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花粉症とケルト神話

Anuna "Sensation" "Essential Anuna" "Anuna"

journal1-134-3.jpg・ライ・クーダーがプロデュースした”San Patricio”を聴いて、また、アイリッシュの音楽に興味が向きはじめた。チーフタンズとの共作である”San Patricio”は、アメリカとメキシコ(米墨)の戦争(1846)に関係したアイルランドからの移民たちと、彼らが残した歌を掘り起こしたものだ。戦争には他にも、ドイツや、フランスやイタリア系の移民が参加したが、多くはカトリックで、メキシコ政府は彼らに国籍と、アメリカ政府以上の報酬を約束したらしい。あるいはニューオリンズなどから逃れてきた黒人の奴隷もいたようだ。そんな、さまざまな人種や民族と文化が混在したところで生まれた一つの音楽。”San Patricio”にはアイリッシュともメキシカンとも言い難い音楽も感じられる。

anuna1.jpg・アイリッシュ音楽はだいたい集めたと思っていたが、まだまだいろいろある。そう思うとまた、聴いてみたくなった。アイリッシュ音楽を聴き始めた頃に買ったCDにゲール語で歌う奇妙な歌があった。繰りかえし歌われる言葉が何度聴いても「ワタシ、カフンショウ」と聞こえて、聴くたびに笑ってしまったのだが、CDにはミュージシャンの名がなかったから、そのままになってしまっていた。それを思い出して、曲名の"Fionnghuala"をグーグルすると、「Anuna」というグループ名だとわかった。で、さっそくアマゾンで検索して、何枚かを購入することにした。

anuna2.jpg・聴いてみると、男女混声の合唱グループで、その透明感のあるハーモニーはエンヤに似て、きわめて耳障りがよいのだが、しばらくすると音が鳴っていることすら忘れてしまうほどで、何度聴いても印象として残らない感じがした。しかし、けっして気に入らないわけではない。できのいい映画音楽のように、風景や状況に溶けこんで意識されないが、それゆえに自然で、それなりの心地よさも感じさせてくれる。サティの「家具の音楽」よりもずっと「家具の音楽」らしい、と思った。

anuna3.jpg・ところで、カフンショウと聞こえる"Fionnghuala"だが、「フィヌァラ」と読むようで、Wikipediaで調べると、ケルト神話に登場する白鳥に身を変える少女の名で、海神リルの娘ということだ。ゲール語の歌詞と英語の訳を見つけたが、「カフンショウ」と聞こえるところの英訳には「ここでは何も手に入らなかった」とあった。元の物語を知っていればよくわかるのかもしれないが、英語の訳を読んでも、今ひとつわかりにくい内容で、ケルトの音楽を理解するためにはケルト神話を知る必要があると思った。

Jim McCann.jpg ・わからない言葉で歌われる歌が時折、日本語としてはっきり聞き取れることがあって、それがまた何とも奇妙であったりすることが少なくない。「ワタシ カフンショウ」はその好例だが、ジム・マッカンというアイルランドを代表する歌手のライブ盤には、みんなで歌いましょうと言って、「1,2,3,4」をいくつかの外国語で紹介する場面がある。日本語の「イチ、ニイ、サン、シイ」では会場が大爆笑になるのだが、理由はもちろんわからない。anunaは去年の暮れに日本の各地でコンサートをやったようだ。"Fionnghuala"を歌ったとしたら、そのときの会場の様子はどうだったのだろうか、と想像してしまった。

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2010年07月05日 09:44に投稿されたエントリーのページです。

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