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郭英男(Difang)Cicle of Life

difang1.jpeg・何年か前にテレビで聴いて気になった歌があった。米が不作で外米を強制的に食べさせられた年があって、その翌年に「ニュースステーション」が米作の特集をした。その時のテーマ曲。誰の歌かわからず探しようもなかったのだが、同じテレビ朝日の「車窓」という番組が台湾の鉄道をやったときに偶然聴くことができた。
・その歌を歌うのは郭英男、台湾先住民の一部族「アミス」に属し、そこに伝わる伝承歌を歌い継ぐ人である。手に入れたCDには確かに聞き覚えのある曲が入っていた。「老人飲酒歌」という題名で、長老が集まって豊年祭の儀式をはじめる前に歌う歌と説明されている。郭英男は1921年生まれというから現在78歳、まさに「アミス」の長老である。
・僕はテレビではじめて聴いたときに、歌っているのは沖縄の喜納昌吉ではないかと思った。もちろん彼が出したアルバムには見つからなかったが、あらためて郭英男のCDを聴いて沖縄の音楽との共通性を感じた。声の肌理(きめ)、節回し、残念ながらアレンジは妙にイージー・リスニング風だが、それでも、あらためて、その地理的な近さを確認した。


difang2.jpeg 彼らが台湾に上陸したのは既に1万年以上も前のことである。南方より彼らを運んだはずの黒潮はフィリピン東方に発しほぼ5ノットの速さで台湾、そして日本列島にそって北上する。………このような先住民のなかで、もっとも歌と踊りに秀でた部族がDifangたちアミスである。

・文字を持たないアミスにとって、部族の歴史や知恵、生きる世界を物語り、伝承するのは歌である。収録されている歌にはそれぞれ「訪問歌」「階層歌」「恋愛歌」「労働歌」「悲しみの歌」「タニシ拾いの歌」「契りの歌」「友人歌」「収穫の歌」「老人飲酒歌」といった名前がついていて、部族の人びとにとっては単なる歌以上の意味をもっているものである。言葉のわからない僕には理解しようがないが、サウンドとして聞こえてくるものには、なじみ深さと新鮮さが混在した印象をもった。
・沖縄、アイヌ、ハワイ、あるいはポリネシア、そしてもちろんフィリピンやマレーシアやインドネシア。そんな太平洋の島々を黒潮に乗って移動した人びとの歌。それはたぶん僕の血のなかにも流れているはずのもの。テレビではじめて聴いたときにもった関心はたぶん、そこから来たものなのだろう。
・なお、郭英男のホームページもあるので、関心のある人は彼の写真をクリックして訪れてほしいと思う。

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1999年08月25日 23:24に投稿されたエントリーのページです。

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