『交流分析入門』

桂戴作・杉田峰康・白井幸子(チーム医療、1984)



 交流分析関連の本のとりあえずの最終回。本書の中から一つ技法を紹介して交流分析シリーズ(1)を終えます。ゲシュタルト療法という方法です。椅子をつかった技法で、2つの椅子を準備して、自分が人生の早まった決断をした場面をもう一度生き直します。先週の例を継承して、一つシナリオを例として出します。「学校からの帰りが遅くなった。でもそれは居残りで宿題をさせられた友だちのA子ちゃんを待っていたためだった。しかし、帰ったら、母親に頭ごなしに怒られた。わけを説明しようとしても『言い訳をするな』と受けつけてもらえなかった。そこで人に主張してもわかってもらえない、いっそ黙っていようという決意をした。」というものです。椅子を使ったゲシュタルト療法では、自分の中に埋め込まれたP(親)とC(子ども)を外在化させます。まずCの言い分をきちんとPに聞かせます。Cの中にたまっていた感情を吐き出します。そして、自分が受けとめてほしかったようなPを作ります。感情を放出し、それを肯定的に受けとめた上で、Pがどうしてそういう反応をしたのか、冷静にAで捉え直します。この過程をシナリオにしてみると、C「お母さん、何であのとき、わたしのいうことを聞いてくれなかったの。クラスメイトのA子ちゃんが残されて、1人で帰るのは寂しいだろうと思ったから、待っていて、遅くなったのに、頭ごなしに叱るなんてひどいよ。わたしはとってもかなしかったよ。どうして受けとめてくれなかったの。」、P「ごめんね、あの頃、お父さんが外で女の人を作っていて、別れようかどうしようかと、ものすごくイライラしていたのよ。それであなたに八つ当たりをしてしまったわ。」、C「わたしはきちんと話を聞いてもらって、わたしをほめて包み込んでもらいたかったのよ。」(儀式のやり直し)。このようなシナリオの生き直しを通して、自分の人生を変えていく再決断をする。交流分析は、ただ自分のあり方を分析するだけではなく、剥奪された自分を回復し、自分らしく生きていくための一つの方法を示してくれます。