« 再録「キャンパスブログ」(朝日新聞多摩版) | メイン | 20万キロ越えに感謝! »

再録「キャンパスブログ」(朝日新聞多摩版)

その5・対抗文化

・ ぼくの関心や発想の基本には60年代の対抗文化がある。そこで出会った音楽やアート、そしてライフスタイルにずっと愛着を持ちつづけてきた。その多くはもちろん、すでに対抗的なものではなく、社会に取りこまれ、消費文化として不可欠の存在になっているものが少なくない。たとえば、それはロックに代表されるポピュラー音楽であり、ポップアートであり、またジーンズやTシャツに代表されるファッションである。今では仕事や生活の必需品になっているパソコンやインターネットも、その発想の段階や開発当初には、社会に対して強い批判をもっている人たちが大勢集まって、あるべき世界を夢見るような時期があった。

・ 最近出版した『ライフスタイルとアイデンティティ』(世界思想社)は、そんな一つの文化の、誕生から現在の状況に至るまでのプロセスを、批判的にふりかえったものである。東経大に移る決心をした理由には、もちろん、コミュニケーションを主題にした学部に対する魅力があった。けれどもまた、個人的な問題として、都会生活から脱出して、長年憧(あこがれ)れてきた田舎生活をしてみたいという希望もあった。ちょうど子どもたちも大学生になって、一人暮らしができる年齢になってもいた。夫婦2人で、新しい生活をやり直す。『ライフスタイルとアイデンティティ』には、そんな生活ぶりを書いた章もある。

・ じぶんのこれまでのライフサイクルは、大きく三つに分けられる。親に扶養されていた時、仕事をして結婚し、子どもと暮らした時、それに現在である。この第3ステージをどう過ごすか。それはまさに、ライフスタイルとアイデンティティの問題である。パートナーは40歳を過ぎてから陶芸を始め、今では工房を持ってせっせと制作にいそしんでいる。土と戯れる楽しさは、端で見ていてもよく分かる。さて、ぼくは何をしようか。仕事はもう少し続けなければならないから、今は何でも、興味をもったらやってみることを心がけている。

・ 60年代に生まれたさまざまな文化は、どれも、既成の商品化したモノや暮らしや遊び方に飽き足らない気持ちから生みだされた。それが半世紀近く経(た)って、消費文化の主流になっているのは、何とも皮肉だが、それにまた退屈しているじぶんが確かにいる。大学で学生とつきあう限りは、うるさいと思われようと、そのつまらなさの理由を指摘して、もっとおもしろいことができるはず、という可能性を問いかけ続けようと考えている。


2008年04月21日掲載

About

2008年09月11日 07:36に投稿されたエントリーのページです。

ひとつ前の投稿は「再録「キャンパスブログ」(朝日新聞多摩版)」です。

次の投稿は「20万キロ越えに感謝!」です。

他にも多くのエントリーがあります。メインページアーカイブページも見てください。

Creative Commons License
このブログは、次のライセンスで保護されています。 クリエイティブ・コモンズ・ライセンス.
Powered by
Movable Type