁のピンチに、前進守備の3塁の頭をバウンドが越える不運なあたりで、あっさりと2点を先制された。しかし、1死1、2塁となおも続くピンチで、立教のあたりはレフトの正面をつき、2塁走者が飛び出して、併殺チェンジ、幸運にもピンチを切り抜けた。2回、3回と立教は圧倒的に試合を支配しながらも、無死1、2塁から2塁走者が牽制死したり、送りバントの失敗などで追加点が奪えなかった。
 序盤は押されていた東大は、4回に反攻に移った。1死後、主将丸山選手の痛烈なレフト前ヒットを足かがりに、期待の濱田選手の右中間を深々と破る3塁打でまず1点、村田選手凡退のあと、萩原選手も右中間を破る2塁打で、一挙同点に追いついた。続く中西選手が1塁ゴロに終わったが、押せ押せムードだっただけに逆転しておきたいところだった。
 流れが東大に傾きかけた4回の裏、立教はあっさり2死となった。ところが、この試合から復帰した主将の早川選手が、立教に勝利を導くことになった。早川選手は、ヒットで出塁すると、すかさず2盗を決め、捕手の悪送球の間に3塁に達した。ここで、立教の石田選手はフルカウントから三塁線に痛烈なあたり。東大の萩原3塁手は見事に飛びつき捕球、すかさず1塁に転送したが、石田選手のヘッドスライディングに間一髪及ばずセーフ。結果的に決勝点となる1点が立教に入った。
 さて、東大のチャンスは、7回と9回に訪れた。7回は1死後、萩原選手がセンター前ヒットで出塁、2盗を決め、2死2塁と同点のおぜんだてができた。しかし、ここで代打の桐原選手が三振。甘い球が結構来ていただけに残念だった。そして、最大のヤマ場は9回に来た。1死後、頼りになる濱田選手がレフト前ヒットで出塁すると、続く村田選手のサード正面へのゴロを3塁手がトンネル、1塁走者がスタートを切っており、1死1、3塁の絶好のチャンスを得た。立教は、ここ2シーズン東大に勝っておらず、苦手意識が思わぬエラーにつながり、東大としてはまさに棚からぼたもちの展開となった。ところが、立教はここで好投の渡辺投手から矢島投手にスイッチ。次打者の萩原選手が渡辺投手とタイミングが合っていただけに、これは見事なさい配だった。
 本日2安打の萩原選手は、適度な荒れ球の矢島投手の投球に的をしぼれず、最後は外に逃げる変化球で三振。続く代打の濱島選手はジャストミートしたものの、レフトフライでジ・エンド。東大としては、棚からぼたもちを返上してしまうなんとも残念な一戦だった。

 <ひとこと、コメント>
 9回表の1死1、3塁では1塁走者に走ってもらいたかった。矢島投手に変わってから、立教の守備はまったく走者を警戒しておらず、間違いなく成功したはずだ。立教が足で揺さぶってきたのに対して、東大はあまりにも消極的だった。本日の試合を見ると、東大の個々の守備やレギュラーの打撃は決して他のチームに見劣りしなくなっている。あとは、あらゆる合法的手段を使って、全員で攻撃していく姿勢がほしい。明日負けると4年生の試合は終わりになる。悔いのない会心の一戦をぜひともやってほしい。

 《MVP》立教大学・渡辺投手−無四球の投球は立派だった。球威はさほどないものの、ストライクを先行して、攻撃的な投球で打者を追い込んでいく技術と姿勢は、ぜひとも東大投手陣も見習いたいところだ。

 《敢闘賞》東京大学・濱田選手−相変わらず東大にあってはしんから頼りになる打者だ。見るからに打ちそうなゆったりした構えと力強い打撃は、相手投手を威圧するに十分である。今日は濱田選手の前になかなか走者をためることができなかったことが敗因につながった。惜しむらくは、濱田選手が今年で卒業してしまうことである。野手に濱田選手のようなタレントが8人揃えば、遠藤投手、氏家投手の両腕をもつ東大は優勝を争えるはずだ、とむなしく思う。




 (第十一戦)1997/10/26(日)対立教2回戦

    
立教大学
東京大学×


 《評》 東大は逆転で立教を下し、今季初勝利を挙げた。2回の表、立教に2点を先制されたが、この回、スクイズを外して3塁走者を刺し、さらに2死1塁からの長打で、レフトからの好返球で1塁走者を本塁で刺して、追加点を阻んだプレーが最後まで効いた。
 東大は岡投手が先発したが、3回からは佐々部投手、5回からは氏家投手がマウンドに登り、小刻みな継投で、立教の攻撃をしのいだ。7回からは、林投手が登場、8回のピンチで先日完投の遠藤投手までつぎこむなど、まさに総力戦の様相を帯びた。
 東大は、2対2で迎えた7回裏、佐藤選手のレフト前ヒットと多田選手の内野安打で、1死1、2塁の勝ち越し機をおぜんだてした。ここでこのところ好調の丸山選手が3塁へのゴロを放ったが、これを立教の3塁手が好捕したものの、セカンドに悪送球をしてしまい、2塁から佐藤選手が生還、1点を勝ち越した。続く、濱田選手の安打で満塁とチャンスを拡げると、村田選手がレフト前に適時打を打ち、4対2と立教を突き放した。
 しかし、粘る立教も、7回、8回と満塁まで攻めたて、東大を土俵際まで追いつめた。さらに、9回には1点を奪い、3対4と1点差までつめよったのち、2死1、2塁の絶好の逆転機を迎える。ところが、8回から登板の東大エース遠藤投手の前に、国領選手がいいあたりながらもセンターライナーに終わり、ゲームセット。最後まで息の抜けない薄氷を踏む勝利ではあったが、東大にとっては、最下位脱出に希望をつなげる貴重な1勝となった。

 <ひとこと、コメント>
 この連載をはじめてから、初の東大の勝利を迎えることとなった。感無量である。神宮で勝つことは難しい。ミスがあったら、必ずつけこまれる。ところが、この2試合の東大は、ミスも少なく、いい感じに仕上がってきていた。さらに、安定感抜群の遠藤投手のほかに、怪腕の氏家投手が復帰したことの意味はとてつもなく大きい。明日は4年生の総仕上げの試合となる。氏家投手を先発に、丸山選手、濱田選手の猛打が爆発する試合展開を期待したい。

 《MVP》東京大学・氏家修投手−東大ファンとして、氏家投手の復活をどれだけ待ち望んだことか。44番のユニホームがグラウンドにあらわれただけで、心は躍り、マウンドに登る日がついに来たことで、胸が熱くなる思いだった。この試合で、氏家投手は、3番手として見事な投球を見せ、完全復調を印象づけた。氏家投手の復活が、東大に勝利をもたらしたといっても過言ではないだろう。球威、制球、マウンド度胸、どれをとっても六大学のほかのエースとひけをとらない氏家投手の復活は、明日にも、そして来年にもつながる大いなる希望であった。

 《敢闘賞》立教大学・早川選手−早川選手もまた、最後のシーズンに骨折というアクシデントに見舞われながらも、驚くべく回復の早さで最終戦に登場してきた。韋駄天の早川選手がいるだけで、立教の攻撃陣の厚みは全然違ってくる。今年の東立戦(5位争いの隠れた好カード)は、氏家投手と早川選手の復活による役者の勢揃いも手伝って、見応えのある闘いとなっている。明日もまた、お互いの力を最大限に出し合って、いいゲームを期待したい。





 (第十二戦)1997/10/27(月)対立教3回戦

    
東京大学
立教大学


 《評》 東大は接戦の末、1点差で立教を下し、今季初の勝ち点を獲得、立教を退けて見事5位を奪還した。先発の布施投手が2回に1点を失ったが、その直後の3回表、シーズン後半に入り、打撃絶好調の主将丸山選手が、1死満塁から走者一掃の2塁打を放ち、逆転に成功した。ところが、あとがない立教もしぶとい粘りで、4回裏、5回裏と1点ずつを返し、3対3の同点で、勝負は終盤に持ち越された。
 ここで、7回1死2、3塁から4番の濱田選手が内野ゴロの間に、東大は虎の子の1点を奪った。立教が後攻というプレッシャーのかかる状況にもかかわらず、三連投の遠藤投手がロングリリーフで好投、4対3で逃げ切った。遠藤投手は通算3勝目となり、氏家投手と並んだ。今シーズンの東大の通算成績は、2勝9敗1分で5位。4年生にとっては、最後の試合を白星で飾ることができ、いいシーズンだったといえるだろう。また、シーズンの後半に入って、粘り強さが感じられるところから、チームの底力がついてきたことがうかがえるシーズンだった。


 《MVP》東京大学・丸山剛志選手−主将として1年間東大野球部を引っ張ってきた丸山選手が、最後の試合で貴重な働きをした。丸山選手はシーズンの前半はつきもなく、不振だったが、中盤以降、俄然盛り返してきた。細い身体ながらも、早稲田の藤井投手から本塁打を打つなど、パワーも十分で、3番打者として見事な活躍だった。また、本日の試合での、1死満塁からの走者一掃の2塁打は、4年間の大学野球生活の総仕上げとして心に残るものになった。

 《敢闘賞》該当者なし。


 【シーズンMVP(東京大学)】遠藤良平投手−2年生ながら申し分のない活躍だった。東大ではこれまでにも小林至投手、舟山投手、松本投手など技巧派の名左腕投手がいたが、これらの東大の左腕投手の中でも、遠藤投手の投球術とマウンド度胸は随一のように思う。2年で通算3勝。今後の勝ち星は打線の援護次第であろうが、ぜひとも10勝をめざしてほしい投手である。がんばれ、遠藤投手!!