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トイレ・喫煙・etc.その2

・僕はヘビー・スモーカーではないが、我慢するのはつらい。だから飛行機で禁煙を強いられる海外旅行は、ここ数年敬遠してきた。行かなかった最大の理由がそれだったといってもいい。もっとも、全面禁煙になる前から飛行機は大嫌いで、特に離着陸の不安定なときにはいつでも生きた心地がしないから、なおさらという感じだった。それが今年の春にしたハワイ旅行で少しだけ払拭された。飛行機は相変わらず怖いが、タバコは吸わなくても我慢できることがわかったからだ。ただし、アメリカ行きの便ではライターが没収されるというニュースがあったこともあって、飛行機はもちろん、どこでも吸いにくいのだろうなと予測はしていた。そうは言っても、吸いなれているウィンストンの赤箱を1カートン、バッグに入れることは忘れなかったが……。
・ところがロンドンに着いてみると、建物内には禁煙マークが目立つが、一歩外に出れば禁止する表示は何もない。実際に多くの人が歩行喫煙をしているし、吸い殻入れがないから平気でポイ捨てしている。路上には吸い殻が一杯なのである。本当にほっと一息、ついでに久しぶりの一服。頭がくらくらするほどよく効いた。
・確かめたわけではないが、イギリスにおける建物内での禁煙は、条例で一方的に定められたもので、イギリス人の間に自発的な強い動きがなかったのではないかという気がした。実際、建物内ではあってもホテルのロビーには灰皿がおいてあるところがあったし、喫煙可の部屋もあった。レストランでも必ず席を喫煙にするかどうか尋ねてきて、一角では食後においしそうに吸う人が多く見かけられた。

・またまたところがである。アイルランドにはいると状況は一変。建物内ではほとんど全面禁煙になった。可哀想なのはパブで、酒とタバコはつきものだが、客たちは吸いたくなると表に出て外で吸わなければならない。だからどこのパブも入り口にはタバコを吸う酔客がたむろする。観光客にとってはきわめて入りいにくい光景だが、観光客を呼び込むためにマナーの徹底を急ぐという姿勢がありありだった。アイルランドのパブでは、観光用として新しく作られたゾーンはともかく、従来からある店では、ほとんど食べるものがない。客はただひたすら黒ビールを飲んで、しゃべり、歌い、踊る。そこにタバコは不可欠だと思うが、そのイヤな煙と臭いは消さなければならないというわけである。ところが店内は、タバコの臭いは消えても小便の臭いが充満しているから、決して居心地がいいわけではない。聞きたいライブ音楽がなければ、とても長居はできないし、そもそも入ったりしないだろう。第一僕は、最初の晩、その入りづらさに躊躇して、あきらめてホテルに帰ったのである。
・広告塔や立て看板の有無、建物の様子、町行く人の格好などを比較すると、イギリスとアイルランドの生活格差がよくわかる。イギリス人は背筋を伸ばして大股で歩くが、アイルランド人は少しうつむき加減で、たらたらという感じがする。アイルランドは近代化が遅れ、今やっと経済成長をし始めたところだが、そんな状態が人びとの挙動からもよくわかる。そんなところへの突然の禁煙化条例なのだと思う。聞いたわけではないが、パブの客はさぞぶつくさ文句を言いつつ、法を破ることはせずに、タバコを吸いに店の外に出るのだと思う。
・それに比べてイギリス人は、たとえ禁煙が国際的な風潮であっても素直には従わない。そんなプライド、あるいは個人主義的な考え方があるのだろうか。つんとすまして姿勢を正して歩くイギリス人と、田舎で出会う人たちの人なつこさや親切さを感じさせるアイルランド人。そう対照させてもいいかもしれないが、イギリス人が冷たいといわけでは決してない。僕らが行き場所を探しあぐねてウロウロしていると、どの人も、声をかけて助けを申し出たりしてくれた。あるいは、こちらから尋ねれば親切に応じてくれた。

・そう思うと、最近の日本人のことが気になった。東京にはすでに、田舎の人情はない。しかしまた、自分の行動には自分で責任をという個人主義的な態度も育っていない。禁煙条例が出れば渋々したがう従順さがあっても、人びとの間につながりを感じさせようとする態度はほとんどない。イギリスもアイルランドも人びとの顔は本当に多様だ。その人たちが互いに相手を意識し、気遣いあって生活している。対照的に日本はというと、ほとんど同じ顔をした人たちが互いに全くの無関心・無関係でいるから、一見平穏に見えても、自分勝手で殺伐とした感じがしてしまう。→(続き)

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2005年09月14日 10:40に投稿されたエントリーのページです。

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