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「御法度」

・映画館で映画を見たのはちょうど1年ぶり。見たい映画がなかったわけではないが、時間がなかったし、あってもその気にならなかった。本当に久しぶりだが、特に『御法度』が見たいわけでもなかった。何のことはない。友人から優待券をもらったのである。冬休みだし、使わなければもったいない。で、最近できたジャスコに行くことにした。ここには、映画館が10館近くもある。国道1号線に面してはいるが、淀競馬場近くで田圃以外は何もなかったところだ。一度出かけてみたいと思っていた。駐車場や建物が平面で広がる巨大なショッピング・モール。まるでアメリカである。そこで、本当に久しぶりに、チャンバラ映画を見た。
・『御法度』は新撰組の話である。松田優作の息子が演じる美少年が組に入ってくると、男たちは、何となく変な気持ちに囚われはじめる。誰もが「そっちの気は拙者にはない」と口にするほど気がかりな存在になる。最初に関係を持ったのは、一緒に入隊した若い浪人(浅野忠信)。次に別の男が言い寄るが、関係した後に惨殺される。隊の乱れを案じた土方(ビートたけし)が、少年に女の味を教えてやれと部下(トミーズ雅)に命ずる。そこで島原へ行こうとしつこく勧めるが、少年は取り合わない。やっとその気にさせてつれて行ったのに、太夫(神田うの)に指一つ触れずに帰ってくる。ところが誘った侍が襲われて、危うく斬られそうになる。犯人は最初に関係を持った男。そう判断した近藤勇(崔洋一)は美少年自身に制裁を命ずる。土方は少年の気持ちをくんで「むごい」とつぶやく。しかし、少年は顔色も変えず承諾する。
・美少年は京都でも有名な越後屋の息子である。なぜ新撰組に入ったのか、その理由はわからない。しかし、彼の周囲で次々人が斬られ、やがて、そのほとんどが少年によるものであることがわかってくる。男を虜にしておいて惨殺する。その恐ろしさに早くから気づくのは、やはり美少年の剣士だった沖田(武田真治)である。
・はっきり言ってそれほどおもしろいと思わなかった。病気から立ち直った大島渚がどんな映画を作ったのか、ちょっと関心があったが、拍子抜けという感じだった。彼はこの映画で何が言いたかったのだろうか。何を表現したかったのだろうか。
・ただキャスティングはおもしろかった。崔もたけしも監督である。二人とも大島が休んでいる間に、日本を代表する映画監督になった。黒沢監督が「影武者」を撮ったときにコッポラやルーカスやスピルバーグが集まって支援した。そんな関係を連想した。
・もう一つ、新撰組の衣装。今までのものとは全然違っていて格好いい。阪本龍一の音楽はほとんど印象に残らなかったが、サウンドは地響きがするような効果を使って新鮮だった。剣道の稽古場では、見守る土方を映しながら、木刀の音が背中から聞こえてきた。カラーでありながら、モノクロのようなトーン。それに、無声映画の頃に使われた字幕の手法。映画としての斬新さは十分に感じられた。その意味ではおもしろかったと言える。 (2000.01.04)

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2006年11月24日 15:56に投稿されたエントリーのページです。

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