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安全と安心

・コロナ禍が落ち着いて、終息宣言も出された。人びとの生活が少しずつ元に戻ってきているが、誰もがおっかなびっくりといった状態に変わりはないようだ。新しい生活様式が上から推奨されているが、それで果たして本当に安全なのか不確かだし、経済活動も社会活動も、結局のところどうしたらいいのか、本質的なところは何もわからないのが現状だろう。その根本的な原因は、「安全」と「安心」の曖昧な関係にあるように思う。

・「安全」とは危険でないことを意味する。それは客観的な事実やデータに基づくもので、コロナで言えば、感染の恐れがない状態になることである。もちろん、100%とはいかないから、どこかで線引きが必要になる。これまでの例で言えば、新型インフルエンザの感染者数と死者数程度ということになるかもしれない。日本では毎年1割が感染し、1000人程度の死者が出ていたのに、それで三密を避けろとか、営業を自粛せよとかは言われなかったからである。ここにはもちろん、ワクチンが開発されて、希望者には全員、それが投与されることが必要になる。

・しかし、そうなるのは早くても来年以降のようだから、これから第二波や三波に備えて、より「安全」な状態にもっていくことが喫緊の課題になる。どうしたらそれが可能になるのか。おそらく、三密を避けた生活様式の励行や、人の集まる場でのマスクや距離の取り方ではないように思う。それらは結局、客観的な根拠のない対処法で、何となく「安心」を感じることに過ぎないからである。つまり「安心」とは、あくまで主観的に心が安らぐ状態のことであって、実際に「安全」であるかを確認するものではないのである。

・街中でマスクをつけない人を見かけたり、他県ナンバーの車とすれ違うと、何となく「不安」を感じてしまう。みんなが自粛をしているのに、営業している店や、海や山にでかけるのはけしからん。そんな空気が蔓延して、誰もが、その標的になるまいと萎縮をしてしまっている。政府や自治体、それにメディアがそれを推奨したりするから、誰もが「不安」の払拭に敏感になっている。何しろ「自粛警察」なる勝手な取り締まりが横行したりもしているのである。

・これは日本人が陥りがちな、良くない精神状態だと思う。たとえ「安全」であっても、けっして「安心」できるわけではないし、「安心」したからといって、必ずしも「安全」なわけではない。そこに無自覚になって「安全・安心」とひと括りにしてしまっている。ましてや「安心感」なるものは自己満足や自己納得以外の何ものでもないのである。

・コロナに安全に対処する方法は、感染者をできる限り多く見つけることで、「PCR検査」や「抗体・抗原検査」を大量に迅速にすることに尽きると思う。現在いくつかの大学で行われている「抗体・抗原検査」では被験者の0.7%ぐらいに陽性反応が出ているようである。極めて少ない数字だが、しかし、日本の人口では80万人ということになって、公表されている感染者数の50倍もいることになる。ちなみに、東京都の3月と4月の死者数が合計で、過去5年の平均値より1481名多かったそうだ。コロナによる死者数は、同時期で119名とされているから、実際には10倍以上多かったということになる。感染者数や死者数の報告がいかにいい加減なものかを如実に表していて、こんな数字で「安心」したり「不安」になったりするのはばかげたことだと感じてしまう。

・ウィルスの感染力が弱まるのは人口の6割以上の人に抗体ができた時だと言われている。スウェーデンの方針は、それを目指して、ほとんどの制限を設けなかったようだ。それでもとても6割には達しないし、死者数も多いから批判されること多いようだ。しかし、経済活動にそれほどの支障は起きなかった。日本はお粗末な政策にもかかわらず、理由の定かでない要因(factor x)で死者数が抑えられている。ところが「不安感」を煽って、経済活動や社会活動が恐ろしく停滞させてしまっているのである。

・皆保険制度が徹底している日本では、年一回の健康診断が義務づけられている。この時に、わずかの血液採取で済む「抗体・抗原検査」を行えば、かなりの人の感染状態がわかるはずである。何より優先すべきことが、そこにお金と人員をつぎ込むことであるのは自明なのである、「安心感」ではなく「安全」であることを徹底させて、不要な自粛をやめること。それができるかどうかが、日本の未来を左右するように思うが、多分、「go to キャンペーン」や「オリンピック」を電通と結託して決行しようとしている政権では難しいだろう。

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2020年06月15日 06:34に投稿されたエントリーのページです。

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