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地デジ化顛末記

・テレビのアナログ放送が終わった。たいした混乱もなかったようだが、停止した日は来客もあって、一度もテレビをつけなかったから、終わりがどうだったのかはわからなかった。当然だが、今はアナログをつけても砂嵐状態だ。

・どうせろくに見ないからそのままでいいと思ったのだが、町へ出かけたついでに役場によって、難視聴地域に対する町の対応について聞いてみた。後で係の者が電話をするという返事で、処理しているのが自治体ではなく、県域のテレビ局であることがわかった。地デジ化は総務省の指揮でおこなわれているが、実際に対応に動いてきたのは各都道府県にある民放テレビ局で、それがわかった途端に、なるほどなという思いがした。

・電話での対応は、「お宅の地域はケーブルでの視聴ということで処理させてもらってます」という、きわめて素っ気ないものだった。ケーブルに契約する気はないとこたえると、感度のいいアンテナを高くたてれば、電波をキャッチできないこともないが、多少のゴーストが出て見えにくいかもとかえってきた。難視聴地域ならBSをつかった地デジ放送が見られるはずだと言うと、これはケーブルも使えない地域に限って提供するためのものだから、お宅の地区では認められていませんときた。電話をしながら、アドレナリンが湧きだしてきた。

・で、「実は僕はメディア論を研究していて、地デジ化については、ずっと批判的なことを言ったり書いたりしてきている。新しい技術の導入だと言っても、結局は、あなたの放送局や地元のケーブルテレビの既得権を守ることが最優先で、金ばかりかけて、新しい技術が持っている可能性はもとより、視聴者の都合なども平気で軽視する、とんでもない政策なのだ。」と言って、電話を切った。無性に腹が立ったが、しばらくすると同じ人からまた電話がかかってきた。

・「総務省と連絡を取りまして、特別に、BSでの視聴をお認めするということにしました。」という返事だった。言われるままに電話をすると、一から説明をさせられて、それでは次の電話番号におかけ直してくださいときたから、またカッとして、「ちょっと、役所仕事もいい加減にしてほしいな!ここまでたどり着くのにどれだけの労力を使ってると思ってるの!!」と言ってしまった。BSでの視聴は、我が家のチューナーに付属していた Bcasカードの番号を聞いて、スクランブルをはずしてくれればいいだけのことなのだが、結局、我が家に書類が送られてきて、所定の書式に従って必要事項を記入して返送という手続きを取らされた。

・BSでの地デジ放送は東京からのもので、NHK2局と民放5局が用意されているのだが、僕が住んでいる山梨県では民放は2局だけだから、スクランブルが外れて見られるようになったのは、NHK2局のほかには日本テレビとTBSだけである。なぜそうなるのかは、県域放送局の既得権を侵害しないという理由以外には思い当たらない。我が家では、映りが悪いとは言え、これまで、東京のアナログ放送が全部映っていたのにである。しかも、ケーブルテレビと契約すれば、民放5局の他に、テレビ神奈川やTOKYOMXまで見られるという。こんな露骨なやり方が、なぜ問題にならないのか。お役所仕事のやりたい放題と、人々の従順さに、今さらながらにあきれる気がした。ついでに言うと、Bcasカードを管理しているのは、総務省の天下り機関で、こんな組織は本当はまったく必要ないのである。

・というわけで、我が家では地デジは4局だけ見ることができるようになった。ただし、今のところほとんど見ていない。つまらないから見る気がしないのだが、その原因は既得権にあぐらをかいて競争意識をなくした姿勢にこそある。地デジは原発。だから脱原発と同時に脱地デジ。そんなことを再認識した経験だった。

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2011年08月01日 05:09に投稿されたエントリーのページです。

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