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夏休みの仕事

・やっと、前期の終わりまで来た。とにかく忙しい気がして、落ち着いて本も読めない感じの数ヶ月で、夏休みの待ち遠しさは例年になく強かった。
・原因はいろいろある。4月から5月にかけては1年生のオリエンテーション・キャンプの準備、実施、後始末。僕は実行委員長なのだが、他にも、入試委員、メディア委員、大学院運営委員と、割り当てられた仕事は多い。大学院に博士課程ができて、院生の数もどんどん増える。学部の3つのゼミと合わせると、毎週顔を合わせる学生の数は70人近くになる。名前を覚えるのにも一苦労なのに、その一人一人の関心を聞いて、アドバイスをして、やる気を起こさせたりしなければならない。もちろんゼミのコンパもやりたがるから、それにもつきあわなければならない。大学の催しや教員とのつき合いもあって、東京泊まりの日も多かった。
・先日も会議が二つあって終わったのは8時前だったのだが、クソ暑い東京にはもう1分もいたくない気がして、空きっ腹を我慢して車をすっ飛ばして帰った。会議は一つが新学科について、もう一つは学内のコンピュータについて。後の方は2時間の予定が3時間半にもなった。
・東経大にはコンピュータについての委員会が二つある。最初、不思議な気がしたが、要するに、マックとウィンドウズの対立でできたという経緯がある。経済や経営学部が必要とするコンピュータの環境は文字と数字が処理できればいい。しかし、コミュニケーション学部では画像や音の処理もできなければならない。いろいろないきさつがあって、マックやその周辺機器の維持管理をするメディア委員会が電算委員会とは別に生まれたようだ。その二つの委員会とコンピュータがそれぞれまったく別個にあって、敵意にも似た感情がくすぶってきた。そういう状況を何とか打開しようという趣旨の会議だった。
・こういったウィンドウ派とマック派の対立は前に勤めていた大学でもあって、僕は数少ないマック派を代表する情報センター委員だった。だから理解できないことはないのだが、マックとウィンドウは今では、できることに大差のないコンピュータとして共存している。そういう変化に大学の組織やスタッフが柔軟に対応できていない。原因は既得権や怨念にも似た感情のしこりだ。正直言って僕はこういうことに巻きこまれるのは大嫌いなのだが、放っておくわけにもいかない。で、3時間半の議論というわけだ。
・しかし、夏休みである。もうしばらくは、大学のことは考えたくはない。学生とのつき合いからも解放されたい。今年ほど、こんな気持ちを強く感じた年はない。とはいえ、涼しい場所でのんびり静養などといってもいられない。夏休み中にやらねばならない仕事がいくつかあるからだ。メインは翻訳。D.Strinatiの"An introduction to popular culture"を『ポピュラー文化を学ぶ人のために』という題名で世界思想社から出す予定だ。来年の講義のテキストに間に合わせるためには、夏休み中に仕上げなければならない。関東学院大学の伊藤明己さんとの共訳で、負担は半分なのだが、時間的な余裕はほとんどない。
・内容はポピュラー文化を分析するために蓄積されてきた理論研究の紹介といったものだ。大衆文化論、フランクフルト学派、構造主義と記号論、マルクス主義とヘゲモニー、フェミニズム、ポストモダニズムとならべると難しそうだが、イギリスやアメリカの大学では基礎的なクラスのテキストとしてつかわれていて、けっして難解というものではない。出版されれば、カルチュラル・スタディーズの理論的な概説書として役立つだろうと思う。
・もう一つの仕事も世界思想社から。来年の3月に京都大学を退官される井上俊さんの記念論集に一本エッセイを書かなければならい。題名は『文学の社会学』。文学という制約があって何を書くかいまだに困っているのだが、とりあえずはP.オースターの小説を題材にしてニューヨークについて、と考えている。ウッディ・アレンやルー・リードとからませれば、何とか話を一つ作れそう、と漠然とイメージしているが、具体的な構想はまだできていない。締め切りは9月末である。
・京都に住んでいるときは、夏休みはどこかに出かける時とほとんど決まっていた。暑い京都で夏を過ごすことなどうんざりだったし、子どももいたから長期の旅行に出かけることが多かった。それが河口湖に来てから2年間、家に落ち着いて仕事という形になっている。何より涼しくて居心地がいいから、どこかへ出かける気がしない。そんな気持ちが一番だが、学校の仕事がある間は、本を読んだり、ノートをつくったり、あれこれ考えたりという時間が持ちにくくなった。
・こんなはずじゃなかったのに、と思っている。それだけに、夏休みは学校のことを忘れていたいと思う。とはいえ、お盆をすぎると、来年度の入試の用事がはじまるから、そんな時間もあっという間に過ぎてしまう気がする。ぼやぼやしていると、夏は夏でまた、時間を気にして過ごすのかと思うと、ちょっと憂鬱になる。
・さあ、今日も翻訳をがんばって、夕方になったらカヤックを漕ぎに行こう!

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2001年07月09日 13:25に投稿されたエントリーのページです。

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