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四季の経験

forest6-1.jpeg・去年の3月に越してから1年がすぎた。あっという間の、という感じだが、季節の変化は本当にドラマチックだった。一年たったらもうそのくり返しで新鮮さは薄れるのではと思ったが、ちょっと前にもびっくりするようなことがあった。
・今年は雪が多くて、つい最近まで、家のまわりにはたくさん残っていた。それが消え始めて、押しつぶされた枯れ葉や枝が顔を出すと、秋に見た風景が戻ったように感じたのだが、よーく目を凝らしてみると、緑が少しある。玄関のバルコニーの脇にあったチューリップの芽が出てきていたのだ。雪が溶けるのをじっと待って、溶けたらすぐに発芽。その生命力に感心してしまった。その後の暖かさで、チューリップは順調に成長しているから、赤や黄の花を今年も楽しめそうだ。
・そんなことがあるから、庭に出ると地面に顔をつけるようにして緑をさがす。そうすると蕗の薹が一つ二つ。あっと思って積み始めると、あるはあるは、たちまちザルにいっぱいになってしまうほどだった。さっそく今年はじめての野草の天ぷら。独特の苦みが去年味わった春を思い出させてくれた。

forest6-2.jpeg・春が来て、夏になって、秋、そして冬。同じことのくり返しのようだが、1年ですべてがわかってしまうわけではない。そのことに気がついたら、今年もまたそれぞれの季節を新鮮に味わえそうな気になってきた。季節感はただ暑いとか寒いとかいうだけではない。当たり前のことをもうずいぶん長い間忘れていた気がする。
・などと書いて、数日経ったら、また雪が降った。朝起きたら一面銀世界で、そのまま夜まで降り続いた。さすがに春の雪は湿っていて、見る見る積もるということはないが、それでも20cmを越えるほどになった。季節の変化がドラマチックなのは1年という長い時間の中だけではない。1週間前には河口湖でも最高気温が20度近くになって、薪割りをしていると汗ばむほどだったし、東京ではサクラがあっという間に満開になった。そして今日は一日中零下である。10cmほどにのびたチューリップや蕗の薹もさぞびっくりしているだろう。とはいえ、このあたりの植物は本当に強いから、人間みたいに風邪などは引いたりはしない。それに、僕のように、数日間の暖かさに、もう春だと早合点することもないだろう。僕は今日、バイクでツーリングをするつもりでいたのだが、結局どこへも行かず、雪景色を見ながら、木工をした。

forest6-3.jpeg・最近、木工の腕がずいぶん上がったと我ながら感心する。スプーン、フォーク、孫の手、灰皿、ペーパー・ナイフ、靴べら等など、身の回りの小道具や台所で使う道具はほとんど僕の手製のものになった。来客は誰でも驚いてほしがるから、得意になって何でもあげてしまう。「これ売れますよ」などと言われると、もう有頂天だが、「いくらで買う?」と聞くと「500円、いや300円ぐらいかな」で、ちょっとがっかり。
・手際よく作れるようになったとはいえ、ひとつのものをつくるのに1時間や2時間はかかるから、そんな値段では売る気にはならない。しかしスプーンひとつに1000円以上の値をつけたら、ほとんど売れないだろう。 ・木工に使っているのはもっぱら白樺だが、先日、去年と同じ湖畔でまた2本、伐採された木を見つけた。追手門学院大学を卒業した後、この春鍼灸師の国家試験に合格した木本君が大阪から遊びに来たので、一緒に車に乗せて、その木を取りに行った。鋸で2mほどに切って車に積んで持ち帰ったのだが、彼はかなりばてたようだ。おかげで、僕は楽をしたし、当分材料に困ることもなくなった。

・僕の住んでいる土地には昔から有名な紬がある。寒くて長い冬に、女性たちが家の中で機を織る。そうやって長い時間を過ごし、また糧を得てきた。最近ではほとんどやらなくなってしまったようだが、冬というのはそんなふうにじっとして手仕事をするしかない季節、あるいは手仕事をしたくなる時間なのかもしれない。
forest6-4.jpeg・僕のカミさんも、5月からの各地のフェアに向けて作品をせっせとつくった。地元はもちろん、陶器をもって東京や松本、あるいは駒ヶ根あたりに行くようだ。ついでに僕の木工品も持っていってもらおうかな。しかし、新学期が始まると、今ほど作る時間はとれないから、来客のために残しておこうか。

・p.s.何人かの人にご心配をかけましたが、「スポーツ社会学会」のシンポジウムでの発表は無事終わりました。一回こっきりの発表ではもったいないので、内容を文章化しようかと考えています。(2001.04.02)

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2001年04月02日 13:19に投稿されたエントリーのページです。

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