『「テーマ学習」を創る』

筑波大学附属駒場中学校・高等学校編(学事出版、2000)



 本書は、2002年度から実施される総合学習にさきがけて、筑波大学附属駒場中学校、高等学校で行われているテーマ学習の実践報告書である。教科の境界線をこえて、教師がチームを組み、少人数のゼミナール方式で学び、調べ、まとめる作業が行われている。内容は、例えば、「共生」という思想を、ハンセン病へのまなざしを題材として、国語の教師と社会の教師がチームを組み、前者が「古典作品・歴史資料を用いて、歴史的背景や精神風土に迫り」、後者が「視聴覚教材や新聞記事、及び最新のデータを示しつつ、近現代において、何が課題として残されているか」を問うといったように、興味深いものに仕上がっている。生徒の知的満足度も高く、約半数の生徒がテーマについての興味・関心が高まったと回答している。
 本書の実践記録には、実践的にさまざまなアイディアの触発があり、確実に新しい学びの方向性を示しているということがいえる。ただ、ここで考えさせられたことは、このような学びは、筑波大学附属駒場中、高のような高い文化的資産をもつ家庭の子弟が集まる超エリート校だけではなく、むしろ底辺校、教育困難校といわれている学校でこそ本腰を入れて取り組んでいかなくてはならないことではないだろうかということであった。「学びから逃走する子どもたち」(佐藤学)を学びによって自立させる方法が現場から示されつつあるのだから、教育行政はスリム化という名の下に子どもたちの切り捨てを断行するのではなく、教育予算を惜しむことなく学びの復権を支えていくことが求められている。