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宮入恭平ライブ

miyairi1.jpg・大学院の僕の演習にはミュージシャンがいる。ジャーナリストもいれば、元お笑いタレントもいる。みんなユニークで、毎週の長時間に及ぶゼミも飽きることがない。基本ができていない点がちょっとだけ悩みの種だが、その分きっちりしぼる。ついてこれなければ、「ハイ。さよなら!」と引導を渡すことにしているが、落ちこぼれは少ない。というより、おもしろがって修士ではすまずに博士まで進んでしまうから、僕としては、その先どうするんだろう、と心配するばかりだ。「研究者になろうたって、なかなか大変だよ」といったり、「なまじ理屈を身につけると、君たちのよさが消えるかもしれない」といったりするのだが、学生たちはさほど気にしていない。

miyairi2.jpg・そんな学生の一人がライブをやった。宮入恭平。CD も出しているプロのミュージシャンだ。ただ、修論を書いていたから、ライブは1年ぶりだという。たまたま大学に出校した日だったから、少し研究室に長居してつきあうことにした。もう30代の後半で、有能なパートナーに養ってもらっているようだ。ハウス・ハズバンドで学生でミュージシャンという、なんともうらやましいところにいる。
・彼の修論は『ライブハウスの社会史』。日本の音楽状況とライブハウスの関係を70年代からたどり、現在のライブハウスとそこで歌い、踊り、演奏するミュージシャンたちの現状をフィールドワークしたものだ。

miyairi4.jpgmiyairi5.jpg・なかなかの力作だったと思う。だから今は、それを本にして出版できるよう書き直している。学者になるよりは、きっちりした音楽評論や文化批評のできるミュージシャンになってほしいと期待しているが、もちろん、ことはそれほど簡単ではない。がんばってほしいが、また、本職がお留守になってもいけない。

miyairi6.jpg・で、ライブである。場所は東京の中央線国立駅の南口にある「地球屋」という店だった。一橋大学のすぐ近くにあって、大学通りに面している。院生たちと早めに待ち合わせて、モスバーガーで軽い夕食をとった。地下の店に入ると、ウクレレで歌う青年のパフォーマンスが始まっている。「雑草〜」の歌が妙に耳に残った。小さくて細長い場所だが、音は悪くない。

miyairi7.jpg・彼のステージはかっこうよかった。エレキギターのバック(カマチョ)もついて、とてもリズミカル。CDで聴いていたから曲に馴染みはあったが、ライブの方がずっと迫力がある。若くて小気味のよいステージ。彼の番になったら、時間があっという間に過ぎた感じだった。十分にお金が取れるパフォーマンスで、もっとお大勢の客に聴かせなければもったいない。
・しかし、注文もちょっとだけ。「僕は、孤独、アイソレーション」。「そんなことはないだろう?」などと思いながら聴いた。さわやかだが、歳にあった、もうちょっと陰影や汚れや色気がある歌があってもいいな、と思った。もちろん、枯れや渋さなどまでは望まないけれども……。

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2005年06月21日 16:13に投稿されたエントリーのページです。

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