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ブラウン、U2、そしてディラン

Jackson Browne "Standing in the Breach"
U2 "Songs of Innocence"
Bob Dylan "The Basement Tapes"

standinginthebreach.jpg・ジャクソン・ブラウンが6年ぶりにアルバムを出した。タイトルは"Standing in the Breach"(難局にあたる)でジャケットの写真はハイチ地震の際に撮られたもののようだ。そのアルバムタイトルになった「難局にあたる」は次のような歌詞で始まっている。

この地球が揺れて、土台が崩れたとしても
私たちは集まって、もとに戻すだろう
生きている人たちを助けようと駆けつけるし
難局にあたって一緒になって世界を作り直すだろう

・社会に目を向けて、メッセージとして歌を作る姿勢は相変わらず健在だ。”If I Could Be Anywhere"(どこにでもいることができるとしても)は、永遠に続くものはないと言っても、プラスティックはずっとあって、目をつぶったって消えはしない、と歌って環境汚染を訴えているし、"Which Side?(どっちの側か)は「ウォール街を占拠せよ」の抗議運動を支援するために作られた歌である。

・ジャクソン・ブラウンはいつでも、悲惨なことや不当なことから目を逸らさないが、彼の歌には必ず光がさしている。「厳冬に生きる人がいれば、常夏に生きる人もいる。幸運に恵まれた人と、それとは無縁な人。しかし、壁を作る人がいても、ドアを開ける人もいる」("Walls And Door")というように。そんな姿勢は彼の歌い方にも現れている。「壁と扉」はジョン・レノンの「壁と橋」を思い出させる題名だが、社会学の巨人であるジンメルにも「橋と扉」というエッセイがあって、言わんとするところはよく似ている。人はもともと結合しているものを分離したがるくせに、分離しているものは結合したがる奇妙な生きものだ、という点である。

songsofinnocence.jpg ・U2の"Songs of Innocence"(無垢の歌)はiTunesに公開されてAppleのデバイスに自動的にダウロードされて問題になったアルバムだ。ぼくのiPadには残念ながら入らなかったからAmazonで買うことにした。やはりこれも6年ぶりの新作で、U2にとっては満を持しての発表だったのだと思う。だからこそ、iTunesで多くの人に聴いて欲しいと考えたのかもしれない。けれども、これまで彼等のアルバムのすべてを聴いてきた者としては、一番印象が薄いと言わざるを得ない。確かにU2らしいサウンドにはなっているが、それだけに昔の焼き直しといったふうにしか聴けなかった。
・実際、彼等はどうだったのだろうか。自信があったからiTunesで無料で聴けるようにしたのか、あるいは自信がなかったからなのか。僕は後者だったのではないかと思う。ボノには音楽以外のことでエネルギーや時間を費やさなければならないことが多すぎるのかもしれない。

thebasementtapes.jpg ・最後はディランの"The Basement Tapes"で、ブートレグ・シリーズの11作目になるものだ。バイクの事故で休養していた1967年に、ザ・バンドのメンバーとウッドストックの別荘の地下室で録音をしたデモテープで、1975年に同名のタイトルで公式に発売されてもいる。僕が買ったのは6枚組のコンプリート版で、すべてを聴くと6時間半にもなるものだ。しかも同じ曲がいくつも入っていて、熱心なファンでもなければ聴き続けられない内容になっている。とは言え、僕はやっぱり何度も聴きたくなった。

・ロックフェスの原点として伝説化している「ウッドストック」は隠遁しているディランを引っ張り出すためにウッドストックでやったと言われている。ディランは出なくて多くの人をがっかりさせたが、その間に、実験的な新しい試みをして、なおかつしばらくの間、公にされなかった曲が並んでいる。僕はもちろん、資料のつもりでこの高額なアルバムを買ったが、それ以上の価値があるとも思った。

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2014年11月17日 08:19に投稿されたエントリーのページです。

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