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John Cale "Circus Live"

cale1.jpg・ジョン・ケイルの"Circus Live"は題名通りライブ版で、曲目には「ヴェルヴェット・アンダーグラウンド」の時代から割と最近のものまである。ぼくは彼のベスト盤 "Seducing Down the Door: A Collection 1970-1990"をもっていて、今でも時折聴いているから、なじみの曲が多かったが、ほとんどが新しいアレンジで、新鮮な感じも受けた。付録についているDVDには練習風景が収められていて、バックのミュージシャンは若手ばかりだった。1942年生まれだからもう65歳になる。オフィシャルサイトを見ると、1月から3月までヨーロッパ中を連日コンサートしてまわったようだ。ずいぶん精力的だが、アルバムを聴くと、集大成の仕事をしたようにも思える。それほど目立った人ではないけれども、いい歌がすくなくないし、ほかのミュージシャンとの共作やアレンジにはしゃれたものが多い。

cale3.jpg・ケイルはウェールズ出身でロンドン大学でクラシック音楽を学んでいる。ニューヨークに出かけて、最初はバーンステインやジョン・ケージに認められたのだが、アンディー・ウォホルがプロデュースしたヴェルヴェット・アンダーグラウンドにヴィオラの奏者として参加した。このバンドはルー・リードが中心で、今でも話題になるのは彼とヴォーカルのニコばかりだが、ケイルの存在は小さくなかったはずだ。ケイルはリードと仲違いして2年ほどで脱退しているが、ウォホルを追悼したアルバム"Songs for Drella"では、二人の関係だけでなく、ウォホルとの間もうまくいかずに絶交状態だったことが歌われている。人間的にはうまくいかなくても、音楽的なぶつかり合いなら、1+1が2以上になる。このアルバムには、そんなすばらしさがある。


君はお金を手にし、ぼくは時を得た
君は自由を欲しがったが、ぼくはそれを自分のものにした
君は関係を手にし、ぼくはアートを見つけた
君はぼくの関心を引きつけ、ぼくは君の視線を好んだ 
ぼくはとるべきスタイルを身につけ、君はそれを人びとに受け入れさせた
"The Style It Takes"

cale4.jpg・もっとも、ケイルにはほかのミュージシャンとの共作がたくさんある。自我をあまり出さずに、相手のよさを引きだしながら、自己主張もしっかりする。そんな才能は他のミュージシャンを見回してもあまり見つからない。例外的に思いつくのは、ブライアン・イーノぐらいだろうか。イーノもデヴィッド・バーンやキング・クリムゾンのロバート・フリップなど数多くのミュージシャンとアルバムをつくっているが、ケイルとの共作の"Wrong way up"は、ケイルらしさと歌を歌っていた初期のイーノの感じがうまく一緒になっていて、楽しい仕上がりになっている。多くのミュージシャンがアルバムの制作にふたりの力を借りようとするのもうなずける一枚である。

・"Circus Live"にはケイルを中心にした一枚の絵が挿入されていて、2まいのCDと1枚のDVDのカバーには、その絵の一部を拡大したものが描かれている。描いたのはデイブ・マッキーンで、オフィシャルサイトを訪ねると、その絵がケイルのキャリアを表現したもので、拡大して細部が確認できるようになっている。頼りなげに宙を舞うアンディ・ウォホルはよくわかるが、ルー・リードはどこにいるのかわからない。全体にピカソを思わせる絵で、それらしいものも描かれている。ギターにヴィオラをもったケイル。絵を見ていると、やっぱり集大成としての作品という印象がますます強くなってきた。

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2007年04月23日 07:26に投稿されたエントリーのページです。

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