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古い人たちの声も聴いた

Carole King "The Living Room Tour",Jackson Browne "Solo Acoustic Vol.1"

caroleking1.jpg・ジャクソン・ブラウンとキャロル・キングのライブ盤を買った。もちろん、名前はよく知っていてレコードは何枚か持っているのだが、CDはそれぞれ一枚しかない。嫌いではないが、どうしてもほしいというわけでもない。ふたりは僕にとってそんな存在のミュージシャンだった。とはいえ、ふたりともキャリアの長い大物であることに違いはない。
・たとえばキャロル・キングは僕が小学生の頃からのヒット・ソング・ライターで「ロコモーション」をつくっている。僕はよく聴いた覚えがあるが、そのときにはだれが作ったかなんて知らなかったし、どうでもよかった。歌っているのはリトル・エヴァだったか。しかし、今では顔も覚えていない。同じ頃にヒットしたニール・セダカの「オー・キャロル」は彼女のことを歌っているのだという。この曲もよく聴いたが、そんなことは知りもしなかった。
・キャロル・キングは1942年生まれだから、もう60代の半ばになる。ライブの「The Living Room Tour」は去年の発売だが、ジャケットの写真も若いし、声もほとんど変わっていない。会場に集まったのはおそらく長年のファンが大部分なのだろう。曲の合間のおしゃべりも気さくだし、歌の際にも会場からの歌声がよく聞こえる。ヒットした歌が中心で、アルバムタイトルのように、彼女の居間に友達を招いて歌っているという雰囲気である。アンコールはその「ロコモーション」。
・キャロル・キングというと「タペストリー」が有名だが、僕は1970年に出た「ライター」が好きだ。ソロ・デビューのアルバムなのに、若いジェームズ・テイラーを従えていて、僕はそれで初めて彼を知った。イケメンのかっこいいシンガーで声も優しかったが、その時代にしっくりくる内省的な歌だったから、僕はよく聴いた。それが「アイム・ノー・ヴァージン」なんていう当時では過激な歌をさわやかに歌ったカーリー・サイモンと結婚したから、意外な感じがして驚いてしまった。ちなみに15年ほど前に大阪で彼のライブを聴いたが、もうすっかり頭が後退していて、ステージに登場するとすぐに客席から「ハゲー」と声がかかって大爆笑。しかし彼はいつもどおりに「ハーイ」とやったから、また大爆笑。息子まで出ていて「The Living Room Tour」同様、楽しいコンサートだった。

JB1.jpg ・ジャクソン・ブラウンの「ソロ・アコースティックvol.1」もライブで2005年に出されている。キャロルのとおなじで、アットホームな感じで客とのやり取りが楽しそうだ。アンコールはやはり客席からのリクエストでイーグルスがヒットさせた「テイク・イット・イージー」で、笑いながら「ok」といって応えている。
・彼は僕よりも3ヶ月早く産まれている。だからほとんど同世代だといっていい。ジェームズ・テイラーと同様、静かで内省的な歌が多いが、政治的なメッセージのある歌もかなりある。1979年に起きたスリーマイル島の原子力発電所での放射能漏れ事故に抗議して「ノー・ニュークス」コンサートを企画したり、レーガン政権を支持するアメリカの右傾化を皮肉ったアルバムを出したり、南アフリカのアパルトヘイト(人種隔離政策)を批判したアルバム「サン・シティ」にも参加している。
・「ソロ・アコースティックvol.1」では、そんな初期の頃から最近のものまで幅広く歌っている。ただし、僕が知っているのは半分ほどで、80年代後半からのものははじめて聴いたものばかりだ。

僕は家を借りる 高速道路の陰だ
朝、昼飯を持って出かける 毎日仕事だ
で、夜になる頃 家に帰って横になる
でまた、朝日が照らす頃に起きて 繰り返し
アーメン で、もう一回 アーメン
"The Pretender"1976


真理の探究がウィンクとうなずきで振る舞われるところ
権力と地位が神の慈悲に等しいとされるところ
こんな時代は、感覚的には祝祭であっても 魂は大飢饉だ
この国の淵に立って 海を背にしながら 東を眺める
"Looking East"1996

・あらためて、探すとふたりともアルバムを出し続けている。それほど話題にはならないが、いいなと思う歌が少なくない。アルバムも買ってみたいし、こんなコンサートならぜひ行ってみたい。そう思うと、またあらためて、日本人にはそんな気持ちにさせるミュージシャンがいないなとつくづく感じてしまう。

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2006年06月12日 20:44に投稿されたエントリーのページです。

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