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子育て日記に想うこと

kudo1.jpg・工藤保則さんから本が届きました。『46歳で父になった社会学者』(ミシマ社)というタイトルに、おやおやと思い、笑ってしまいましたが、読みはじめると、他人事ではなかったな、と反省してしまいました。

・工藤さんのパートナーは出版社で編集の仕事をしています。実は彼女とは2冊の本を出していて、最初の『コミュニケーション・スタディーズ』は彼女にとって最初の編集の仕事であり、2冊目の『レジャー・スタディーズ』は、出産後に復帰してすぐの仕事でした。相変わらずの仕事ぶりに、出産も子育ても順調なのだろうと、勝手に判断していましたが、この本を読むと、大変なことだったことがわかりました。

・本の内容は工藤さんが雑誌に連載していた子育て日記です。46歳になって初めての子育て体験が大変なことがよくわかります。何事も初体験で、それまでの生活習慣をがらっと変えなければならなかったのですから、それは当然でした。もちろんここには、しんどさだけではなく、子どもとつきあうことでもたらされた楽しい経験も、詳細な日記をもとに語られています。

・子どもは二人にとって計画的ではなかったようです。で、彼女には母親になることに対する不安が生まれました。出産前からあれこれ悩み、重いつわりや、出産時の苦闘、そしてその後の体調の悪さを抱え、仕事に復帰しての子育てと続きました。そんなこととはつゆ知らず、本を作る過程で、彼女にあれこれ注文したのではなかったかと、改めて思い起こさざるを得ませんでした。

・僕にとって子育ては、すでに40年以上前のことでした。あー、そんなこともあったなと、思いだすこともありましたが、ずいぶん違うと感じられることもありました。二人がフルタイムの仕事をしていれば、子どもは預けることになります。しかし、僕らはフリーで仕事をしていましたから、どちらかが家にいるローテーションを組んで、子どもを預けることはしませんでした。これは二人目の子どもの時も続きましたから、僕らの子どもたちには、保育所や学童保育の経験はありません。

・二人がフルタイムで働いて子どもを育てることが大変なのは、この本を読んでもよくわかります。これでは子どもが欲しくても無理だと思う人が多いのも頷けます。だからといってフルタイムでなければ、経済的に苦しくて生活が困窮してしまいます。その意味では、40年前に比べて、日本は明らかに貧しくなったと言えるかもしれません。そもそも預けることも容易ではないようですから、子どもの数が減るのは当たり前のことなのです。

・もう一つ、「イクメン」などということばが今頃になってもてはやされていますが、男が家事や育児に関わらないことは、40年前だって問題にされていました。僕は積極的に関わり、そのことを新聞や雑誌に書きましたし、テレビでも取り上げられたことがありました。半世紀近く経っても現状がさほど変わっていないことに、日本社会や男たちの意識の低さを感じます。それだけに、もう若くはない年齢になって家事や育児に奮闘する工藤さんには、がんばれ!とエールを贈りたくなりました。

・僕は自分自身が求め、経験したライフスタイルを研究対象にして何冊かの本を書きましたが、井上俊さんから「私社会学」と言われました。この本には、そんな特徴を感じて親近感を持ちました。

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2021年04月26日 06:00に投稿されたエントリーのページです。

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