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やれやれ、今度は松井か………

・野球のシーズン到来。今年も野茂でMLB。と楽しみにしているところだが、テレビも新聞も、連日「松井、マツイ、Matsui!?」である。さすがのイチローも今年は影が薄い。メディアの新しもん好きや現金さに今さらあきれるわけでもないが、やっぱり文句はつけて記録にとどめておきたい。何しろ日々の記録係を自負するマスコミは、また、恐ろしいほどの健忘症で、自分のしたこと、話したこと、書いたこと、映したことに知らん顔して、すぐに違うことを主張しかねないからだ。

・NHKは今年MLBの試合を300以上中継する。もちろん松井中心で、残りの大半はイチロー、あとは選手の成績次第のようだ。その中継試合の増加をPRするために、一日に何度も「今日の松井は〜」とニュースで伝えている。試合に出ない日は練習風景とインタビュー。ほかの選手が活躍してもちょっと触れるか、まったく無視という状態が続いている。イラク情勢や株価の動向、それに大きな事故や事件といった緊迫した話のあとに、「松井が寝違えた」などと聞かされると、ずっこけて、ちょっといい加減にしろよと言いたくなってしまう。

・NHKにとって幸いなことに、松井の調子はいい。このままでいけばレギュラーはもちろん、打順もクリーン・アップになりそうだ。しかし、松井以上にイチローの調子もいい。野茂も開幕投手になりそうだし、同僚の石井もローテーションは確実だ。新庄もがんばっているし、去年マイナーで苦労した田口もメジャーに残れそうだ。大家は今やモントリオールのエースである。そんな選手達の活躍は、今年もテレビでは軽視されてしまうのだろうか。
・野茂はあと2勝でメジャー100勝になる。これがどれほどすごい記録であるか、それを話題にするテレビや新聞はほとんどない。彼は徹底していて、シーズンオフになって帰ってきたときも、キャンプインで出かけるときも、全然報道されなかった。マスコミに連絡しなかったせいだと思うが、たまに出るインタビューも相変わらず、というより意識してさらにぶっきらぼーになっている。「マスコミなんか関係ない。ただ自分は野球をやるだけ。」という姿勢がいっそう強くなっている気がする。

・その数少ない野茂のニュースの中で驚き、また感心したのは、彼が私費を投じてアマチュアのチームをつくったことだ。企業がリストラ対策でノンプロのチームを手放している。野球をやりたい人たちはプロ野球に行けなければ、高校や大学を卒業した時点でプレイヤーをあきらめなければならない。そんな状況の厳しさが、野球を先細りにしてしまう。野茂はそんな危惧を前から強く感じていて、アメリカの独立リーグのチーム・オーナーにもなっている。

・こんなニュースと「松井、マツイ、Matsui!?」を比較すると、野球の将来を真剣に考えているかいないかがいっそうはっきりする。マスコミには将来も過去も関係なく今、おいしいところをつまみ食い。そんな無責任な姿勢があまりに露骨だし、そいうことに対する反省がみじんもない。NHKはたしか、野茂が作るノンプロ・チームのニュースを報道しなかった。これは公共放送の姿勢としてはいかがなものだろうか。

・日本人がMLBにこんなに関心をもつようになり、多くの選手が高い契約金や年俸でプレイできるようになったのは誰のおかげなのか。難しい状況や厳しい批判をこえて道を切りひらいた野茂が今年も健在で、ドジャースのエースとして100勝を数えようとしている。そのことに対して僕は興味津々だが、それ以上に彼の人間性に崇高さを感じて尊敬してしまう。だからなおさらだが、そのことに関心をむけないメディアやスポーツ・ジャーナリストをぼくはますます軽蔑するばかりだ。NHKは野茂が投げつづけるかぎりは、彼の試合は全て中継すると宣言して当然の恩義や義務があるだろう。

・日経新聞のHPが今年海外でもっとも活躍する選手の投票をやっている。1位はもちろんダントツで野茂だ。これはネットを使うMLBファンが圧倒的に野茂好きであることを示しているが、それは何より、インターネットの普及と野茂の活躍が時期を同じくしたためだと思う。ちなみにYahooがやった松井の成績を予測する投票では「新庄並み」が一番多かった。ネット・ユーザーはマスコミとは違ってクールで辛辣だ。

・シーズンが始まって野茂の投げる試合をライブで中継しなければ、NHKにはまちがいなく、そんなファンから抗議のメールが殺到するだろう。NHKにとってはやっかいなことだが、インターネットにはもっと怖い敵が現れはじめている。今年から年間の契約をして好きなチームの試合をネット観戦できるようになったことだ。画像がテレビ並みというわけにはいかないし日本語でもないから、一気に契約者が増えるということはないかもしれない。けれども、数年後にはテレビなどあてにしなくてすむ状況がきっと実現する。

・目先のことばかりにとらわれていると自分の足場が崩れはじめていることにも気づかない。土台をしっかり見つめなければ、一見にぎやかに見えてもしょせんは砂上の楼閣。それは日本のプロ野球でもノンプロでも同じ構造だし、テレビだって新聞だって例外ではないように思う。

・P.S.
・開幕近くなったら、野茂に注目する記事や番組が出始めてきた。NHKも開幕特集の2時間番組で最後に野茂のインタビューを持ってきた。あとにつづいたプレイヤーのことをパイオニアの野茂が語る。そういう狙いだったようだが、やっぱり「松井」で1時間以上。開幕投手に決まった4月1日朝のゲームは生中継してくれるのだろうか。投げ合うのは「ランディ・ジョンソン」。最初からこんな試合があるとは、今からドキドキだが、NHKには放送要求のメールを出さなければならないのかなー………。 (2003.03.04)

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2003年03月04日 23:15に投稿されたエントリーのページです。

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