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M.Knopfler, The Wall Flowers

・マーク・ノップラーの新しいアルバムがでた。ぼくは最近、彼の前作やそれ以前の映画のサウンドトラックをしょっちゅう聴いているから、 amazon.comで見つけてすぐに注文した。一緒に購入したのはウォールフラワーズ、ラジオヘッド、トレーシー・チャップマン、それにU2のニュー・アルバム。U2はまだ届いていないが、聴いた中ではノップラーが断然いい。中でもジェームズ・テーラーと一緒に歌っていて、アルバム・タイトルになっている"sailing to philadelphia"、それにヴァン・モリソンとのデュエット"the last laugh"。写真で見るノップラーは太って、しっかり、おじさんしているが、歌やギターは相変わらずのノップラー節だ。ヴァン・モリソンとのデュエットは本当に渋くて、聴くたびにしんみりしてしまう。

最後の笑い声の音は好きじゃないのか、友人
泥だらけの老兵と溝に倒れ
酔っぱらった船乗りとは甲板の排水溝にはまった
だが、最後の笑いは君のだ。その音が好きじゃないのか?

奴らが泣かそうとしても、君は笑っていたし、
這いつくばらせようとしても、飛ぼうとしていた
だから、最後の笑いは君のなのに、その音が好きじゃないのか?
"the last laugh" with Van Morrison

・ノップラーはダイアーストレイツのリーダーだ。ぼくは彼らのデビュー以来のファンだが、最初に惹きつけられたのは、ノップラーの声がボブ・ディランにそっくりということだった。歌い方も明らかに意識していたから、一歩間違えば、そっくりさんで終わっていたところかもしれないが、ノップラーにはもう一つ、独特の音色のギターがあった。その透明で糸を引くようなサウンドはアイルランドを連想させたが、彼の作るサウンドには、次第にアイリッシュが色濃くでるようになった。聴き始めるとアルバムを次々かけたくなる。で、一日中ノップラー、なんてことが良くある。乾いたしっとり感、あるいは冷たい優しさ。彼のつくる歌にはルー・リードのような都市の風景ではなく、田舎の情景を感じる。
・ディランにそっくりといえばもう一つ。ザ・ウォールフラワーズのボーカルはジェイコブ・ディラン。3枚目のアルバムだが、こちらもなかなかいい。もう親の七光りなどと陰口をいわれないだけの力をつけたと思う。ぼくは聴きながら、どうしても若い頃の父親を連想してしまうが、ジェイコブのほうが良くも悪くも屈託がない。

ママ、今月は愛を送ってこないで、心が疲れ果ててるから
ママ、家に帰りたい、戻りたい
だから朝の雨に飛び出した、で、悲しみの列車に乗っている
スーツケースをおろして、靴を茶色に磨いている
誰もぼくの名前を知らない、今はもう、誰もぼくの名前を知らない
"Mourning Train"


・ママなどということばを聞くと、今度はサラを思い浮かべてしまう。サラは離婚した後ジェイコブと暮らしていたんだ、などと想像力は勝手に歩き始める。そういえば、ぼくの息子は「米、送ってくれ」なんていうメールをよこしていた。「中古の250ccのバイクを20万円で買うからよろしくだって」。それがどうした。そうそう甘い顔ができるものか。などと、連想ゲームは公私混同もはなはだしくなってくる。ジェイコブの詩は"morning rain"と"mourning train"で韻を踏んでいたりして親父の影響が感じられるが、内容はまだまだだ。とは言えぼくの息子よりはずっとましかな………。
・ウォールフラワーズを聴いていると、どうしても自分のことに気持ちが移ってしまう。 (2000.11.06)

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2000年11月06日 23:40に投稿されたエントリーのページです。

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