『学校って何だろう』

苅谷剛彦(講談社、1998)



 著者の苅谷剛彦は、「わかりやすくて、おもしろい授業が学生たちの間で評判の」(本書より)教育社会学者。大学での自らの実践を語ったものとして、『知的複眼思考法』があり、この本においても、学び手を知的にひらいていくナビゲーターとして、いくつものポケットをもっていることがわかる。
 さて、『学校って何だろう』は、著者が自分がやってきた学問を中学生にわかるように書き綴った本である。専門用語でいえば、ヒドゥン・カリキュラム(隠れたカリキュラム)、再生産理論などが、著者によって、「知らず知らずのうちに、学校生活を通して学ぶことがら」や「どのような家庭に生まれ育つかによって、学校の成績に違いが出てくる」というような簡潔なことばで説明され、そこに具体的な例が盛り込まれている。本書は、教育社会学の成果をわかりやすく伝えるという点においては、かなり実現されているように思われる。ただ、中学生にとって、この本を読むことがどのような意味をもつかについては、いくつか議論の余地があるだろう。例えば、「どのような家庭に生まれ育つかによって、学校の成績に違いが出てくる」というような文章を、中学生がどのように受けとめるかは、知りたいところである。本書をベースとして、座談のようなかたちに、ひらいていったら、面白い学びが生まれそうである。