東京経済大学

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2015年度 第8回
コミュニケーション学部 松永 智子 専任講師

メディアの影響を受けて「現実」は作られる。当たり前を疑わないと。 コミュニケーション学部 松永 智子 専任講師 メディアの影響を受けて「現実」は作られる。当たり前を疑わないと。 コミュニケーション学部 松永 智子 専任講師

Matsunaga Tomoko
東京経済大学 コミュニケーション学部専任講師
京都大学教育学部教育科学科卒業。京都大学教育学研究科教育科学専攻 博士課程修了。京都大学 教育学博士。主な研究分野は、多言語社会のメディア史。近著(共著)に『青年と雑誌の黄金時代--若者はなぜそれを読んでいたのか』(岩波書店)。

ゼミの研究テーマは「メディア社会」ですね。

 「高校野球」といえば、夏、青春、球児の涙、といったイメージが思い浮かぶのはなぜでしょう? オリンピックに、世界中の人が熱狂するのはどうしてでしょう?――普段、「当たり前」として見過ごしている現代の文化は、私たちを取り巻く「メディア」の影響を受けて形成されているものが少なくありません。私たちは無意識のうちに、メディアによって作られた"色眼鏡"で物事を見ていることがあるのです。このゼミでは、どのようにして今日のメディア社会が作られたのか、歴史社会学的なアプローチで検証していきます。

メディア社会を「歴史」で読み解く意義は何ですか?

 「英字新聞」を例に考えてみましょう。日本人の手によって日刊の英字新聞が初めて発刊されたのは、1897年のこと。創刊の辞には「これからは発信の時代」との言葉が掲げられていました。「だまっていては世界に誤解されてしまう、英語という国際言語でもっと日本のことを発信していこう」というメッセージです。
 ......おや、と思いませんか? 約120年もの時を経た今日、クールジャパンの推進をはじめ、まさに同じような機運が高まっていることに気づくでしょう。当時と何が共通し何が異なるのか、なぜ似たようなスローガンに行き着くのか、今後はどうすべきなのか――。現代を読み解く論点が、歴史を知ることによって浮かび上がってきます。「過去」を知ることは、「現在」の社会をより鋭く洞察すること、そして「未来」を構想することへとつながっていくのです。

活発な議論を促すために、独自の工夫をしているそうですね。

 春学期には、文献購読を通してメディア文化の基礎知識を習得します。毎週、担当者が文献をレジュメにしてプレゼンするのですが、この時のルールは「全員が事前に文献を読み、前日までに専用WEBサイトにコメントを書き込む」こと。参加者全員が疑問点や気になる点を明らかにしてゼミに臨むことで、議論はとても有意義なものになります。時には白熱しすぎて時間が足りなくなることも(笑)。自分なりの視点でコメントや質問をする力は、この方法によってかなり鍛えられたと思います。

論文のテーマ選びは、かなり自由度が高いそうですね。

 本当に興味や関心のある事を見つけるのは、意外に難しいものです。日常生活で大事にしてほしいのは、「なんか気になる」「違和感がある」といった"心の摩擦"を敏感にキャッチすること。それが研究の出発点です。これまでに、「漫画はアメリカでどのように受け入れられているのか」「京都はなぜ国内外から愛されるのか」「文化振興にとって海賊版は本当に「悪」なのか」など、学生たちは実にユニークなテーマで研究を進めてきました。

高校生や大学生へ向けて、エールをお願いします。

 フランスの船乗りの間に伝わる「たゆたえど沈まず」という言葉があります。どんな荒波のなかにあっても沈まずに耐えしのげば、やがて嵐は去って夜は明ける......人生もきっと同じです。困難な局面に直面した際、時にはじっと耐え、時には踏ん張って、そして何より、途中で投げ出さずに歩み続けることが大切なのだと思います。皆さんには、ここぞという時に力を発揮するための「知性や教養」を身につけ、苦しいときに支えあえる「仲間」を大切にして、心豊かな人間に成長してほしいと願っています。

Students'VOICE松永ゼミの学生の声

澤田亮平さん(3年)
このゼミに入ってから「当たり前を疑う」「物事を多角的に見る」ことを意識するようになりました。例えば、イスラム文化について学んだときのこと。普段TVやインターネットで目にする情報からどうしてもマイナスのイメージを抱きがちでしたが、歴史的背景など初めて知ることも多く、もっと掘り下げて調べたい、知らなければと思いました。毎週、文献を読み込むのは大変ですが、読んだ分だけ自分の知識になっていくのでやりがいがあります。
秋葉成美さん(3年)
論文執筆の作法をきちんと習得して卒論を書きたいと思っていたので、松永先生の丁寧な指導を受けられることがとてもうれしいです。私はアニメが好きなので、卒業論文の研究テーマにできないかと検討中。アニメに関心がない人にも納得してもらえる卒論に仕上げたいと意気込んでいます。このゼミのメンバーは、体育会系から文化系の人まで本当に個性豊か。ゼミ中の議論や校外調査を通して、幅広いものの見方に触れられるのも新鮮で面白いです。

※学年は取材当時のものです。

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