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Alanis Morissete (大阪城ホール、99/4/19)

・大阪城ホールはスティング以来だから5年ぶりぐらいだろうか。一部の超大物(?)を別にすれば、行ってみたいコンサートはほとんど2000人以下の場所でしかやらなくなった。
・たとえばこの欄でも取り上げているルー・リード、パティ・スミス、Yes、そしてボブ・ディラン。その誰もが、会場を一杯にすることができなかった。他方で大阪ドームといったばかでかいイレモノができて、そのチケットがすぐに売り切れたりする。フェスティバルや厚生年金でやるのは舞台との距離が短くて音もいいから、ぼくには好ましい。そして大阪城ホールまでなら許されると思っているが、ドームが音楽を聴く場であるとは全然思えない。話題性や有名性の一点で二極分化してきた傾向とコマーシャリズムの行き過ぎは、ぼくにとっては気分がいいものではない。

・ というわけで、ひさびさの大阪城ホールだが、コンサートは15分ほど遅れてはじまった。待ちくたびれたわけでもないのだろうが、途端にアリーナはもちろん、ぼくのいたスタンド席まで立ち上がった。「うわー、やばい」と思ったが、座ったままで聞き続けた。2時間もたちっぱなしで聴いたのではぎっくり腰が再発してしまう。人の谷間からのぞき込むのは面倒だが、どうせ舞台のアラニスは豆粒ぐらいにしか見えないから、ぼくは会場全体をきょろきょろ見回して客の生態を観察することにした。

・立つのは踊りたいからなのだろう、と思ったのだが、大半はただ突っ立っている。理由のわからない行動だと気になった。そんな人たちがスタンド席でも半数以上。体を揺らして踊っているのが2割、ぼくのように座っているのが3割ほど。アラニスの歌は何より歌詞の良さにある。だからじっくり聴きたい人が多いだろうと思っていた。しかし、舞台のアラニスは飛び跳ねたり、くるくる回ったりと忙しい。その元気に応えるように踊っている人が2割で、それはそれで自然な感じがした。ぼくの前の席の女の子二人はアラニスに負けないほど元気だった。で、ぼくの目は思わずその娘たちのお尻の動きを追いかけてしまった。

・けれども、やっぱり立ちんぼうの5割も気にかかった。踊るわけでもなく、座るわけでもない。その中途半端さは、時折座りかけてはまた立ち上がるといった行動で、さらにいっそう顕著になる。もっと体を動かしたいのにできないのか、それともまわりが立ったから何となく立って、まわりが座らないからそのままでいるほかなかったのか。あるいはアラニスに対する儀礼なのか。理由がわからなければ、何とも言えないが、ご苦労さんだなと思った。そんな観察にも飽きて、ぼくは後半を最後列の空き席に移動して聴いた。アラニスの姿はもっと小さくなったが、歌に集中することはできた。

・話は横道にそれてしまったが、最後に肝心のコンサートの話。彼女のパフォーマンスは1時間ちょっとでサヨナラになったが、その後3回もアンコールに応えて5-6曲を歌い、客の反応の良さに満足しているようだった。よく動き回って、ギターやハーモニカまでやって見せた。2枚のアルバムにおさめられた曲のほとんどが歌われた。イントロにインド風のサウンドを使って、CDとは異なる雰囲気を作りだそうともしていた。精一杯の演出とパフォーマンスだったと思った。が、それだけに、物足りなさも感じた。たぶん彼女はあと10年ぐらいたったら、もっともっと味のあるライブをやるだろう。しかしこれは、誰より同世代のミュージシャンに関心をもつぼくだけの印象なのかもしれない。

・6月にNHKのBSで東京でのライブが放映されるようだ。それが早くからわかっていたら、聴きに行かなかったのにと思った。コンサートはミュージシャンと聴衆の相互作用だから、そこに違和感を感じてしまっては、やっぱり、楽しい時間を共有することはできない。1枚のCDで気に入ったからといって、うかつにその気になってはいけない。これからは、気をつけてチケットを買おう。そんな教訓を持ったコンサートだった。 (1999.04.28)

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1999年04月28日 13:15に投稿されたエントリーのページです。

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