『アドルフに告ぐ@〜D』

手塚治虫(文春文庫、1992)



 8月15日、今年も敗戦の日を迎えた。戦争の季節に、二週続けて戦争の物語を紹介しようと思う。第一週目は『アドルフに告ぐ』。ご存知のようにこの本は巨匠手塚治虫の代表作。アドルフ・ヒトラーとあと2人のアドルフの数奇な運命を通して、戦争における人間の憎しみと残酷さを描いた作品である。登場人物はドイツと日本を駈け巡るが、日本の主要な舞台は、2人のアドルフ少年の住む神戸の町である。この本を、妹尾河童の『少年H』と重ねながら読むと、総力戦時代の子どもたちのくらし、人々のくらしがさらに生々しく伝わってくる。手塚の仕事のすごさを感じさせる一冊である。