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拝啓、オバマ大統領殿

オバマ大統領殿

 大統領再選、おめでとうございます。選挙前の予想では、ほぼ互角でどちらが勝つかわからないと言われていましたから、選挙の結果は気が気ではありませんでした。
 4年前にあなたが、「チェンジ」とか「イエス、ウイー、キャン」といったことばでアメリカの若者たちの心をつかみ、新しいヒーローとして彗星のごとく登場したときのことを、今でもよく覚えています。就任の祝典には数多くのミュージシャンが歌い、ハリウッド・スターがスピーチをして讃えました。90歳になるピート・シーガーが歌う"This Land is Your Land"は、ほほえましくまた感動的でもありました。

 あれから4年弱、あなたは核軍縮を唱えてノーベル平和賞を受けましたし、保険制度の新設にも尽力されましたが、他方で白人保守層が巻き返しを狙って起こした「ティ・パーティ」の運動や、経済状況の悪化と失業率の増加、あるいは中間選挙で共和党に下院の過半数を占められたことなどによって、就任前に掲げた政策の多くを実現することができませんでした。支持率が落ち、批判や非難をされたのは当然ですが、しかし、イラクからの撤退やアフガニスタン問題も、リーマンショック後の経済の落ち込みも、ほとんどはブッシュ政権の失政の後始末で、そのことを共和党や保守勢力から非難されるのはお門違いも甚だしいと思いました。

 実は日本でも、同じようなことが起こりました。長年続いた自民党政権に変わり、民主党が政権を獲得したのでした。鳩山首相は自民党とは違ういくつもの政策を掲げて大きな期待を抱かせましたが、沖縄の普天間基地問題でつまずき、わずか1年で退いてしまいました。多くの日本人は幻滅して彼をアホ呼ばわりしましたが、アメリカの力、というよりはアメリカの意向を気にした勢力によってつぶされたのだと言う人もいます。

 日本は未曾有の大地震と津波、そして福島原発の事故によって、大惨事を経験しました。この処理のまずさを強く批判されて、次の菅首相もやはり1年で失脚しましたが、普天間基地同様、原発を推進してきた張本人の自民党は、自分の責任を棚に上げて、民主党批判に終始してきています。国会はやはりねじれ状態で、民主党の掲げた政策のほとんどは実行できていません。

 民主党3人目の野田首相は自民党にすり寄って、政権の延命を図りましたが、そのためにすっかり国民の支持をなくし、自民党からは選挙をせよと脅されてばかりです。このままでは、あなたの国とは違って自民党が政権を奪い返すかもしれません。危険な原発を廃止すべきという声は、国民の大多数の意見です。その力に押されて野田首相は逃げ腰ながらも廃止を政策として掲げました。しかし、自民党政権になれば、そんな頼りない政策さえもつぶされて、日本中の原発が再稼働してしまうでしょう。

 そこであなたにお願いがあります。次の4年間の政策の中に、日本のアメリカ軍基地の縮小と、アメリカにおける原発の新設をやめ、既存のものも年限を決めて廃止することを掲げて欲しいのです。日本の戦後の政治はアメリカ追随を第一の政策として実行してきました。日本独自の政策を狙った政治家はことごとく、つぶされてきたと分析する人もいて、アメリカの力は国民の声以上に強いのだとつくづく感じています。

 もちろん、あなたはアメリカの大統領ですから、日本とは利害の異なる点について、たとえばTPPのように日本に強行に迫らねばと考えている政策もあろうかと思います。しかし、それについても、言いなりになる日本の政治家や官僚たちばかりでなく、反対し抵抗する人びとの声にも耳を傾けて欲しいと思います。何よりあなたはマジョリティではなくマイノリティを代表する初めてのアメリカ大統領なのですから。

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2012年11月12日 06:10に投稿されたエントリーのページです。

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