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世界が壊れはじめている

・オバマ米大統領が広島を訪問したお返しなのか、安倍首相もハワイの真珠湾を訪問するという。日本軍が真珠湾を奇襲攻撃して太平洋戦争を始めたのは、75年前の12月8日だった。その戦争にいたる過程と現在の状況に、どこか似ているところがあるような、そんな恐ろしさを感じるようになった。

・アメリカはトランプが大統領になれば、「アメリカズ・ファースト」で対外的には政治的にも経済的にも強硬姿勢になると言われている。ヨーロッパでも極右政党が勢力を増して、政権を取る国が出るのではと不安視されている。オーストリアではきわどい形で緑の党が勝ったが、フランスやイタリアでは現実化するかもしれない。

・そんな傾向が強まってきた原因は、一つはシリアなどからの移民の流入に対する社会不安だし、もう一つはグローバル化による経済的な不安だろう。だから、どの国の人たちも外国人を排除し、国内の経済を活性化させ、自国の力を建て直すことに、ときに熱狂的なほどに賛同するようになってきた。協調や融和ではなく、対立と競争が前面に出れば、いつどこでどんな紛争や戦争が起きても不思議ではない状況になるかもしれない。

・そのシリアは政府軍が反政府軍が支配していたアレッポを制圧して、民間人を大量に虐殺しているといったニュースがあった。政府軍の後ろ盾はロシアで、空爆が激しく行われたようだ。現地はまるで地獄のようで、さらなる難民がトルコやギリシャに押し寄せるかもしれない。プーチンが来日した日ロ首脳会談では、その惨事は議題にならなかったようだ。もっとも4島どころか2島変換の話もなかったから、いったい何のための首脳会談だったのかと思う。

・第二次世界大戦の反省から生まれたEUが崩壊の危機に陥りはじめている。貧富の格差や人種や性、そして障害者に対する差別といった問題は、長い時間をかけて少しずつ改善されてきたものだが、これらに対する批判や逆行をあからさまに発言する声が強くなっている。ここにあるのは、何より理想の崩壊だし、建前が持つ節度の無意味化だろう。トランプの勝利はまさに、そんな立場の正当化にほかならない。

・その大統領選挙では票の集計に対する疑問や、民主党に対するロシアのサイバー攻撃が取りざたされている。Facebookを使った誹謗中傷や嘘の記事の拡散もあったと言われている。「正しさ」「真実」「事実」「正義」といったことばがほとんど無意味化し無力化しつつある。

・もちろん、理想を掲げ、その現実化に向かうためには、その正当さに異議を差し挟みにくい「余裕」の意識が必要だ。その「余裕」が大戦後に経済成長を遂げた先進国を先頭にして、さまざまな問題を是正しようとする動きを作り出してきた。そして今、その成果をことごとく否定する声や動きが強まりはじめている。「世界が壊れはじめている」と思うのは何より、そんな戦後の流れを否定して逆行させようとする動きが勢いを増していると感じるからだ。

・ところで日本はどうか。もう政治的にも経済的にも崩壊しかかっているのに、そんなことはないかのようにふるまっている。トランプ政権に反応してアメリカの株価が急騰している。日本の株価もそれに反応して去年の数字を回復した。「理想」ではなく「金」。そんな風潮が露骨に現れている。

・安倍首相は就任前のトランプに尻尾を振ったのに反故にされ、プーチンには馬鹿にされた。オバマは真珠湾でどんな態度を取るのだろうか。反対に天皇の要望には、手持ちの有識者を並べて冷たくあしらおうとしている。それこそ恥の上塗りだが、支持率は少しも下がらない。日本はとっくに壊れかけているのに、政治家もメディアも知らぬふりだ。

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2016年12月19日 06:42に投稿されたエントリーのページです。

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