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2016年度 第17回 コミュニケーション学部 遠藤 愛 准教授

スポーツのコツを言葉にする。コーチングの基本です。コミュニケーション学部 遠藤 愛 准教授 スポーツのコツを言葉にする。コーチングの基本です。コミュニケーション学部 遠藤 愛 准教授

Endo Mana
東京経済大学 コミュニケーション学部准教授
元女子プロテニス選手。全仏オープン(92年)・全英オープン(92年・94年)3回戦進出、全米オープン(94年)4回戦進出。シングルス最高位は26位。筑波大学体育専門学群卒業。筑波大学大学院体育研究科コーチ学専攻 修士課程修了。筑波大学大学院人間総合科学研究科体育科学専攻 博士課程修了。主な研究分野は、スポーツ科学。

そもそも、「コーチング」って何ですか?

 コーチという言葉には元々「馬車」、すなわち「人を導くもの」という意味があります。例えば、私たちは幼い頃から「お箸を使う」「自転車に乗る」「キャッチボールをする」など多種多様な技やコツを、親や周囲の人から教わってきました。またビジネス現場では、マネジメント層が部下の能力を引き出すためのコミュニケーション術としても注目されています。
 このように、対象者が新たな技術を身につけたりスキルを磨いたりするために、教える側が行う一連の活動を「コーチング」といいます。なかでもスポーツ分野に特化し、高度な専門技術を伝えると共に、競技の意義や身体の仕組みなどについても理解し、選手を導くのが「スポーツ・コーチング」です。バイオメカニクス(生体力学)、心理学、データ分析など様々な領域がありますが、私のゼミでは、技の伝授、すなわち"私のコツをあなたのコツに"するための方法を中心に学んでいきます。

人にものを教えるとき、何が大切ですか。

 日本におけるスポーツの教育現場には「見て学べ」「出来ないのは努力不足」といった風潮があったとされています。しかし実際には対象者がつまずいている要因を探りその対策を練るのは、教える側の仕事だと思います。例えば、お箸をうまく使えない人に対しては、どの動きができないのかを見極め「まず、人差し指と中指ではさむ訓練をしよう」などと導いてあげなければなりません。このように、教える側には、対象者の側に立ってその感覚を理解する力(=運動共感能力)が求められます。
 さらに「どう伝えれば相手に響くか」を見抜くのも教え手の責任です。言葉で伝えるか、動きを真似させるのか、あるいはしばらく見守るのか。それは相手が「どんな人間であるか」を探ることでもあります。コーチングとはまさに相手との「コミュニケーション」なのです。

ゼミでは、体育館や屋外に行くこともあるとか。

 私のゼミでは、座学を中心とした「理論」とそれを元にした「実践」をセットで学びます。例えば、長年の経験によって体に刻み込まれた感覚(=身体知)を他者に伝えることは決して簡単なことではありません。そのことを講義や文献で学ぶだけではなく、例えば「バスケットボールの初心者にドリブルのコツを言葉で教える」「テニス初心者に鏡を使ってフットワークを真似させる」など、実際に試しながら身をもって感じてもらうようにしています。
 今年度は、コミュニケーション学部を中心に各学部から27人が集まってくれました。学生には「とりあえず、やってみよう」「いま何か動いてみて」などと無茶ぶりすることはしばしば(笑)。そういうノリを面白がってくれる学生が多いので、ゼミはいつもとてもにぎやかです。

アスリートから教員への転身です。学生に一番伝えたいことは。

 学ぶってすごく面白いよ、ということです。現役時代、私は自分にテニスの才能があると思ったことはないけれど、「学ぶ喜び」「人に教わる喜び」は強く感じていました。昨日できなかったことが今日少しだけできるようになった、知らなかった世界に出会うことができた。そういう一つひとつの学びの喜びを純粋に感じられる気持ちは絶対に成長の伸びしろになるし、この先の人生で倒れそうな自分をグッと支えてくれる強さになると思います。
 そして将来、どんな分野に進んでも──たとえそれが理想通りではなかったとしても──そこに自分の居場所ややりがいを見つけて、誇りを持って生きていってほしいと願っています。

Students'VOICE遠藤ゼミの学生の声

石井杏奈さん(経済学部3年)
バスケのドリブルのコツを教えるという授業では、自分が感覚でやっている技術を、言葉にすることがこんなにも難しいのかと驚きました。遠藤ゼミは、メリハリがあって明るく自由な雰囲気。毎週のゼミの時間が楽しみです。
岡部 育さん(コミュニケーション学部3年)
地域の小学生に陸上を教えるボランティアをしています。運動が得意な子、苦手な子、引っ込み思案の子など、一人ひとりに合ったアドバイスをするのは大変ですが、ゼミでの学びが日々役立っています。
奈良友美さん(コミュニケーション学部3年)
相手の立場に立ってものを伝えようとすると、言葉だけでなく、実際に動いてみせたり映像で見せたりと、色々な方法が考えられます。これは、スポーツの指導に限らずあらゆるコミュニケーションにも通じることだと思います。
藤井さつきさん(コミュニケーション学部2年)
遠藤先生の授業「スポーツの科学」が面白かったので、このゼミを選びました。赤ちゃんの動きが運動能力にどう影響するかという話や、ドーピングの話題など、色々な観点からスポーツのことを考えられて興味深いです。
平井 聡さん(経営学部3年)
自分が無意識にできる動きでも、言葉にして相手に伝えられなければ、コーチングはできません。言語化することが自分自身の技の振り返りにもつながるからか、遠藤ゼミに入ってからバスケが上達した気がします!
若杉颯一郎さん(経済学部3年)
陸上競技部で走高跳びをやっているので、メンタルコントロール法を先生にアドバイスしていただくこともあります。ゼミに入ってから論文や文献も読むようになり、学ぶことが楽しくなりました。2020年に向けて頑張ります!

※掲載されている教員・学生の所属学部・職位・学年及び研究テーマ等は、取材当時のものです。