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オバマの不人気はなぜ?

・アメリカの中間選挙で民主党が負けて上下両院で共和党が多数を占めた。その理由はオバマ大統領の不人気にあったようだ。確かに最近の政策には失敗も多いし、首をかしげたくなるものもある。しかし、ブッシュの時代よりは良くなっている面も多いはずで、そこを評価しないのはなぜなのか、疑問を感じた。

・オバマ大統領は「イスラム国」なる勢力が強くなって、その対応に苦慮している。弱腰だという批判をかわすために、「プレデター」という名の無人攻撃機を使っているのだが、誤爆や民間人を巻きこむことが多いと非難されている。遠く離れたところから、まるでゲームをするかのようにミサイルを撃ち込む。しかも、標的にする根拠が、怪しい奴が集まっているとか、4駆に乗って銃を持っているとといった漠然とした場合もあるようだ。

・ずいぶんひどいことをしていると思う。しかし、それを使うのは、アメリカ兵をイラクから引き揚げるという方針を実行したからで、それを覆して再び派兵をおこなうことを避けるためである。つまり、オバマはブッシュ前大統領が9.11に対する報復としておこなった無謀なイラク戦争の後始末をさせられているわけで、現在のようなひどい状況になった責任はブッシュこそがとるべきもののはずなのである。

・今、アメリカ経済はけっして悪くない。これはブッシュの時代に起きた「リーマンショック」の後始末をおこなってきたオバマの成果だと評価されてもいいはずである。なのに評価されないのはなぜだろうか。もちろん、景気の回復の恩恵を受けているのがわずか1%の富裕層に限られるという現実があって、若い人たちの批判が強いのは事実だろう。しかし、これも、ブッシュ政権が残した制度のためだし、それを変えたくても共和党や経済界の抵抗が強いという側面もある。

・オバマ大統領が掲げた政策で実現したものに「医療保険制度改革」(オバマケア)がある。日本では当たり前の健康保険制度をアメリカに定めようとしたもので、貧しい人でも病院で治療を受けられることができるようにしたものだが、この制度についてもまた、共和党の猛烈な反対があった。民間の保険会社と契約している人にとって何のメリットもないし、保険に入れない人は自己責任だという考え方や、国の予算はできるだけ少なくする「小さな政府」が党のスローガンだという理由が挙げられている。

・オバマは大統領選挙の中途で彗星のように現れて、「チェンジ」というスローガンであっという間に民主党の大統領候補になって、選挙でも圧勝した。しかも直後には「核廃絶」を唱えたことを理由にノーベル平和賞も受けた。環境保全や自然エネルギーの開発を謳った「グリーン・ニューディール」も時流に乗って、好意的に受け取られた。だから、不人気の理由は、それだけ大きな期待を寄せられたのに、たいした成果が上がらなかったという失望感にあるのかもしれない。特に、オバマに期待をした若い人たちには、強いのだと思う。

・オバマ大統領の任期はまだ2年ある。しかしアメリカでは次の大統領についての話題がすでに熱く語られはじめている。今度は女性初の大統領の登場をクリントンに期待する声が大きいようだ。年齢的にちょっと心配だが、女性大統領の登場はいいことだと思う。と言うよりはオバマの前にやるべきだったと今さらながらに感じている。

・共和党支配の議会とのねじれによって、オバマ大統領はまだ2年も任期があるのに、レームダックになったと言われてしまっている。何をやろうにも議会の反対にあって何もできないことが予測できるからだ。しかし、だからこそ、今までやろうとしてできなかったことを次々政策に掲げて、議会と対決するという姿勢に転ずることもできるのではないかと思う。

・これから数十年たってオバマがアメリカの歴史の中でどのように評価されるか。僕はブッシュとは雲泥の差で「名大統領」として評価されのではないかと思っている。とは言え、大統領について選挙のたびに夢を作り出して熱狂しては、数年後に落胆するくり返しをまたやろうとしていることには、多少のうらやましさもあるが、半ば呆れている。

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2014年11月10日 10:00に投稿されたエントリーのページです。

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