« 屋久島、縄文杉と白谷雲水峡 | メイン | 世界の終わりの始まりのよう »

パニックのもとは誰ですか?


・新型コロナ・ウィルスによる騒ぎがパニックと言えるような状況になっています。安倍首相の唐突な小中高校の一斉休校要請がその発端です。それ以前のテレビによる過剰な報道が人々の心に不安を植えつけていて、休校要請が、そこに火をつけたと言えます。店頭からはマスクはもちろん、トイレットペーパーやティッシュー、インスタント食品や缶詰め、そして米や小麦粉までが無くなったと報道されています。

・新型コロナ・ウィルスの怖さは、その実態がまだ突き止められていないことにあります。効果的な薬もまだ見つかっていません。しかし、インフルエンザと比較して、高齢者や病気を抱える人を除けば、軽度の症状ですむ場合が多いと言われています。たとえば日本ではインフルエンザによる死亡者は、ここ数年2000人から3000人を超えるほどになっています。アメリカでは1.4万人を超えたとされていますが、昨シーズンは6万人が亡くなっています。

・インフルエンザの場合、日本では学級閉鎖の基準はなく、各自治体に任されていて、クラスの4分の1とか3分の1が休んだ場合などまちまちのようです。そして新型コロナ・ウィルスについては、10代以下の感染者がごくわずかなのが現状です。にもかかわらず、安倍首相は、小中高校の一斉休校を要請しました。しかも、春休みまでですから、実質的には1ヶ月以上の休校ということになりました。

・驚いたのは、この要請について文科省も寝耳に水だったということです。しかも、専門家から要請されたわけでもないし、相談したわけでもないというのです。首相の慌てぶりだけが目立った行動ですが、その理由には、政権の支持率の急降下や東京オリンピックの中止といった、自分の地位を脅かす要因が迫っていたことがあげられます。まさに「エリート・パニック」の典型例だといえるでしょう。テレビで生中継された会見では、彼はプロンプターを使って、官僚の作った原稿を読み、あらかじめ用意された記者の質問にも同様の返答して、その場で上がった記者やジャーナリストの手には応えず、会見を終了させました。何一つ、その場で自分で考えた言葉は発しませんでした。

・そのおかげで、学校や子供を抱える家庭、給食にかかわる業者などは大混乱のようです。乳幼児の保育所や学童保育所はそのまま、休職した親については企業に負担を求めたり、有給休暇を使えと言ったりしています。国も補助をするとはしていますが、どの程度のものなのかははっきりしていません。そして自由業や個人経営者は補助の対象外になっています。要請前に事前に対応策を考えた形跡はありませんから、ちぐはぐさばかりが目立っています。

・そもそも、日本での現在の感染者数は実態を表しているのでしょうか。韓国に比べたら、感染の有無を検査する数は1割に足りていません。検査数を韓国並にしたら、感染者数も桁違いに増えるかもしれません。それは死亡者数にも言えるでしょう。何が原因で死んだかの特定についても、今の検査実態では、十分に把握しているとは思えないからです。検査能力の低さだとしたら、なんともお粗末な実態ですが、意図的に検査数を抑えているとしたら、これは国家的な犯罪です。

・とは言え、感染者数の増加を抑えることは必要です。人々が濃厚接触をしないようにするのが一番ですが、だったらなぜ、満員電車を放置しているのでしょうか。スポーツや芸能、年中行事のイベントが次々中止になっています。仕方なしに無観客でおこなう場合も少なくありません。しかしこれは、少しでも症状のある人には参加しないよう呼びかけ、入場の場で体温のチェックをしたり、会場をいっぱいにするほど入れなかったりするなど、個々の対応に任せたらいいのではないかと思います。現に映画館やパチンコ屋が営業を停止しているという話はあまり聞きません。

・今はインフルエンザや花粉症が蔓延する季節です。くしゃみや咳が出る人が多いのは仕方がないことでしょう。しかし、それに過剰に反応して、あからさまに遠ざかったり、叱責したりする人が多いようです。仕方がない面はあると思いますが、互いを異物や汚物、あるいは危険物のように思う気持ちの蔓延は、ウィルスよりももっと怖いように感じます。社会を壊さないため、経済を壊さないために政治がすべきことはたくさんあると思いますが、その肝心の政治がすでに壊れてしまっているのは、なんとも恐ろしい気がします。

About

2020年03月09日 06:37に投稿されたエントリーのページです。

ひとつ前の投稿は「屋久島、縄文杉と白谷雲水峡」です。

次の投稿は「世界の終わりの始まりのよう」です。

他にも多くのエントリーがあります。メインページアーカイブページも見てください。

Creative Commons License
このブログは、次のライセンスで保護されています。 クリエイティブ・コモンズ・ライセンス.
Powered by
Movable Type