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キース・ジャレットのピアノ

Keith Jarrett "The Koln Concert"
"The Melody At Night, With You"
"Staircase" "Facing You"
"My Song" "Standards Live"

keith1.jpg・キース・ジャレットはジャズに限らず、クラシックにも幅を広げて活動しているピアニストだ。そしてアルバムには、ピアノ・ソロのものがかなりある。「ケルン・コンサート」は彼のアルバムの中では一番ポピュラーなもののようだ。1974年にドイツのケルンでおこなわれ、75年にアルバムとして発売された。曲目はなく一曲目からPart1、PartIIA、ParetIIB、PartIICと名づけられている。要するに全曲がこのコンサートの中で生まれた即興音楽(インプロヴィゼーション)だということなのである。

keith2.jpg・即興音楽とはあらかじめ決められた主題をもたずに、その場で演奏をする音楽だ。聴いている人はもちろん、演奏者自身にも、どんな音楽が展開されるのかはわからない。しかし、「ケルン・コンサート」でジャレットが弾くメロディはあまりに美しいから、それが即興だとは信じられない気がしてしまう。ジャズにはどんな曲にも、途中で即興になる部分がある。トリオにしろカルテットにしろ、演奏者たちが即興で奏でる音でやりとりをする部分は、多くの場合、その曲の一番の聴きどころになる。けれどもジャレットの即興は曲全体におよび、そしてたった一人でおこなわれる。そもそも、このアルバムで奏でられる音楽はジャズというよりはクラシックのようでもあり、また、ジャンルなどは越えた独自の音楽のようにも聞こえてくる。

keith4.jpg・ネットで検索してみると、ジャレットの興味深い発言を見つけることができた。たとえば、演奏の前には、演目の練習をするのではなく、準備を調えないための時間が必要なのだと言う。つまり、あらかじめ主題をイメージして、その練習をするのではなく、逆に何のイメージも持たずにステージに立てるように準備をするというのである。しかし、それは無から有を創造するためではない。彼にとって、その時生まれた音楽は「私という媒体を通して神から届けられたもの」だからである。こんなことばを読むと、彼の音楽には宗教性が強いのかもしれないと感じてしまうが、けっして教会音楽に近いわけではない。

keith3.jpg・ジャレットのピアノを聴いたのはもうずいぶん前で、ずっと忘れていたのだが、何となくYouTubeで検索をして、その魅力にとりつかれてしまった。彼の演奏を見ると、ジャレットは時に腰を浮かし、立ち上がり、うめき声を上げ、足踏みをし、あるいは奇声を発しながらピアノを弾く。それは神と聴衆をつなげる媒体=メディウム=巫女が一種のトランス状態になっておこなう祭礼のようでもある。そして一曲ごとに立ち上がり、客席に向かって頭を下げる。クラシック音楽のコンサートでは当たり前の所作だが、その対照もまたおもしろいと思った。

・というわけで、「ケルン・コンサート」をはじめとして、何枚ものCDを次々購入した。トリオでの演奏、バッハなどのクラシック音楽を扱ったものなど、彼のアルバムはまだまだたくさんあって、買い始めたらきりがないほどだが、5月の末に日本でコンサートをやるという。今度こそは泊まりがけで行こうと、迷わないうちにチケットを買ってしまった。

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2011年03月07日 06:53に投稿されたエントリーのページです。

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