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メディアの自由度

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・国境なき記者団が毎年発表している「世界報道ランキング」では、日本は61位となっている。最近のメディアの状況を見れば、さもありなんという印象だが、2011年は11位だったし、09年は29位、10年は17位、12年は22位だった。つまりランキングが高かったのは、失われた3年などと言われている民主党政権の時期で、自民党が政権を奪回した時からランキングが急降下していることがわかる。ちなみに14年は59位、13年は53位で、民主党政権前の08年は37位、09年は51位である。

・理由ははっきりしている。安倍政権がやってきたことは「特定秘密保護法」の成立であり、戦争をするための「集団的自衛権」、原発の再稼働とそれを批判する声の封殺など枚挙にいとまがないからだ。このコラムでも書いたが、NHKは安倍専用の広報機関(AHK)に成り下がったし、ほかのテレビはもちろん、新聞も自粛や萎縮でびくびくしている。

・僕は山梨県に住んでいてテレビ朝日は受信できないから、「報道ステーション」での古賀茂明の発言はYoutubeで聞いた。官邸からの圧力を明言したもので、これに対して菅官房長官は事実無根としながら「放送法に抵触」と放送免許の更新に影響するかのような発言をした。しかし、民間放送が政府の認可によること自体がメディアや報道の自由度にとって大問題で、それを前提にした報道の中立公正などありえないのである。彼や安倍にとって中立とは、自分の気に入らない放送をしないことなのだろう。

・こんなメディアの状況についてほとんど無自覚なのは、鳩山元首相がロシアとクリミア半島に出かけたことに対する強烈なバッシングだった。「宇宙人」「馬鹿」「国益を損ねる行為」とネットをふくめてメディアの大合唱だったが、今ロシアやクリミアに出かけることが無謀だというのは現政権にとってであり、それを支え先導する外務省の意向であり、ひいてはアメリカの思惑を前提にしたものにすぎないなのである。

・そもそも鳩山元首相は沖縄の普天間基地をできれば国外、最低でも県外へ移設と主張して、沖縄の人たちの目を開かせるきっかけを作った人である。外務省や防衛省の役人にハシゴを外されて、恥をかかされるような結果に終わって、その時にも「宇宙人」とか「馬鹿」と罵倒されたが、今度のロシア訪問は、そんな役人に対するしっぺ返しといった思いがあったのかもしれない。

・思い返せば鳩山だけでなく、菅元首相に対するバッシングもひどかった。扇動したのは読売や産経だったが、安倍と比べたときに、ひどいどころか、ずいぶんまともな政治をやろうとしたことがよくわかる。そして、そんなことを指摘して政権批判をするメディアはほとんどない。もっとも民主党自体が、政権を取った時期をふり返って、良かったこと悪かったことを洗い出す作業をしないから、ダメな政党だというレッテルは当分は剥がせそうもない。

・報道の自由度が国外から見てこれほど落ちているという指摘についても、ほとんど無視されている。一方で日本人ほどメディアを信用する人が多いのは先進国の中では特殊だから、自粛と萎縮が蔓延するメディアの状況などには無自覚で無関心なのかもしれない。

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2015年04月06日 06:01に投稿されたエントリーのページです。

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