「携帯電話の料金プランはなぜ複雑なのか」「コーヒーショップの商品のサイズはなぜ3種類なのか」「どうすればデートがうまくいくのか」「一夜漬けの勉強は効率的なのか」――。実はこんなことも、経済学の理論や考え方を使えば、ある程度説明することができます。面白いでしょう? ゼミではほかにも、環境問題、薬物汚染、賃金格差、消費税、TPPなど、学生の興味に沿った様々な事例を取り扱っています。経済学は、"教科書のグラフや数式を覚えて終わり"というものではありません。身の回りの具体的な事象と照らし合わせて学ぶことで、その有用性や面白さを知ってもらえたらと思っています。
「希少性のあるものをどう分配するか」を考える学問です。ここでいう"希少"とは、それを欲する人の欲望を満たす量よりも、供給されている財やサービスの量が相対的に少ないということ。例えば、「天然資源をどう分配すれば暮らしが豊かになるか」「アルバイトの収入を何に使えば合理的か」「一日24時間をどう過ごせば有効か」など、限りあるあらゆる財やサービスをどう分配すれば最大限に良い結果を得られるかを考えていきます。
春学期は、テキストの輪読とそれに対する質疑応答・ディスカッションを通して、社会の諸問題に経済学がどう関わっているか、どのような理論が元になっているかを学びました。秋学期からは、個人研究に取り組んでいます。テーマは、自分が関心のあることなら何でもOK。研究手法やボリュームも自由です。これまでに、「電子書籍が登場しても紙の本がなくならないのはなぜか」「震災の際の効率的な物流システムについて」など、学生たちは実にユニークな多様なテーマで研究に取り組んできました。
例えば先日のテーマは、「労働市場における男女の給与格差」でした。格差の理由は、選択した職業や労働時間の違いから、結婚退職のリスクを恐れる企業が賃金を低く設定しているといったものまで、様々挙げられました。さらに話は発展し、「ファッションモデルは女性の方が賃金が高いじゃないか」という方向に。学生たちがたどり着いた答えは、労働市場における需要と供給の関係でした。女性のファッション業界は、男性よりも市場規模が圧倒的に大きく、それだけ競争も熾烈です。商品の特性上、人気モデルを起用すれば高い広告効果が見込めるので、賃金(価格)が高くても企業のオファー(需要)は増大します。しかも、消費者の購買意欲をかき立てることのできるモデル(供給)はごく少数。この需要と供給のバランスが、女性モデルの賃金(価格)を押し上げている――。話はずいぶん脱線し時間もかかりましたが、こうやって自分たちで考えていくことで、理解はぐっと深まっていくように思います。
高校までの学びは多くの場合、テーマが与えられ、正しいやり方や答えが存在したことでしょう。でも、これからの人生ではそうはいきません。例えば就職活動なら、膨大な業界・企業の中から、自分で考え、選び、行動しなければいけません。仕事を始めてからは、さらに緻密に深く物事を考え、素早く判断することが求められます。つまり大学での学びは、正解のない様々な問題に対し、「どう向き合い、乗り越えていくか」という方法を身につけるためのものだと思っています。将来、需要と供給のグラフなんて忘れてしまうかもしれないけれど(笑)、自分の頭を使って物事を考える力は必ずや皆さんの糧になり、これからの人生を支えてくれるはずです。
※掲載されている教員・学生の所属学部・職位・学年及び研究テーマ等は、取材当時のものです。