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2016年度 第14回 経済学部 野田 浩二 准教授

ペット産業、都市産業、観光など「現場」から、研究はスタートします。経済学部 野田 浩二 准教授 ペット産業、都市産業、観光など「現場」から、研究はスタートします。経済学部 野田 浩二 准教授

Noda Koji
東京経済大学 経済学部准教授
一橋大学経済学部応用課程卒業。一橋大学大学院経済学研究科 博士課程修了。一橋大学 博士(経済学)。主な研究分野は、環境経済学、環境政策論、水政策史、制度派経済学。著書に『緑の水利権』(単著)、『環境用水――その成立条件と持続可能性』『役に立つ地理学』(いずれも共著)ほか。

「環境」と「経済」って、どんな関わりがあるんですか?

 環境を守るためには、コストがかかります。二酸化炭素の削減にも、ペットボトルの再利用にも、原発の事故処理にも、すべて費用がかかっています。このとき、"誰がどの位の費用を負担することが社会的に最適か"を探究し、改善案を提案するのが「環境経済学」という学問です。二酸化炭素の排出量取引や容器包装リサイクル法は、まさにこの考え方によるものですね。経済学はとっつきにくいという人がいますが、経済学的なものの考え方は、環境問題をはじめ、我々の日常生活に大いに組み込まれているものなんです。

東京駅の復原工事も、「環境経済学」と関係するとか?

 2012年に、東京駅丸の内駅舎が約100年前の創建時の姿に復原されました。この復原工事にかかった莫大な費用、どうやって捻出したと思いますか? ――答えは、東京駅上空の空間「空中権」の売却です。
 東京駅は、建築基準法上はもっと高いビルを建てられるのですが、その権利を周辺企業に売って工事費用を得ました。一方、「空中権」を買った周辺企業は、本来の容積率以上の高層階のビルを建てられるようになりました。"使わない建物上空の空間は売ってOK"という政策によってこの経済取引が成立し、文化的・歴史的に非常に価値のある建物を保全することができたわけです。これは、環境経済学の発想を取り入れた成功例といえるでしょう。ただ一方で、周りのビルが高層化して東京駅が埋没してしまった、という意見もあります。皆さんもぜひ、東京駅を自分の目で見て、考えてみてください。

「ペット」「観光」「景観」など、野田ゼミの研究テーマはユニークですね。

 ゼミで一番大事にしているのは、社会を見る目を養うこと、そして知的好奇心を高めることです。「ペットの殺処分を減らすには」「日本の喫茶店文化を観光資源として活用するには」など、研究テーマはいずれも社会への関心から生まれたもの。経済学に限らず、経営学や社会学、心理学など幅広い学問領域にまたがることも珍しくありません。以前は、「1週間で最も気になったことを30秒でスピーチせよ」という課題を毎週出していました。これも、身の回りにアンテナを張るきっかけ作りの一つです。

ゼミで学ぶことは、将来どう役立ちますか。

 私のゼミに"即効性"はないかもしれません(笑)。でも、それでいいと思っています。ゼミの研究は、常に3〜5人のグループワークで進めます。モチベーションも理解度も違うメンバーと共に一つのものを作り上げる経験は、今後組織で働くうえで絶対に無駄にはならないはず。また、どんな研究でもフィールドワークを実施します。現場に足を運び、直接見たり聞いたりすることで得られるものを大切にしてほしいからです。それから、私はしつこく「なぜそのテーマ?」「なぜその研究対象?」と突っ込みます。この"なぜ?"の積み重ねが、論理的な思考力を身につける訓練になると思っています。卒業後も、学び直したくなったり悩んだりした時は、いつでも会いにきてほしいですね。

Students'VOICE野田ゼミの学生の声

森川大地さん(4年)
野田ゼミは、とくにフィールドワークを重視しています。最初は見ず知らずの人にアポをとるだけで気後れしていましたが、ゼミでの3年間ですっかり度胸がつきました。
野沢昂平さん(3年)
2年次は先輩についていくだけでしたが、いつしか後輩にアドバイスし引っ張っていく立場に。グループワークは苦労が多い分、人としても成長できる気がします。
林 美咲さん(4年)
ペット産業に関する研究では、動物病院やジム、ショップ等がそろった幕張のイオンモールを訪問。先行研究が少なく大変でしたが、とてもやりがいがありました。
加藤 聡さん(3年)
現場の人に話を聞く重要性を実感しています。都市農業について青山ファーマーズマーケットの方にヒアリングした際は、課題と共にアドバイスもいただき、研究が大きく前進しました。
奥澤晴麗さん(3年)
今年度は、日本の喫茶店が減少しているのはなぜか、という疑問から研究をスタート。日本式サービスの良さを見つめるきっかけにもなりました。
川島悠生さん(3年)
観光産業の研究では、伝統芸能工芸である「江戸手描提灯」の活用を提案。2020年の東京五輪なども絡めた観光施策を考案しました。

※掲載されている教員・学生の所属学部・職位・学年及び研究テーマ等は、取材当時のものです。