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億や兆にマヒしてる

・コロナ禍で国は莫大な財政支出を強いられている。もちろんそれは借金だ。何しろ通常でも、国家予算100兆円のうち税収は60兆円で、足りない分は国債の発行で調達されていたのに、さらに数十兆円が追加されているのである。リーマンショックや東日本大震災があって、その時にも多額の赤字国債が発行されて、その借金の返済に税金が増額されている。当然、コロナ禍で使われるお金もまた、税金として返済されることになる。

・もちろん、予算の中には必要なものも多い。特別給付金として国民一人当たり10万円が配られたが、その総額は12兆円だった。また企業を助ける持続化給付金には5兆円が使われていて、この制度はまだ継続中である。あるいは、対応が遅いと非難されてきた医療関係への支援についても1兆円規模で行われているようだ。もっとも、医療従事者からは、ボーナスカットされたとか、仕事に見合う報酬ではないといった声も多く聞こえてくる。どれにしても、総額としては多額だが、受け取る側から見ればとても満足が行く額ではないのである。

・他方で、感染拡大の要因だとして非難されている「Go toキャンペーン」では、すでに2兆円を超える支出があって、さらに来年の6月まで延長することが決められている。観光業者や飲食店、あるいはイベント業などを支援する目的だと言われているが、中間搾取が大きくて、末端の小規模事業者には届いていないという声もある。さらに、もっとも批判すべきはオリンピック関連だろう。コンパクト五輪を謳った東京五輪は、すでに2兆円を超える支出があったとされている。それに延期に伴う追加費用に2000億円が必要というのだが、ここには、コロナ対策にかかる費用が含まれているわけではない。

・億や兆といったお金の話が飛び交っていて、その金額にマヒしてしまっている。だから数百万円程度では、誰も驚かない。安倍前首相が「桜を見る会」の前日に、後援会の人たちを集めたパーティで、その費用を穴埋めした。そのお金は数年分で800万円ほどで、安倍自身は知らぬ間に秘書が勝手に行ったということになって、略式起訴で決着になりそうだ。そして、国会で嘘を平然とつきまくったことには、何のおとがめもないという。

・こんな政権が8年も続いたせいか、自民党の議員による選挙でのお金のばらまきや、業者からのヤミ献金、そして政府に委託された業務の中間搾取や政治家へのキックバックやリベートといった問題も数多い。しかし、どういうわけか、大きな問題になる気配はない。菅総理や二階幹事長に関連しているのに、メディアは本気になって追求しないようだ。検察を動かすのは世論の力しかないのにである。

・できもしないオリンピックをやると言い続けていること、感染爆発に近い状態になっても「Go to ~」をやめようとしないことなど、政権がコロナ禍の実体や国民の窮状に目を向けていないことは明らかだ。休業や失業に追い込まれた人が続出して、借りている家を追い出されたり、今日明日の食事もできない人が多数いるというのに、そのような人たちへの救いの手は民間のボランティアに任されている。さすがに政権支持率が下がっているが、それでもまだ半数が支持している。勝ち組と負け組の分断、「今だけ金だけ自分だけ」の浸透。これは「災害ユートピア」ではなく「デストピア」である。

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2020年12月14日 07:30に投稿されたエントリーのページです。

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