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自転車と「こころ旅」

kokorotabi.jpg・火野正平の「にっぽん縦断こころ旅」が1000回を超えた。震災直後の2011年4月からスタートして、今年で10年目になった。62歳から初めて今は72歳で、ここ数年は体力的にきつそうだと感じられる場面が目立ってきた。だからだろうか、最近のスタート場所は高台であることが多い。そこから下り坂を漕がずに進み、ほどなく昼食をとる。そして目的地までの距離が10km以下だったりする。「もう少しまじめに走りなよ!」と言いたくもなるが、同い歳の僕には、そのしんどさもよくわかる。

・この番組は視聴者の手紙を読んで、心に残る場所に出かけることを目的にしている。しかし面白いのは何といっても、その途中で出会う人とのやりとりや、山や川や海で生き物と戯れる火野正平自身の挙動にある。とりわけ、若い女の子や別嬪さんには、まるで磁石で吸い寄せられるように近づいて、触れんばかりの距離で楽しそうにおしゃべりをするのである。「このスケベエジジイ!」などとつぶやいたりするが、嫌みがないのが彼の持ち味なのである。反対に積極的なおばさんには腰が引けたり、無視したりといった光景もまた、何とも面白い。

・ところがコロナ禍で、握手することはもちろん、近づくことも避けるようになった。町中を走ることも少なくなって、食事もレストランや食堂ではなく、弁当が多くなった。もうぼちぼちやめ時だろうな、と思うが、訪ねるところで出会う中高年のほとんどが番組を見ているから、NHKとしてはまだまだ続けたいのだろう。今は長崎からスタートして北海道に向かっていて、秋には長野から沖縄をめざすようだ。僕にとっても数少ない見たい番組の一つで、朝と夜の二回放送を楽しみにしている。

・別に意識してそうしたわけではないが、僕が自転車に乗リ始めたのも同じ頃だった。60歳を過ぎて、運動不足や肥満を気にしてのことだったと思う。20kmほどの距離を週に2~3回走るのが習慣になって、今でも続けている。「こころ旅」とは違って、途中で食事などはしないし、誰ともおしゃべりもしたこともない。と言うより、信号以外は止まらずに、駆け抜けている。毎回タイムを計り、心拍数や呼吸数をチェックしているが、この10年間で特に衰えたということはない。ただ、バランス感覚に対する不安は増した気がする。

・さて、あとどのくらい自転車に乗ることができるだろうか。そんなことを考える歳になってきた。少なくとも、「こころ旅」が続く限りは、僕も走り続けようと思っている。走り終わった後に感じる爽快感や身体の軽さは、他では味わえないことなのだから。

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2021年06月14日 05:00に投稿されたエントリーのページです。

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