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世論操作の露骨さ

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・今年の「流行語大賞」が「トリプルスリー」と「爆買い」だって。説明を読むまで,前者は知りませんでした。トップ10にはほかに「アベ政治を許さない」「SEALDs」「ドローン」「エンブレム」「五郎丸」、そして「一億総活躍社会」までが紛れ込んでいます。なんかおかしな組み合わせと首をかしげたくなりますが,「公正中立」などという言論弾圧のことばが飛び交っていますから,選考委員の苦肉の策だと思えば,妙に納得のいく選考だったような気もします。

・今年の流行語は「爆買い」はいいとして、もう一つは「アベ政治を許さない」か「SEALDs」でしょう。しかし、それを選べば強烈な批判が出る。選ばなくても、政治関連がこの二つだけだと、やっぱり批判が出る。だから「一億総活躍社会」も選んでおきましょう,ということだったのだと思います。「公正中立・不偏不党」に従った結果とは言え、「一億総活躍社会」はいけません。歓迎する声が聞こえないのはもちろんですが,批判する声も小さなもので、これほど言論を抑圧することばは、近年では珍しいからです。

・もう一つ、「五郎丸」はポーズで選ばれたようですが、それなら流行アクションであって、流行語ではないはずです。もっとも彼の人気はマスコミの盛り上げもあって驚くほどですが、さっそく自民党が利用して、「60年大会」に呼んでアベと一緒に万歳をさせました。ワールド・カップでの日本の活躍には、大勢の人が賛意を表しましたが、反アベの人たちには興ざめの出来事だったと思います。スポーツの政治利用は日本では日常茶飯のことですが、日本批判をして辞めたジョーンズHCが言いたかったことの一つもまた、これだったはずで、彼が苦労して貫徹した意識改革が、一瞬にして元の木阿弥になった出来事でした。

・国連が12月に予定していた日本の「表現の自由」に関する調査が、日本の要望でキャンセルされました。理由はスケジュール調整ができていないと言うことで、政府は来年の秋以降を希望したそうです。今調査されれば、「表現の自由」が危機的状況にあることがあからさまになって、参院選に影響が出る。これは抑圧しているという自覚があればこその見え透いた判断ですが、これについても,メディアはほとんど批判をしていません。

・「国境なき記者団」が毎年発表している「世界報道自由度ランキング」では、今年の日本は61位で、民主主義の育っていない国の中に紛れています。ただしこれはアベ政権に変わって急落した結果であって、菅政権の時には11位でした。ちなみに第一次アベ政権時にもやはり51位と落ち込みましたから、アベがいかにメディアを弾圧しているかがよくわかる数字です。もっとも多くの日本人には,こんな仕打ちが実感として理解されていないようです。

・「世界価値調査」がおこなった「世界各国における新聞・雑誌への信頼度」調査によれば、日本はダントツで45.6%です。つまり国民の半数に近い人が,新聞や雑誌の記事を信頼して読んでいるというわけです。ちなみに信頼度が高い国はほかに、フィリピン、中国、韓国,シンガポールで、「信頼しない」が多い国にはオーストラリア、アメリカなどがあって、大半の国は「信頼する」よりは「信頼しない」が勝っています。もっとも信頼度が上がったのは2000年以降ですから、おかしな数字だと言うほかはありません。

・メディアが伝えるニュースにはまず、疑いの目を向けて接する。そんな態度はきわめて当たり前のことで、それがあるからこそメディアも、いい加減な報道や安易な世論操作はできないことを自覚できるのです。自粛や萎縮をして,政府の反応を伺いながら記事を書く。その記事を疑いもせず読む。今の日本のメディア状況にはこんな光景がイメージされますが、そもそも読みもしないで,空気にあわせる人が多いのではと考えると、空恐ろしい気がしてきます。

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2015年12月07日 07:35に投稿されたエントリーのページです。

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