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Patti Smith "peace and noise"

・パティ・スミスの新しいアルバムが一年ぶりで出た。「peace and noise」今年の一月に大阪でコンサートを聴いたばかりだったから、「おや?」という感じがした。何しろ、去年出たアルバム「gone again」は10年ぶりだったのだから。

・何かあったのかな、と思ったら、コンサート・ツアーで組んだバンドのギタリストのオリバー・レイと一緒に暮らしはじめたらしい。彼は 24歳だというからダブルスコア以上ということになる。ちなみにパティは50歳だ。この「peace and noise」ではオリバーが7曲も曲作りに関わっている。「愛は人をクリエイティブにする」ということだろうか?ぼくにはそんなエネルギーはないから、とてもできそうもない。だから、羨ましいというよりはおもわずすごいと言ってしまった。もっとも、当然のことながら、甘いラブ・ソングなどはほとんどない。相変わらず強いエネルギーのあるメッセージ。

・中国の江主席が先日アメリカに行ったが、チベットに対する弾圧への抗議やダライ・ラマを支持するデモが各地で起こった。中国の人権政策に対する批判はアメリカ人にとってはかなり敏感に感じられる問題のようだ。このアルバムにも、1959年の中国によるチベット弾圧とダライ・ラマの追放をテーマにした「1959」という歌がある。

中国は混乱を極め/狂気の沙汰が氾濫した
ダライ・ラマはまだ若かった
自分の国が炎に包まれるのを目の当たりにした/暗雲の縁に吹き倒されるのを
はなはだしい不名誉だ
そびえるヒマラヤの地平に/チベットは流星のような存在だったが
理性と協調は押し潰された/地上の楽園

・また、このアルバムには今年死んだアレン・ギンズバーグの詩を歌った曲「スペル」もある。

世界は神聖/霊魂も神聖/肉体も神聖
鼻も/舌もペニスも/手も肛門も聖なる部分
すべてのものは神聖/人間はみな神聖
いたるところ聖なる場所/毎日は永遠
すべての人間は/天使のように気高く燃え上がる力
狂人もあなたとおなじように神聖/わたしの魂か、それ以上に神聖

・このアルバムを聴いていると、歌はやっぱりことばだな、という気になってくる。一方ではきわめてパーソナルな世界。子どものこと、死んだ夫のこと、友人のこと、そして新しい愛のこと。また他方では今関心のある外の世界。チベットのこと、オカルト教壇のこと、そして、ビート詩人の死とビートの風化........。

・サウンドはオリバーのアレンジでちょっと耳新しいところもあるが、パティ節に変わりはない。けれども、そんないつもながらの彼女の声と歌い方が伝えるのは、彼女にとっての、悲しいことやつらいことや悔しいことや腹立たしいこと、そして楽しいことだ。たえず変わり続けている、彼女の経験する世界。それはやっぱり、歌詞を追うことでしかわからない。 (1997.11.24)

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1997年11月24日 22:21に投稿されたエントリーのページです。

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