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日本発のアフリカと南米の音楽

Nyama Kante "Yarabi"
Irama Osno "Taki Ayacucho"

・アフリカの音楽は、これまでにも、フェラ・クティやユッスー・ウンドゥール、そしてアブドゥーラ・イブラヒムをはじめ、他のミュージシャンも取りあげてきた。遠くて行けそうもないけれど、その音楽には、ずいぶん前から興味を持ってきた。もちろんアフリカは大きな大陸だから、音楽を一つのものとしてくくれるわけではない。

・アフリカには、現在、54の主権国家と10の非主権地域がある。人口も急増しているし、言語の種類も多い。もちろん、ヨーロッパ列強の植民地だったから、ヨーロッパの言語を使う国も少なくない。多様な宗教、政治形態、経済発展の違い、紛争、公害や貧富の格差、そしてエイズやエボラ熱などの流行が問題になってもきた。そしてアフリカの音楽には、そういった問題をストレートに歌い、訴えるミュージシャンもいる。

kante.jpg・アフリカの音楽に興味を持つきっかけになったのは鈴木裕之の『ストリートの歌』(世界思想社)だった。あるいはそれ以前に彼が訳した『フェラ・クティ』(晶文社)だった。どちらも、このコラムで取りあげている。ニャマ・カンテはギニア生まれでコートジボアールで育っている。多くのミュージシャンがそうであるように、彼女もグリオ(伝統伝達の語り部)の家系である。ぼくはこのCDを出版社の編集者からいただいた。彼は僕の本を何冊か担当した方だが、同時に、鈴木裕之の『ストリートの歌』や『恋する文化人類学者』を担当している。そしてニャマ・カンテが鈴木裕之のパートナーで、日本でも音楽活動をしていることを教えてもらった。

・"Yarabi"にはグリオによって歌い継がれてきたラブ・ソングや祭りの歌などの他に、アメリカの伝説的な黒人ブルース・シンガーであるロバート・ジョンソンの曲などが収録されている。バックで演奏するのは日本人のミュージシャンで、中には娘と一緒に歌い、日本語も飛び出す曲もある。紛れもなくアフリカの音楽だが、そこに、アメリカや日本が混ざっている。

irama.jpg ・イラマ・オスノはペルーのアヤクーチョに生まれ、伝統的な音楽に囲まれながら成長した。彼女もまた、縁があって、現在では日本で暮らし、音楽活動をしている。そしてこの"Taki Ayacucho" もまた、友人から贈られた。このCDには、彼女の息子がパーカッションで参加しているのである。

・僕は南米の音楽についても、興味があってこれまでにもこのコラムで取りあげたことがある。いわゆるフォルクローレと呼ばれるもので、メルセデス・ソーサやビクトール・ハラ、そしてビオレータ・パラといった人たちだ。(→"Gracias A La Vida")

・しかし、イラマ・オスノの音楽は、それらとはまったく違う。フォルクローレにはスペインやアメリカの影響が強くあるが、彼女はペルーの公用語とは違うケチュア語で、伝統に基づいた発声法で歌うものである。しかも歌われているのはアンデスの自然(風、雨、滝、川、山、土、石、鳥、動物、祖先、精霊)であり、伝統的な世界観のようだ。そんな音楽をバックで支えているのは、やはり日本人のミュージシャンたちである。ギターやケーナといったよく使われる楽器のほかにバイオリンやベース、あるいは打楽器が使われ、土着の音楽であることを強く意識しているが、そこにはやはり日本が混ざっている。そんな彼女は今、ギタリストであるパートナーの笹久保伸と秩父に住んでいるという。

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2018年01月29日 14:59に投稿されたエントリーのページです。

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