残念ながら日本人の多くはいま、世界で通用するだけの英語力を持ち合わせてはいません。小・中・高、そして大学で英語を学び、豊富な英語教材に囲まれているのに、です。
教育現場で長年英語を指導してきた私が、10年近く前にアジアの国々を訪れて驚いたのは、彼らの英語力の高さでした。ベトナムでもタイでもネパールでも、外国に行ったことすらない学生が、当たり前のように流暢に英語を話すのです。衝撃を受けました。言語の習得というのは、環境や教材以上に、本人が自発的かつ持続的に高い意欲を持って取り組むことが大切なのだとあらためて実感しました。
関ゼミでは毎夏、アジア地域での交流研修を実施しています。現地での経験と事前事後の様々な準備を通して、英語能力の向上はもちろんのこと、異国の文化を理解し受け入れ、人として大きく成長するきっかけになればと願っています。
2週間の交流研修では、日本人と現地の学生との混合チームをつくり、研究テーマに関する調査を行います。例えば今年のベトナム研修のテーマは、昨年国連総会にて採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」。政府関係者に話を聞いたり、フィールド調査をしたり、ディスカッションをしたりと、チームごとに独自の調査を進めていきます。締めくくりは、成果発表のプレゼンテーションと交流コンサート。調査の合間に練習する両国の踊りや音楽も交えた本番のステージは、誰がどこの国の人かすら分からないほど打ち解けた盛大な出し物になります。
もちろんすべてが順調にはいきません。とくに最初の数日間は「言葉が通じない」「食事が合わない」「時間感覚が違う」といった様々な出来事にカルチャーショックを受け、弱音や不満も噴出します。それでも、逃げ場のない環境下で、現地の学生たちに助けられながら共に暮らし学ぶ日々を経て、みな一回りも二回りも大きくなって帰国します。「人との繋がり」は異文化学習、外国語学習の原点です。
帰国後も休む間はありません。南アジア、及び東南アジアを活動拠点する国際交流団体と連携し、国際協力を志す日本全国の学生と共に学生向けのイベントの運営に携わります。このイベントは、例年JICAや外務省の後援を受けるため、責任重大です。LINEやSNSを駆使し、現地学生と共に必死に準備に取り組みます。
ネパールで大地震があったのは2015年4月25日のこと。すぐに、現地と交流のあった関ゼミ生と都内学生有志が中心となり、復興支援のための「メロ・サティ(ネパール語で「私の友達」の意)プロジェクト」を立ち上げました。地震からわずか10日後の5月5日には、外務省とJICA(国際協力機構)の後援を受け、チャリティーイベントを実施。その様子やゼミ生が作成したネパール応援動画は、テレビニュース、新聞各紙で幅広く紹介された他、NHKテレビ番組、『くらし☆解説 「難航するネパール支援 日本にできること」』にて詳細に取り上げられました。その後も、支援活動費を集めるために特製リストバンドを作成・販売するなど、地道な活動を続けました。現地で必要とされていることを第一に考え、目立たなくとも堅実な"陰の支援"に徹したゼミ生たちを心から誇りに思います。
このゼミの活動は心身共に楽なものではないですし、そもそも総合教育演習は必修科目ではありませんから、履修しなくても卒業できます。でも、ゼミでの濃密な時間は、今後の皆さんの人生にとって大きな財産になると信じています。関ゼミを巣立った先輩のなかには、夏の研修がきっかけで1年間単身ベトナム留学をしたり、卒業後に国費留学生として韓国に留学したり、青年海外協力隊としてモロッコで活動をしたりした人もいます。さらに、地道に英語学習に取り組んだ結果、昨年度はゼミ生の半数以上がTOEICスコア800点を超えました。大学在学中に、「成長したい」「変わりたい」と思っている人はぜひ関ゼミの扉を叩いてみてください。
※掲載されている教員・学生の所属学部・職位・学年及び研究テーマ等は、取材当時のものです。