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2016年度 第20回 経済学部 安田 宏樹 専任講師

プロスポーツ選手2151人分の誕生月と年俸の関係を調べてみました。経済学部 安田 宏樹 専任講師 プロスポーツ選手2151人分の誕生月と年俸の関係を調べてみました。経済学部 安田 宏樹 専任講師

Yasuda Hiroki
東京経済大学 経済学部専任講師
学習院大学経済学部経済学科卒業。慶應義塾大学大学院経済学研究科 博士課程修了。慶應義塾大学博士(経済学)。慶應義塾大学経済学部助教、九州産業大学経済学部講師を経て、現職。主な研究分野は、労働経済学。

イラストにある「年俸」の文字に誤植がございました。おわびして訂正いたします。
JR車内の広告につきましても、差し替えをいたしました。

「教育」と「経済」って、関係あるんですか?

 教育年数と賃金を例に考えてみたいと思います。「高卒」と「大卒・院卒」の平均生涯賃金(男性の場合)の差は、約7300万円といわれています。それに対して、学費や進学せずに働いていれば得られたはずの賃金などのいわゆるコストを約2000万円とします。そうすると、大学(院)に進学した場合の「便益」(=約7300万円)と、「費用」(=約2000万円)を比べると、大学(院)に進学することの平均的な便益は費用を上回ることがわかります。よく"教育は投資"という言い方がされますが、経済学的にみれば、教育とは非常に高いリターンが見込める投資だという解釈ができると思います。
 今年度はこういった「教育経済学」をゼミ全体のテーマに掲げ、「子どもの成績を伸ばすために何が有効か」「少人数学級に効果はあるのか」「なぜ政府は多額の税金を教育に支出するのか」など、様々な観点から教育を経済学的に考察しています。

論文を執筆する力は、どうやって養うのですか。

 前期は、昨年の出版以来注目を集めている『「学力」の経済学』を輪読するところからスタートしました。輪読の後は3〜4人のグループに分かれてディスカッションを行い、理解を深めました。その後データ分析の手法を学び、後期は論文執筆に入っていきます。私のゼミでは、今年度は個人とグループで計2本の論文を作成する予定です。テーマは、教育経済学や労働経済学に関連するテーマを各自で自由に設定します
 ちなみに昨年度は、誕生月とプロスポーツ選手の年俸の関係について調べたグループがありました。これは、「4〜6月生まれの子どもは、1〜3月生まれに比べて学業成績が良い」という先行研究からヒントを得たものです。そのグループでは、日本のプロ野球選手とプロサッカー選手一人ひとりの誕生月を調べてデータ分析を行い、「プロスポーツ選手の人数は4〜6月生まれの割合が高いが、その後の活躍(年俸)に誕生月は影響していない」という結論を導き出しました。ゼミ生のがんばりにはいつも感心させられます。

「読む」「書く」「話す」力を重視しているそうですね。

 いずれも非常に重要な能力だと思います。どうすれば身につくのかはまだ私も答えが出ていないですし、試行錯誤の連続ですが、私のゼミでは「場数を踏む」ことを重要視しています。「読む・書く」力は、課題図書の輪読や要約、論文作成を通して高められると考えています。今年度は書く力の向上を目的に、毎週全員に課題図書の要約をしてもらいました。
 そして「話す」力に関しては、ゼミ冒頭で行っている"30秒プレゼン"で練習をしています。30秒以内に話をまとめる「エレベーターピッチ」は、ゼミを持ってから3年間ずっと続けています。毎回17人のゼミ生全員が、その日のお題──趣味、嫌いな食べ物、新たな税金を導入するならetc.──に沿って即興で発表します。小さな積み重ねではありますが、きっと少しずつ力になっていると思います。

大学で経済学を学ぼうと考えている高校生へメッセージを。

 経済学とは「世の中で起きていることを計る物差し」のようなものかもしれません。商品の価格はどのように決まるのか。企業の採用数や賃金はどのように決まるのか。──。経済学のロジックを知れば、社会で起こっている現象をより論理的に理解することができるようになると思います。経済学を学ぶことは将来どのような分野に進んでもきっと役立つと思います。
 ゼミ生の姿を見ていると、その成長ぶりに驚かされることが少なくありません。学ぶ意欲の高いゼミ生とともにゼミ活動ができることは私にとっても非常に大きな財産です。皆さんの大学時代がたくさんの素晴らしい出会いに恵まれることを願っています。

Students'VOICE安田ゼミの学生の声

植松咲江さん(4年)
子どもの誕生月と成績に関する先行研究を踏まえて、スポーツ選手の誕生月と年俸の関係に応用した論文をグループで作成しました。2151人分(!)の選手のデータを分析するのは大変でしたが、とてもやりがいがありました。
栗原 駿さん(3年)
安田ゼミに入ってから、文献を読むのが苦ではなくなり、レポートを書くのも楽しくなり、人前で話すときに緊張することもなくなりました! ゼミ長としてしっかりメンバーを引っ張っていきたいと思います。
上石史哉さん(3年)
他大学とのインゼミでは「移民を受け入れるべきか否か」をテーマにディスカッションしました。当初はやや縁遠く感じる分野でしたが、労働力人口の不足や治安の問題など、色々な点から考えるとても良い機会になりました。
日下部 沙綾さん(2年)
行動科学や教育経済学に関する『マシュマロ・テスト』という本を"書名が可愛いから"という理由で読んだことがきっかけで(笑)、この分野に興味を持ちました。教育と経済に関わりがあるとはまさか思わなかったので面白いです。
三輪海成さん(2年)
コミュニケ―ション能力にあまり自信がなかったのですが、ディスカッションで先輩が発言のチャンスをくれたり、毎回プレゼンの場があったりするので刺激になります。このゼミなら、絶対成長できると思います!

※掲載されている教員・学生の所属学部・職位・学年及び研究テーマ等は、取材当時のものです。