« Bruce Springsteen, "Letter to You" | メイン | 新譜がないのはコロナのせい? »

Jackson Browne, "Downhill from Everywhere"

・それにしても、興味のある新しいCDが見つからない。何度も書いているが、新しいミュージシャンを見つけるアンテナがないせいである。だからどうしても、おなじみの人たちのニュー・アルバムを探すことになるが、それも極めて少ないのだ。当然、このコラムを書く材料探しに苦労している。もちろん、コロナ禍のせいでもあるだろう。実際にジョン・プラインが亡くなっているし、感染したミュージシャンもいる。僕と同世代以上の人たちは高齢者だから、今は家に閉じこもって密かにしているのだろうか。だとすると、コロナ禍がおさまったら、ニュー・アルバムの続出が期待できるのかもしれない。いずれにしても、亡くなったりしないようにと願うばかりである。

jacksonbrowne2.jpg・で、探していたらジャクソン・ブラウンの新しいCDを見つけた。しかし、アルバムだと勝手に思い込んで注文したら、たった2曲のシングル盤だった。それにしては高いな、と思ったが、これしかないから紹介することにした。リリースされたのは4月で、その時に彼自身がコロナに感染したことも明らかにした。予定では10月に出すアルバムの先行トラックだったようだが、新しいアルバムはまだ出ていない。なぜ2曲だけ先行したかについて、「ローリングストーン誌」で、「コロナ禍で先行きが不透明で見通しが立たない今だからこそ、公開したのだ」と言っている。

・"Downhill from Everywhere"は海に流れ込む、プラスチックその他の人間が捨てたゴミを歌ったものである。ゴミは学校から、病院から、ショッピングモールから等々、あらゆるところから流れ下る。歌詞の大半はその「~から」を列挙したものになっている。引力に従って行き着く先である海を、私たちはどこまで自分のこととして考えているのだろうか。私たちが生きていくのに、海がいかに大切かということを。プラスチックは海に流れ下ることで細かく粉砕される。それを魚が食べて、また人間に返ってくる。この歌はドキュメンタリーの"The Story of Plastic"でも使われている。

・もう一曲の"A Little Soon To Say"は、今の状況に対する自分の戸惑いを歌っている。地平線の向こうが見えない、明かりに照らされた道の向こうが見たいんだけど、とつぶやき、すぐに決断しなければならないのに、情報があまりに少なすぎる、とつづく。今の病を乗り越える道を照らしたいし、できると思いたいが、そう言うにはまだ早すぎる。

・ジャクソン・ブラウン自身が感染したコロナ禍は、この曲が発表された後も猛威を振るっていて、なおこれからも拡大し続けるだろう。アメリカではトランプ大統領が敗北したが、分断の大きさはますます深刻なものになっている。そのことを憂い、悩み、希望を見つけ出したいと考える。そんな彼の姿勢は極めて明快だ。新しいアルバムが楽しみだが、リリースはいつになるのだろうか。

・このコラムではボブ・ディラン、ブルース・スプリング・スティーンと続けて取り上げてきた。ジャケットの顔写真を見る限り、もうすっかり老け込んで、じいさんになったなと思う。けれども、歌っている姿勢や、そこに込められたメッセージには、若い頃から一貫した態度と、確かな視線がある。僕ももちろん、彼ら同様に老け込んで、ジジイになっているが、心の老け込みはしないよう、心がけたいと思っている。

About

2021年01月11日 07:01に投稿されたエントリーのページです。

ひとつ前の投稿は「Bruce Springsteen, "Letter to You" 」です。

次の投稿は「新譜がないのはコロナのせい? 」です。

他にも多くのエントリーがあります。メインページアーカイブページも見てください。

Creative Commons License
このブログは、次のライセンスで保護されています。 クリエイティブ・コモンズ・ライセンス.
Powered by
Movable Type