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大雪騒動で考えたこと

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・2月14日から15日にかけて河口湖に降った雪は、確かにすさまじかった。おかげで1週間以上、毎日雪かきをしなければならなかった。それはもう、うんざりするほどの苦役だったが、自然のいたずらには文句の言いようもない。けれども、けっして八つ当たりではなく、呆れることや腹の立つことがいくつもあった。

・短時間で猛烈な雪が降ったから、道路で立ち往生したクルマがずいぶんあった。閉じ込められた上に停電して凍える目にあった人も多かったようだ。大人数が宿泊したホテルでは、自衛隊に救出されたところもあった。全くの想定外といえばそうなのだが、県や町、そして国がどう動いているのか、さっぱりわからなかった。

・新聞は来ないし、テレビはオリンピックやバラエティ番組ばかりをやっていて、ニュースでは目立った状況ばかりをくりかえし伝えていた。県や町のホームページを見ても、大雪についての情報は何も載っていない。時折聞こえてくる地域の防災放送は、主要道路の除雪から順次進めていることを何日もくり返し言い、ご理解とご協力をということばで締めくくった。これにはもう、腹が立つというより、情けない気になってしまった。

・一番役に立ったのはネットだった、グーグルで検索すると、近隣の道路状況などについて個人的に発信する人のブログや、自治体の公式のツイッターやフェイスブックがいくつも出てきた。しかし、富士河口湖町のホームページにある災害情報関連のページは何日も更新されないままであったし、フェイスブックはあっても休業状態で、ツイッターはなかった。対照的なのは北隣の笛吹市で、市の公式ツイッターで道路の除雪状況や孤立地域についての情報を集め、発信していた。東隣の富士吉田市にも公式ツイッターがあったが、これが発信しはじめたのは4 、5日経ってからだった。

・富士吉田市や富士河口湖町は富士山の噴火や東海地震の危険性に対応して、災害時の対応について備えをしていると思ったが、今回の大雪で、まったく何もできていないことが露呈された。孤立状態が続いて3日ほど経ってから、僕は毎日、町の土木課に除雪はどうなっているのか電話をした。担当している地区の土建業者にお願いしているといった返事をくり返すから腹が立って、お願いではなく早く取りかかるよう命令すべきだということ、電話でではなく、実際にどういう状況なのか直接出向いて確認すべきだということを言った。

・そんなやりとりを毎日くり返して、7日目にやっと除雪が行われた。やってきたのは別地域の土建業者だった。近隣の人たちと相談して、みんなで町に電話をするようにしたからの結果で、黙っていたら何日孤立したままにされたかわかったものではなかったと思う。しかもその間、町からは食料や健康状態について聞いてくる電話が一本もなかった。住民がどういう状態にあるかを把握する体制がまるでできていなかったのである。

・ネットでは長野県佐久市市長のツイッターが話題になった。これは以前から市民からの意見や情報を集め、市民に市長の声を発信するメディアとして使われてきたもので、大雪についても大きな情報源になったようだ。このネットの利用状況が、今回の大雪による災害についての情報の有無を左右したことは間違いない。言うまでもないがツイッターやフェイスブックの利用には一銭のお金もかからないのである。山梨県は災害時に市町村との間をネットでつなぐ「防災システム」を1000万円かけて備えていたようだ。ところが今回の大雪ではまったく使われなかったと言う。箱物だけでなく、ソフトについても、役に立たないものに無駄遣いをする傾向が露呈された。

・今回の大雪災害で得た教訓は、いざというときに、国も県も町も当てにならないということ、マスコミも新聞はもとより、テレビもラジオもだめだということ、それとは対照的にネットはずいぶん役に立って頼りになるということだった。ただし、停電になればこれも使えないから、スマートフォンのバッテリーを余分に買って、いつでも充電しておくとか、発電機を買うとか自前での備えをしなければならない。道路の雪かきだって町をあてにはできないから、除雪機も用意する必要があるのかもしれない。

・国税や地方税をたくさんふんだくられているのに、結局は、自分の命や生活は自分で守らなければならない。今回の経験で得た教訓は何よりこの一点だった。そう考えたときに、やっておくべきことや日頃の気構えにはとんでもなく多くの課題がある。3.11から3年目にして僕はそんなことを改めて自覚したが、それだけに世の中の脳天気さには呆れるというよりは、ぞっとしてしまう。

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2014年03月10日 06:32に投稿されたエントリーのページです。

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