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嘘と隠蔽がまかり通る

・コロナの感染者数が欧米で激増している。これから冬になれば、その数はさらに増えるかもしれない。そんな状況を鑑みてIOCが東京オリンピックの中止を決めたようだ。ようだと言うのは、日本の政府もメディアも全く報じていないからだ。情報源は『ブラックボランティア』(角川新書)などでオリンピック批判をしている本間龍が登場するYouTubeの番組だった。彼によれば、組織委員会のメンバーや電通などからの確かな情報(リーク)だということだった。Twitterの上位にランクされるほど拡散されたが、それを扱ったメディアは「日刊ゲンダイ」だけで、取材に来たのも「東京新聞」ぐらいだったようだ。どちらも、オリンピックのスポンサーになっていないメディアである。

・日本のメディアは無視したのに、韓国に滞在していたIOCのバッハ会長が中止はしないと発言した。また、国会の所信表明で菅首相は、コロナに打ち勝った証として開催したいと言った。しかし、欧州での感染者数の急増を考えれば、それが確かな根拠に基づくものだとはとても思えない。今中止などと言えば、日本の政治も経済も大混乱になってしまう。それを恐れての発言であることは明らかだろう。

・日本の政府や東京都は既に1.5兆円を超える金を費やしている。そのすべてが無駄になるし、スポンサー企業から集めた金も返金を要求されるかもしれない。当てにしたオリンピックがなくなれば、景気は落ち込み、株価は大暴落し、自民党も敗北する。だから何としてでも中止にはしたくない。しかしコロナは、そんな事情を考慮してはくれない。何しろ季節はまだ秋で、これから冬になれば、さらに猛威を振るうことになるからだ。そして頼りにしているワクチンの開発は決して順調ではない。

・学術会議の委員の任命について、菅首相が六人を拒否して大騒ぎになっている。総理の任命権は形式的なもので拒否する権限はない。それは明らかなのに、批判する声は強くならない。と言うより、似たような組織に国が予算をつけるのは日本だけで、欧米にはないといった事実でない発言や、中国との関係をでっち上げた政治家のツイートが大きく話題になって、批判を学術会議に向けようとする力も働いている、委員になれば学士院の会員になって高額な年金がもらえると言った嘘八百をテレビ局の解説委員が放送で公言したりしても、それを批判する声は大きくならないから、言ったもの勝ちといった様相を呈している。

・フェイクニュースの氾濫はもちろん、日本にかぎらない。アメリカ大統領選挙におけるトランプの発言はひどかったし、誹謗中傷合戦と化した様子はうんざりするほどだった。しかし、日本の状況も同じようなものになっている。メディアが政権に忖度して自粛し、有力者がSNSを使って好き勝手に発言する。それを批判したり、修正したりする声はなかなか届かない。こんな嘘と隠蔽がまかり通る世界になってしまったことに呆れ、また不安にもなっている。

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2020年11月02日 06:32に投稿されたエントリーのページです。

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