☆クリスマス・トークイベント(12/19)開催しました☆

[2014.12.24]

『クリスマス・キャロル』―― イギリスのおばけは、クリスマスにやってくる!?
お話し:図書館長 大岡玲 教授

12月19日15時から、1階のブラウジングスペースで、クリスマス・トークイベントを開催しました。図書館では、生協書籍部が扱っているクリスマスの図書や絵本を館内に展示して、気に入った本があれば生協へ行こう!ということで、生協とコラボしたクリスマス展示を行っています。そして今回、クリスマス感をさらに盛り上げようと、文学が専門で芥川賞作家の大岡玲図書館長にご登場願いました。

クリスマス・キャロルって、この季節、街中に流れてるあれ...「クリスマス・キャロルが~♪流れる頃には~♪」ですか?って人いませんか?そういう人にも物語『クリスマス・キャロル』がよくわかるように、登場人物やあらすじの紹介からお話しははじまりました。

物語には、過去・現在・未来の3人の幽霊が出てくるのですが、この幽霊たち、なぜ冬にでてくるの?という疑問に大岡先生が答えます。古代の祭りである「ユール(古代ヨーロッパ、ゲルマン民族、ヴァイキング)」、「サトゥルナリア(古代ローマ)」、「ミトラ教(古代インド、ペルシャ)」、「ザクムク(古代メソポタミア)」はクリスマスと深いかかわりを持つ祭りとされ、共に冬至の時期に行われていました。日照時間が一番短い冬至の時期は、太陽が「死」に一番近くなり、その後そこから「蘇る」という考え方から、古代の多くの文化圏で冬至は1年の始まりにもなっています。ゆえに、生命力が衰えるこの時期は、悪霊や化け物が出るし、先祖の霊も地上に帰ってくるのです...と、そんなお話しの最中、窓ガラスに張り付けていたツリーの飾りが"ハラリ"と落ちる一幕があり、「アッ、いまここにもやってきましたね!」と大岡先生が言われた時には会場が「えぇー(怖)」と、どよめきました。

冬の寒さや強い乾燥にも負けずに緑を保つ常緑樹が、古代から生命力のあかしとして尊ばれ、これがやがて「クリスマスツリー」に。キリスト(教)に結びついたツリーが現れた最初の記録は15世紀初めとされ、イギリスで一般化したのは1860年代と言われます。ディケンズ『クリスマス・キャロル』が発表されたのは1843年なので、物語には現在のようなツリーは登場していません。かわりにヒイラギが飾られましたが、このヒイラギ、サトゥルナリアでは悪霊や妖精よけ(魔除け)として贈り物と一緒に添えられていたものです。こう見ると、クリスマスっていろんなお祭りや宗教のハイブリッド型だったんですね。改めてキリスト教のしたたかさ(異教征服戦略)を学んだ気がしました。

もう一つ、この物語の裏側にはコワい一面があるんです。それは「西欧」におけるユダヤ人差別。登場人物の名前(エベニーザ・スクルージ、ジェイコブ・マーレイ)に注目してください。冷酷無慈悲、エゴイスト、守銭奴の人物がクリスマスを尊び(キリスト教に目覚め)、改心することで幸福な人生を送るという物語。

そして最後は、楽しくて美味しいお話し、クリスマスのご馳走について。貧しい使用人ボブ・クラチットの家では、クリスマスのご馳走としてガチョウが食卓に上ります。クリスマスの日、改心したスクルージは、クラチット家に七面鳥(ターキー)を贈るのですが、この描写からも、ガチョウよりも七面鳥が高級な食材とされていたことがわかります。ちなみに当時七面鳥はイギリスでは飼育されておらず、新大陸(アメリカ)からの輸入品だったそうです。そして大岡先生の一言。「アヒルとガチョウと七面鳥のなかで、どれが一番美味しいかと訊かれたら、すぐにガチョウ!と答えます。」はたして、一般人にその味の違いが分かるものなのかどうかもわかりませんが、とにかく、大岡先生の幅広い食歴と味覚の豊かさ(鋭さ)に脱帽でした。

参加されたみなさんに「クリスマスって深いなぁ~」と感じていただけたのなら幸いです。
それでは、みなさん、素敵なクリスマスをお過ごしください♪

☆解説は当日配布のリーフレットより引用しました。