『一七歳の性』

河野美香(講談社α新書、2000)



 著者の河野美香は、高知県生まれの産婦人科医。現在、徳島逓信病院産婦人科医長を務めている。「愛と性」についての学びは、私たちが幸せな人生を生きていくために不可欠なものであり、子どもたちにとっても興味津々なものである。ところが、私もふくめた教師にとって、あまり得意な分野ではない。一つの回答がないためか、あるいは生徒のほうが経験豊かでリアリティにあふれることに臆するためか、何となく性について学びは避けがちである。しかし、大人が性についてまじめな話をすることを避けている間に、子どもたちの実態ははるかに先を進んでいるのである。子どもたちにとって、一番知りたいことは、お説教ではなく、性ってどんなものなのか、性の先には何があるのか、性は人生をゆたかにするものなのか、まずしくするものなのかを実感させてくれる具体的な事実である。この本は、性の最前線にたつ産婦人科の女医さんによって書かれたもので、内容もわかりやすく、具体的な事例に富んでいる。私も大人から性についてほとんど教わってこなかった人間であるが、こうした本を手がかりとしながら、学生とともに考えていけたら、すばらしいのではないかと思っている。