新年度からゼミで取り上げているのは、世界的なベストセラーであるピケティ著『21世紀の資本』です。「資本主義は、富や所得の格差が自然と広がっていく矛盾を抱えている」と唱え、世界中の経済学者の間で大論争を巻き起こしていますね。ちなみに昨年度のゼミは「アベノミクス」がテーマでした。旬の話題を取り上げるのは、経済や財政は"いま世の中で起きていること"から学ぶのが最も面白いからです。ニュースや新聞で見聞きする話題を入り口に、「累進課税のあり方は」「社会保障はどうあるべきか」「そもそも資本主義とは」などと掘り下げていくのは、とても興味深い学びとなるはずです。
まずは、文献を正確に読み解くことから始めます。学術書を精読する力は大学時代にぜひ身につけてほしい能力の一つです。そして最も重視しているのが、ゼミ員同士の議論です。例えばピケティを読んで、「格差は拡大しており是正すべき」という賛成派もいれば、「格差は経済成長の証し。国際的な資産課税なんてとんでもない」という反対派もいるでしょう。正解はありません。学生が自ら調べ、考え、議論することに意味があるのです。
新聞を見てみてください。一面の記事は大体が経済に関わることでしょう? 政治の話題も、例えば雇用や消費税などは経済の問題でもありますし、中東をはじめとする国際情勢も背景には貧困問題が関わっています。つまり経済とは、世の中を理解するための最も基本的な土台であり、経済学を学べば社会の仕組みが分かるともいえるのです。こうして学生時代に「社会を見る目」を身につければ、企業でも家庭でも地域社会でも役立つ、生涯の財産となるはずです。
財政とは、いわば"国の顔"です。国家予算には「その国のいま」がはっきりと表れます。例えばいまの日本なら、「高齢化が進んで社会保障費が増加している」「現政権になって防衛費が増えている」など、様々なことが見えてくるわけです。
若い頭脳と心で、社会がどのように動いているのか、しっかりと見てください。目の前のことにとらわれて「就活どうしよう」なんて焦っていてもダメです。ニュースや新聞、そしてなるべく多くの本を読み、多様な考え方に触れてください。楽な道のりではないですが、4年間かけて東経大で経済学を学べば、社会を見る目、ものを考え判断する力、そして大きな自信がつくはずです。そのことが結果的に就活の成功にもつながるのです。「何を勉強したいのかわからない」という人も大歓迎。経済学のなかに、あなたの興味のある分野がきっと見つかると思いますよ。
※掲載されている教員の所属学部・職位及び研究テーマ等は、取材当時のものです。