『叱ってばかりの私』

プチタンファン編集部(婦人生活社、1999)



 この本は、1歳から4歳の子どもをもつお母さんたちを対象とした育児雑誌「プチタンファン」へ届いた、今育児で悩み、苦しんでいるお母さんたちの手紙を掲載したものである。文京区音羽で35歳の主婦が2歳の顔見知りの女の子を殺害し、実家の裏庭に埋めたという事件が最近起こり、育児についてお母さんたちが自分自身のコンプレックスなども抱えながら、複合的に悩んでいるということが明らかになりつつあるが、この本の生の声に接していると、あの事件が氷山の一角に過ぎず、多くのお母さんたちがやり場のないストレスに満ちて育児に向き合っていることが伝わってくる。暴力をふるう幼児虐待や教育ママという名の幼児虐待は、多くの場合、親自身の自己肯定感が低く、それが子どもに投影されることで生じている。今までは、夫の育児協力の問題だとかいわれてきたが、育児協力を行う夫のもとでも、虐待の問題は起こりうることが、本書には示されている。もはや、自己否定とそれに伴う攻撃性は、社会全体に蔓延している病理であり、それを何かのせいにして終わりにすることはできない。本音をもって、同じ経験を出し合い、理想の家族、理想の夫婦などの神話を解体し、自分らしい生き方を1人ひとりがおそれずに模索していくこと、そして専門家はそのためのお手伝いをすること、それなくしてはわたしたちが癒されることはあり得ないと思われるのである。