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まだやるぞ

ボブ・ディラン"Fallen Angels"
エリック・クラプトン" I Still Do"
トラビス"Everything At Once"
マーク・ノップラー"Altamira"

Dylan.jpg・ディランは1ヶ月に及んだ日本公演を無事済ませて帰国したようだ。その元気さにただただ敬服したが、75歳の誕生日に新しいアルバムが発売された。といっても新曲ではなく、前回同様ジャズのスタンダード・ナンバーを集めて歌ったものである。タイトルの「フォーレン・エンジェル」はカード・ゲームの名前で、ジャケットにもトランプ4枚持った手が使われている。ただし同名の曲はない。スタンダードと言っても、知っている曲はひとつもなかった。前作の『シャドウ・イン・ザ・ナイト』を聴いた時とは違って、ライブでもおなじみの歌い方や演奏だから、もうすっかりなじんでしまった感じだった。原曲通りに、わかりやすく歌うのを聴いていると、オーチャード・ホールで見た姿が浮かんでくる。

clapton5.jpg ・エリック・クラプトンは引退宣言をしては復活する。だからもうアルバムが出ても買うのはよそうと思っていた。しかし、ジャケットの絵とタイトルの「アイ・スティル・ドゥ」が気になって買ってしまった。直訳すれば「まだやる」だし、描かれたクラプトンは髪を刈り込んだ爺さんだったからだ。ネットで調べると「アイ・スティル・ドゥ」は好きなおばさんの口癖で、昔はかわいがってもらったと言った時に出たことばだとあった。だからその文脈では「今でもそうよ」といったニュアンスになるのだろうが、アルバム名としては「まだやるぞ」といった宣言に近いのかもしれない。"We shall overcome"にそっくりの"I'll be Alright"が気になった。調べてみると本歌のようだ。

travis6.jpg ・トラビスの『エブリシング・アット・ワンス』は2年ぶりの新作である。その前が5年ぶりだったから、今度は「もう出たの」という感じだった。聴いた感じは前作の『ホエアー・ユウ・スタンド』について書いたのと同じで「相変わらずのトラヴィス節で、以前のアルバムと続けて聴いたら、どれがどれやらわからないほどだ」となるだろう。バンド名の由来はヴィム・ヴェンダース監督の『パリ・テキサス』の主人公名だったと記憶している。妻子を捨てて失踪した男がテキサスのパリという街で再開する話だ。あるいはマーチン・スコセッシ監督の『タクシードライバー』で主演したロバート・デ・ニーロが演じた男の名もトラヴィスだった。しかし、このバンドが作る音楽はどちらとも無縁で優しく暖かだ。

altamira.jpg ・最後はマーク・ノップラーの『アルタミラ』。映画のサントラ盤で、アルタミラ洞窟を発見した人物の物語のようだ。学校の教科書でもおなじみの壁画だが、僕は一昨年に出かけて見た。実物は損傷がひどくて閉鎖されていて、今はそのレプリカが展示されている。発見者はマルセリーノ・デ・サウトゥオラ侯爵の娘で、アマチュアの考古学者だった侯爵が1880年に旧石器時代のものだと発表したが、相手にされなかったようだ。肝心の音楽だが、スペインにケルトが混ざったような感じに、アルタミラよりはガリシアを思い浮かべた。できれば映画も見てみたいものである。

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2016年05月30日 07:00に投稿されたエントリーのページです。

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